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台本を読んだあと、すぐセリフを入れていませんか?

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台本を読んだあとすぐセリフを入れる前に、演技の準備として台本読解を整理する様子

このタイトル、ドキっとしましたか?

台本を読んで、状況が把握できて、あらすじもわかったら、早くセリフを入れておきたいですよね。

現場があれば、なおさら、大事なシーン、重要なセリフが多ければ多いほど、迷惑もかけたくない、きちんとしておきたい。

だからすぐにセリフを入れたくなってしまう。

自然な気持ちではありますが、ちょっと気をつけて欲しい、そのポイントの解説です。

自分なりに、台本読解をしているつもりでも、台本を受け取ったあと、すぐセリフを入れようとする俳優は少なくありません。

早く覚えなきゃ。迷惑かけちゃいけない。
早く形にしなきゃ。しっかりしよう。
早く稽古できる状態にしなきゃ。

そう思うこと自体は、とても自然です。

現場や稽古には締切があります。
オーディションでは、限られた時間で準備しなければならないこともあります。
セリフが入っていないと不安になる気持ちも、よくわかります。

でも、台本を読んだ直後に、すぐセリフを入れることが、本当に最初の稽古になるのでしょうか。

セリフを覚える前に、整理しておくべきことがあります。

それを飛ばしたままセリフを入れてしまうと、言葉は覚えているのに、演技が浅くなることがあります。

そこから、なかなか進まなくなってしまう。

 

セリフを覚えることと、演じる準備は同じではありません

もちろん、セリフを入れることは大切です。

現場でも、稽古場でも、相手とのやり取りや演出の意図や要求に集中するためには、セリフに振り回されない状態が必要です。

ただし、セリフをいれることと、演じる準備ができていることは同じではありません。

セリフは入っている。でも、相手に向かっていない。

言葉は出てくる。でも、何のために言っているのかが見えない。

感情はある。でも、場面が進んでいない。

こういうことは、よく起きます。

原因は、セリフを入れる前に、何が起きているのかを整理していないことがあります。

 

台本を読んですぐセリフを入れると、言葉に引っ張られやすくなります

台本には、すでにセリフが書かれています。

だから俳優は、どうしてもその言葉から考えたくなります。

このセリフはどう言えばいいのか。

どんな気持ちなのか。
どこで感情を出せばいいのか。

きっと、こんな状況だから…
そうか、きっとこういう声にすればいいのか。
メリハリがあったほうがいいよね、

じゃあ次は、どこで間を取ればいいのか。

でも、ここから入ると、セリフが原因のように見えてしまいます。

本当は、セリフは結果の一部です。

その言葉が必要になる前に、何が起きているのか。
なぜ、その言葉を相手に向けなければならないのか。
その言葉を使って、相手に何を起こそうとしているのか。

これ、現実の世界での私たちと同じではないでしょうか。

そこが見えていないと、セリフは覚えた言葉の再生になりやすくなります。

言葉は出ているのに、国語の意味しか、相手に届かない。
感情は込めているのに、独りよがりで、場面が動かない。
ちゃんと言っているのに、なぜか印象に残らない。

それは、セリフの問題というより、セリフが出てくる前の準備が浅いのかもしれません。

つまり、必然性がないともいえます。

 

最初に見るべきなのは、セリフの言い方ではありません

台本を読んだあと、最初に見るべきなのは、セリフの言い方ではありません。

どんなふうに言うか。
どんな表情にするか。
どんな感情でいくか。
どこで強くするか。
どこで泣くか。

これらは、最初に決めるものではありません。

まず見るべきなのは、何が起きているのかです。

この場面で何が変わるのか。
誰が、誰に、何をしようとしているのか。
その人物にとって、今ここで何が重要なのか。
なぜ、今この相手に向かう必要があるのか。
このセリフが出る前に、どんな圧力や必要性があるのか。

ここを見ないままセリフを入れると、言葉の表面、いわば国語の意味に引っ張られやすくなります。

そして、つい満足してしまう…

もったいないです。

 

セリフを入れる前に、台本に書かれている事実を抜き出す

最初にやることは、感想をまとめることではありません。

役の人物の気持ちを決めることでもありません。
雰囲気をつかむことでもありません。
セリフの言い方を考えることでもありません。

まず、台本に書かれている事実を抜き出します。

いつのことなのか。
どこなのか。
誰がいるのか。
誰がいないのか。
何が起きた後なのか。
何がこれから起きようとしているのか。
どの言葉が、どの出来事を受けて出ているのか。

