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セリフは結果であって、原因ではない

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セリフは結果であって原因ではないことを示すイメージ

セリフは結果であって、原因ではない

台本を受け取ると、多くの俳優がかなり早い段階でセリフに悩み始めます。

どう言えばいいのか。
どんな口調なのか。
どんな表情なのか。
どこを強く言うのか。
どういう間で言うのか。

もちろん、その気持ちはよくわかります。
目の前に文字がある。
作家が書いてくれている。
言うべき言葉が、もうそこに見えている。

だから、どうしてもそこから考え始めてしまうのです。

それに、やっぱりトチりたくない。滑舌も気になる。

でも、その悩み方をしているうちは、なかなか深まりません。

なぜなら、セリフは原因ではないからです。


結果です。

言葉は、先に用意するものではなく、その人物にとって必要が生まれた結果として出てくるものです。

現実の世界での私たちも、そうなってますよね?

自分がいて、自分との関係性に相手がいて。お互い欲しいものあったり、やって欲しいことがあったり、言いたいことや言えないことがあったり…。

どこにいるかによって、どこにいたかによって、それこそ、最後にした前回の会話次第で、次に、相手の前で、出る言葉が変わります。

なのに、原因をちゃんと準備しないまま、結果であるセリフばかり気にしてしまう。


これがかなり大きなズレです。

みんな、セリフで悩みすぎです

もちろん、言葉は大事です。
作家が書いてくれた大切なものです。

でも、だからこそ厄介でもあります。

先に文字として見えている。
先に言う内容がわかってしまっている。
だから、ついそこから考え始めてしまう。

しかも、良い作品であればあるほど、そのセリフがうまく描けていて、まるでそれで全てが満たされるような気がしてしまう。

ただ、そのまま、文章の意味を伝えれば、充分な気もしてしまうんです。

このセリフは怒って言うのかな。
ここは冷たく言うのかな。
ここは少し優しく言うのかな。
ここで歩きながら言うのかな。

どうしても気になります。

でも、本当はそこではありません。

日常の私たちと同じです。

言葉が出てくる理由がない。
言葉が欲しくなる動機がない。
相手に何をしたいのかも立っていない。
何が起きているのかも深まっていない。

その状態でセリフだけ練習しても、言葉だけを並べる演技になりやすいのです。

私たちは、どこに向かってるのかがわからない時、言いたい理由がない時、その言葉がその場所で使えると判断していない時、ただ流暢に、わかりやすくペラペラ喋るというような事は無いのです。

違いますか?

花が咲かないと騒ぐ前に、原因を育てる必要があります

原因が深まっていないのに、セリフで悩む。
これは、根や土の部分が育っていないのに、花が咲かない、実がならないと騒いでいるのに近いです。

土が整っていない。
根が張っていない。
水が通っていない。

それなのに、花がきれいに咲かないと言っている。
実がならないと言っている。

でも、先に育てるべきなのは、花ではありません。
原因のほうです。

演技でも同じです。

なぜその言葉が必要になるのか。
なぜ今、それを言わないと困るのか。
誰に向かっているのか。
相手から何をしてもらわないと困るのか。
ここで何が変わることが重要なのか。

そこが育っていないままでは、言葉はただの文字のままです。

まず根っこ強く、太く、たくましく、花や実に見合った深さに、育てる必要があります。

 

セリフは「言う」ものではなく、「しゃべる」ものです

ここで大事なのは、セリフを「言う」ものとして扱わないことです。

覚えたことを発声する。
うまく言う。流暢に、「セリフ回しがうまい」を狙ってしまう。
それらしく聞こえるように整える。

言葉で全てが解決するような錯覚を覚えてしまう…そんなことも、実は少なくありません。

でも、実際、映像でも舞台でも、それでは足りません。

必要なのは、その場で思って、口から出るものとして扱うことです。
つまり、「セリフを言う」ではなく、「しゃべる」に近づけることです。

なぜその言葉になるのか。
その人物にとって、なぜ今それが必要なのか。
何を変えたいから、そう口にするのか。

そこまでつながったときに、初めて言葉は生きてきます。

テキストの理解。
感情。
身体感覚。
相手との関係。
今ここで起きていること。

それらが合致して、初めてしゃべりになります。

ほら、だんだん現実の世界の私たちに近づいてますよ。

「言葉が必要になってから」、言葉が出る前に「既に言いたいことがいっぱいなっていて、その中で、今、ここでの、言葉が出てくる」

この仕組みです。

先に決められるのは、言い方ではありません

文字になっているからといって、そこから先に表情や口調や歩き方を決めることはできません。

たとえば、同じ一言でも、

引き止めたいのか。
本当に追い返したいのか。
試しているのか。
傷つけたいのか。
自分を守りたいのか。
相手に気づいてほしいのか。

これだけでも、意味はかなり変わります。

つまり、言葉そのものより先に見るべきなのは、因果です。

何が起きているのか。
何をしたいのか。
何が変わると困るのか。
相手は自分にとって何者なのか。

ここが立っていないのに、先に口調を決めることはできないはずです。

そして思い出してください、普段、私たちは先に声色やトーン、ボリュームを決めてないんです。

「そうなってしまう」「気づいたらそうなってた」「言うつもりのないことも言った」「言うつもりだったけど言わなかった…」

そんな場面が、たくさんあります。

だからこっちの役の内面的な生活を充実させて、それが動きや言葉に現れる、この原因を結びつけておく、トレーニングが大事なんです。

 

作家が先に書いてくれているからこそ、逆算が必要です

俳優がそこから考えてしまう気持ちもわかります。

せっかく作家が書いてくれている。
セリフが先にある。
だから、そこから考えてしまう。

これはある意味、自然です。

でも、自然だからこそ気をつける必要があります。

文字として先に見えているものを、そのまま原因だと勘違いすると、演技は浅くなります。

作家が書いてくれているのは、結果です。
その人物がそこに至るまでの必要や関係や衝動が、結果として言葉になっている。

だから俳優には、逆算する習慣が必要です。

この言葉を言うために、何が必要なのか。
どこまで原因を掘れば、この言葉が欲しくなるのか。
そこに一度戻る必要があります。

長く悩むことではなく、一気に深いところまで行く習慣です

ここで勘違いしやすいのですが、これはやたら長い時間をかければいいという話ではありません。

だらだら考えることでもありません。
細かく迷い続けることでもありません。

必要なのは、落ち着いて取り組むこと。

そして、その取り組みの内容は、根っこの部分が中心です。


そして、浅いところを何度もなぞるのではなく、一気に深いところまで行く習慣です。

ただ、実を取ろうと思ってないわけです。

水をあげてないのに、花が咲かないなぁと不思議に思ってても仕方がありません。

この人物は何を守りたいのか。それはいつからなんかか。
何を失いそうなのか。失うとどうなるのか。
何が変わると、誰が、なぜ、困るのか。そうならないためにやっている事は?
相手に何を起こしたいのか。それはいつ決断したのか、避ける方法は無いのか。

これくらいまで入ると、セリフに伴う質、あらゆる部分がが変わります。

急に言葉の強さを盛らなくてもよくなる。
それっぽい間を作らなくてもよくなる。

喉を閉めて、辛そうに苦しそうに「何かニュアンスつけてしゃべる」に代表される、作為的な小手先は必要なくなります。

うまく言おう、伝えようと構えたり、押し出さなくても、必要のある言葉として立ち上がりやすくなっていきます。

自分がいちばん大事だと思っているセリフほど、白々しくなりやすいです

ここには、もう一つ罠があります。

俳優は、自分が気に入っているセリフに引っ張られやすいです。

この言葉が好き。
ここは大事に見える。このセリフ、褒められたことがある。
ここは気持ちが乗っている気がする。
ここをちゃんと届けたい。演出家や監督が重要だって説明した…