この段階では、まだ決めつけません。

悲しい。
怒っている。
好き。
嫌い。
寂しい。
怖い。

こうした感情の名前に急ぐ前に、まず事実を見ます。

そこから、意味を文脈に沿って想像していきます。

事実が見えていないと、感情はただの想像になりやすいからです。

ここから、「個人化」が始まります。

 

次に、相手に何を起こしたいのかを見る

事実を抜き出したら、次に見るのは相手です。

この人物は、相手に何をしたいのか。
相手をどう変えたいのか。
相手に何を認めさせたいのか。
相手を引き止めたいのか。
相手を遠ざけたいのか。
相手を動かしたいのか。
相手から何を引き出したいのか。

演技は、自分の中で感情を作るだけでは成立しません。

なぜなのか、何のためなのか、目的は目標に立ち返りましょう。

相手がいます。
状況があります。
目的があります。
その場で変えようとしているものがあります。

セリフは、そのために使うものの1つです。

だから、セリフを入れる前に、相手に何を起こそうとしているのかを見ておく必要があります。

想像膨らませるのも、このバックグラウンドが最重要です。

ここがないと、状況は事細かに、ありありと想像はしているけれど、心象風景が、メキメキ動いていない、個人的な事情になっていないと言うと、多いんです。

だから、気持ちの変化や表情も予定調和になってしまう。

セリフは、目的へ向かうための行動です

セリフは、ただの音ではありません。

気持ちを説明するための言葉でもありません。
上手に言うための素材でもありません。
覚えたことを発表するためのものでもありません。

セリフは、相手に働きかけるための行動です。

止める。
誘う。
責める。
逃げる。
隠す。
試す。
迫る。
許す。
拒む。
つなぎとめる。

その言葉を使って、相手に何をしようとしているのか。

それはなぜなのか、それ以外の行動は無いのか。

ここが見えると、セリフの扱いは変わります。

言い方を先に決めなくても、言葉が向かう先が見えてきます。

早く覚えることが、必ずしも早い準備ではありません

セリフを早く入れると、安心します。

でも、安心したからといって、準備が深まっているとは限りません。

むしろ、早く覚えたことで、最初に決めた言い方や感情から離れにくくなることがあります。

このセリフはこう言う。
ここで感情を出す。
ここで間を取る。
ここで強くする。

最初に作った形を、後から変えにくくなる。

すると、稽古で相手が変わっても、演出が変わっても、場面の理解が深まっても、最初の形に戻ってしまうことがあります。

早く覚えることが悪いのではありません。

ただ、何を読んだうえで覚えるのかが大切です。

また、セリフを入れるプロセスで、国語の意味を固めていくのではなく、言葉が出て来る背景を深めること、個人的な事情に目指すことが結果的に、セリフが入って、自分の言葉かのようになっていくことを助けてくれます。

 

セリフを入れる前に、準備の順番を整える

台本を読んだあとに必要なのは、興奮や気持ちだけではありません。

順番です。

まず、書かれている事実を見る。
次に、事実から推測できることを分ける。
それから、相手に何をしたいのかを見る。
その場で何を変えたいのかを考える。
そのうえで、セリフがなぜ必要になるのかを読む。

そして、文脈と照らし合わせて、(仮)に目的や目標を設定しつつ、個人的な意味を与えてみる。

この順番を飛ばすと、どうしても言い方や感情を込めるような重たくて遅い、硬い型に戻りやすくなります。

セリフを入れること自体は必要です。

でも、セリフを入れる前に、言葉が出てくる理由を育てる必要があります。

理由が育っていないまま言葉だけを覚えると、花が咲かないのに、花の形だけを整えようとするようなことになります。

 