その気持ち自体はわかります。
でも、そこが罠でもあります。

なぜなら、その瞬間に意識が相手から離れやすいからです。

相手に何を起こしたいのか。
なぜ今その言葉が必要なのか。
何が変わると困るのか。
そうした原因より先に、
「このセリフを大事に言わなきゃ」
が前に出てしまう。

すると、急に白々しくなります。

ちょっと自意識の向きが崩れてますよね…。

気持ちが入っているつもりなのに、不自然に見える。
大事にしているつもりなのに、かえって浮いてしまう。

そういうことが起きやすいのです。

本当に大事なセリフは、俳優が「ここ大事です」と握りしめたところではなく、その場で必要が立ち上がった結果として、こちらにも大事さが伝わってくるものです。

だから、気に入っているセリフほど疑ったほうがいい。
自分が思い入れている言葉ほど、先に飾っていないかを点検したほうがいいのです。

うまく言いたいほど、言葉は意味不明な無目的なものになりやすいです

セリフに悩みすぎる方ほど、「うまく言いたい」が先に立ちやすいです。

でも、そもそも、「うまい」とは一体何のことだったんでしょうか?

うまく言いたいほど、つい、直接的に狙ってしまう。

原因がないのに、金がないのに、突然、花をつもうとしてしまう。

なぜなら、意識が相手ではなく、自分の出来栄えに向くからです。

どう聞こえるか。
どう見えるか。
それっぽいか。
自然か。

そこに意識が向きすぎると、言葉は相手に向かわなくなります。

しかもこれ、全部自分の判断ですよね。

役の人物の世界はどこ行ってしまったんでしょうか?

生きた言葉になるかどうかは、うまさよ根っこが必要です。
その人物にとって本当に必要な言葉になっているかどうか。
そこが先です。

まとめ

セリフは原因ではありません。
結果です。

なのに、原因を育てないまま、結果であるセリフばかり気にしてしまう。
それでは、言葉だけを並べる演技になりやすいです。

大事なのは、

なぜその言葉が必要になるのか。
なぜ今それを言うのか。
誰に向かっているのか。
何を変えたいのか。
何が起きているのか。

ここを先に深めることです。

作家が先に書いてくれているからこそ、俳優には逆算が必要です。
文字から先に言い方を決めるのではなく、その言葉が欲しくなる理由まで戻る。

その習慣があると、セリフは「言う」ものではなく、「しゃべる」ものに変わっていきます。

という事は、俳優の仕事は、セリフをそれっぽく、うまく、流暢に、ペラペラとしゃべることにないんです。

確かに目立つけれども、それは本当に一つの部分であって、全体ではないなのです。

クラスでは、こうした読解のズレを実際の台本で扱っています

ここまで読んで、思い当たることがあった方へ。

セリフに悩んでいるのに、実はその前の原因が育っていない。
言い方を考えているのに、なぜその言葉が必要なのかがまだ浅い。
そういう状態は、ひとりで抱えていると同じところを回りやすいです。

オンラインの台本読解クラスでは、書かれている言葉をそのままなぞるのではなく、何が起きていて、なぜその言葉が必要になるのかを具体的に見ていきます。
セリフの言い方ばかりで悩む状態から抜けて、どこを深めると場面が立ち上がるのかが見えやすくなります。

少人数制のスタジオ実践では、そこから実際に相手に向かって動きながら、言葉をただ発声するのではなく、その場で必要になるしゃべりに近づけていきます。

セリフに悩んでいるのに、なぜか演技が変わらない。
そこを変えたい方は、こうした場も活用してみてください。

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この記事を書いた講師:プロフィール 鍬田かおる

指導歴20年以上。俳優や歌手の個人レッスンのほか、桐朋学園芸術短期大学演劇科、新国立劇場演劇研修所・オペラ研修所、劇団青年座研究所などで長年指導経験を経て、芸能事務所映画スクールでも指導する。
ロンドン大学ゴールドスミス校卒。Royal Central School of Speech and Drama 修士課程ムーヴメント科修了。
イギリスSTAT認定アレクサンダー・テクニーク教師。日本演出者協会会員。

俳優や歌手の技術と身体の理解を統合し、現場で使える“交流のある演技”へ導く専門家。大学講師を務める傍ら、個人レッスンで一人ひとりの強みを伸ばし、基礎力からアップさせる本格的なプロのトレーニングを中心に活動しています。

小学生から中堅、そして芸能の舞台や映像で活躍する俳優や歌手の方のアクティングコーチであるだけでなく、プロを目指す若手の育成も務める。

IDC認定インティマシー・コーディネータ(ディレクター)として映画や舞台の現場も入ります。

 

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