台本読解は、セリフを遅らせるためではありません

ここで誤解してほしくないのは、セリフを覚えるのを後回しにし続ければいい、という話ではないことです。

台本読解は、セリフを遅らせるためのものではありません。

セリフを生かすための準備です。

なぜ、その言葉が必要なのか。
なぜ、今その言葉なのか。
なぜ、その相手に向けるのか。
その言葉によって、何を変えようとしているのか。

ここが見えると、セリフを入れるときの、想像も変わります。

ただ暗記するのではなく、場面の流れの中で言葉を扱えるようになります。

一人で読むと、いつもの癖に戻りやすい

台本を読むとき、多くの俳優は自分の慣れた順番に戻ります。

セリフから入る。
感情から入る。
役の人物の背景から入る。
雰囲気から入る。
言い方から入る。
自分が気になる場面だけを深掘りする。

その順番が、いつも悪いわけではありません。

ただ、その順番で伸び悩んでいるなら、違う読み方が必要です。

自分では読んでいるつもりでも、実はいつもの癖で読んでいることがあります。

だから、台本読解にも練習が必要です。

 

演じるための台本読解クラスで扱うこと

演じるための台本読解クラスでは、台本を感想や雰囲気で読むのではなく、演技につながる形で整理していきます。

セリフをどう言うかに急がず、まず何が起きているのかを見る。
感情を決める前に、相手に何をしたいのかを見る。
言葉を覚える前に、その言葉が必要になる理由を読む。
一つのシーンだけでなく、作品全体の中で今どこにいるのかを考える。

この順番を実際の台本で扱うことで、セリフの不安に振り回されにくくなります。

何から手をつければいいのかが見えると、稽古の入り口が変わります。

自分の読み方の癖に気づき、相手とのやり取りに向かいやすくなる。

それが、演じるための台本読解クラスで扱っていることです。

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個人レッスンで扱えること

個人レッスンでは、今取り組んでいる台本や役に合わせて、より具体的に整理していきます。

出演予定の作品。
オーディション課題。
レッスンで扱いたいシーン。
現場や稽古でうまくいかなかった場面。

そうした具体的な台本を使いながら、どこでセリフに急いでいるのか、どこで感情に戻っているのか、どこで相手が消えているのかを見ていきます。

台本読解だけで終わらせず、身体、声、相手とのやり取りにもつなげていきます。

グループクラスで整理の順番を学ぶこともできますし、個人レッスンで自分の台本や役に合わせて扱うこともできます。

活躍のジャンルは映画、テレビ、舞台問わず、作品に貢献できるよう、現場で提案がスムーズに進むよう、内容深めております。

またミュージカルやオペラの方の演技レッスンも、通年で展開しております。

 

関連して読むと理解しやすい記事

このテーマは、台本読解シリーズ全体ともつながっています。

台本を読んでいるのに演技が深まらない方へ|演じるための台本読解シリーズ
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台本を5W1Hで読んでいるうちは、演技が浅くなりやすい理由
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目的を考えているのに、演技がはっきりしない理由
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セリフは結果であって、原因ではない
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方法を目的にしているうちは、演技はその場しのぎになる
https://kaorukuwata.com/acting-method-as-objective/

台本を読んだあと、何から始めるか

台本を読んだあと、すぐセリフを入れる。

それが悪いわけではありません。

ただ、その前に見ておくべきことがあります。

何が起きているのか。
相手に何をしたいのか。
その場で何を変えたいのか。
その言葉が必要になる前に、何が起きているのか。

そこを整理してからセリフに向かうと、言葉の扱いは変わります。

セリフを覚える前に、言葉が必要になる理由を読む。

それが、演じるための台本読解の大切な入口です。

この記事を書いた講師:プロフィール 鍬田かおる

指導歴20年以上。桐朋学園芸術短期大学演劇科、新国立劇場演劇研修所・オペラ研修所、劇団青年座研究所などで長年指導。
ロンドン大学ゴールドスミス校卒。Royal Central School of Speech and Drama 修士課程ムーヴメント科修了。
イギリスSTAT認定アレクサンダー・テクニーク教師。日本演出者協会会員。

俳優や歌手の技術と身体の理解を統合し、現場で使える“交流のある演技”へ導く専門家。大学や映画スクールの講師を務める傍ら、個人レッスンで一人ひとりの強みを伸ばし、基礎力からアップさせる本格的なプロのトレーニングを中心に活動しています。

小学生から中堅、そして芸能の舞台や映像で活躍する俳優や歌手の方のアクティングコーチであるだけでなく、プロを目指す若手の育成も務める。

IDC認定インティマシー・コーディネータ(ディレクター)として映画や舞台の現場も入ります。

 

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