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演じるための台本読解を邪魔する7つの勘違い

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演じるための台本読解を邪魔する7つの勘違い 台本読解で迷う俳優向けの記事アイキャッチ

台本なるものを手にして早40年…演技指導をするようになると思わなかった、アクティングコーチ 鍬田かおるです。

さて、本日は、せっかくのやる気にもかかわらず、陥りやすい7つのポイントです。

きちんと台本は読んでいる。
もちろん人物の気持ちも考えている。
状況も把握して関係性も整理している。
それなのに、いざ、演るとなるとなんだか進まない….

こういう俳優や歌手の方は、少なくありません。

読んでいないからではありません。
むしろ逆です。
真面目に読もうとする俳優ほど、読解で遠回りしていることがあります。

文章は、何度も読んでいるのに動けない。
理解しているつもりなのに、浅くなる。
気持ち、テンション、感情を考えているのに、相手に届かない。

そうなるのは、台本読解が足りないからというより、読み方の焦点が少しずれているからです。

今回は、演じるための台本読解を邪魔してしまう、よくある勘違いを7つに分けて整理します。

1 すぐに気持ちを考え始めるから、毎回ふわっとする

いちばん多いのが、ここです。

台本を開くとすぐに、
この人物は悲しい。
怒っている。
寂しい。
傷ついている。
愛されたいと思っている。
そういう言葉で考え始める。

共感しているというより、もしかすると、作品によっては、同情しているのかもしれません。

もちろん、気持ちを考えること自体が悪いわけではありません。
ただ、そこから先に入ると、読解がふわっとしやすいのです。

これ、お客様目線に近いです。

なぜなら、気持ちは広すぎるからです。

悲しい、だけでは動けません。
怒っている、だけでも演技にはなりません。

怒っているから、何をするのか、つながらないと自分事にはなりません。


寂しい、だけでは相手に何をしているのかが見えません。

それはなぜなのか、いつからなのか、なぜここでなのか。

演じるために必要なのは、その気持ちを説明することではなく、その場で何を選んだのか、選ばなかったのか、実際にしようとしているのかを見ることです。

引き止めたいのか。
黙らせたいのか。
試したいのか。
隠したいのか。
許してほしいのか。
傷つけたいのか。
近づきたいのか。
距離を取りたいのか。

ここが見えてくると、初めてセリフが働き始めます。

悲しいです、怒っています、寂しいです。
それで終わる読解は、たいてい場面で迷います。

そして、その先に続かなくなってしまいます。

2 設定を集めて満足しているうちは、まだ一歩も動いていない

年齢、職業、家族構成、育った環境、時代背景。
こうした設定をたくさん集める俳優もいます。

もちろん、ある程度は必要です。
でも、それだけでは演技は動きません。

問題なのは、設定を集めた段階で、読めた気になってしまうことです。

この人物はこういう家庭で育ったからこうだ。
この時代の女性だからこうだ。
こういう職業だからこういう性格だ。

作品によっては、少々、決めつけに近いです。

言葉での、特に形容詞での説明は増えます。
でも、その場面で何が起きているのかは、意外と見えていない。

設定は土台にはなります。
ただし、設定そのものが演技をしてくれるわけではありません。

大事なのは、その設定がこの場面でどう働いているかです。

今この相手の前で、何を守りたくなるのか。
何を隠したくなるのか。
どこで反応が変わるのか。
何に過剰になるのか。
何を言われると揺れるのか。

設定を集めるのが好きな俳優や歌手ほど、そこから先に進めないまま満足しやすいです。

まだ一歩も動いていないのに、すごく読んだ気になる。
これは本当によくあります。

そして、衝動を感じなくなる、感覚を身体から拾わなくなってしまうんです。

そんなつもりはなくても、うっかりということがよくあります。

3 セリフの意味ばかり読んでいると、現場で急に何もできなくなる

台本読解で止まりやすい俳優は、セリフの意味を丁寧に考えています。

この言葉にはこういう意味がある。
ここでは本心を隠している。
この一言には皮肉が入っている。
この間には迷いがある。

そこまではいいのです。
ただ、その先がないと、立った瞬間に困ります。

そもそも、言葉は、コミュニケーションの何割かだけなのに…。

また、そこで大事なのは、その「セリフで何をしているか」です。

言葉を使って、ごまかしているのか。
その言葉で、探っているのか。
その言葉は逃げるためなのか。
今、挑発しているのか。
どの言葉で、安心させようとしているのか。
そんなつもりがあるのかないのかにかかわらず、言葉は、傷つけようとしているのか。
もしかすると、自分を守ろうとしているのか。

意味の説明だけでは、俳優は舞台やカメラの前でで急に何もできなくなります。
でも、行動に変わっていれば、相手に向かえます。(投影していても)

台本読解は、既に書かれている言葉の意味をただただ丁寧に解説する作業ではありません。
その「言葉を使って何をしようとしているのか」をつかみ、掘り下げていく言葉以上の作業です。

意味はわかっています。
でも何も起きません。
その状態は、だいたいここで止まっています。

もったいないです。

4 人物理解に酔うほど、相手が消えます

人物を理解しようとする。
これは真面目な俳優ほどよくやります。

私はこういう人。
この人物はこういう傷を持っている。
こういう過去がある。
こういう性格だ。
こういう欲求がある。

そこに集中しすぎると、場面が一人語りになります。

演技は、人物の内面を発表する場ではありません。
相手(や周囲の環境)がいるから起きるものです。

相手の一言で変わる。
相手の沈黙で揺れる。
相手の態度に反応して選び直す。
そこに場面があります。

人物理解を深めるほど、相手が薄くなる俳優は意外と多いです。

本当に必要なのは、
私はどういう人か
だけではなく、
この相手の前で私はどう変わるか
を見ることです。

人物理解に酔っているときは、本人だけが充実しています。
でも、相手は消えています。

そして、「自分と状況」という残念なゾーンに停滞してしまいます。

5 正解を探している間に、リハーサル/稽古が終わります

台本読解をきちんとやろうとする俳優ほど、正解を探しやすいです。

この役はどう読むのが正しいのか。
ここはどういう感情が正解なのか。
このセリフはどういうトーンが合っているのか。
この人物は本当は何を思っているのか。

でも、台本読解はクイズではありません。

ましてや、上演の目的、作品のテーマ、監督や演出家の切り口にもよって、また客層にもよって正解なるものは、可能性として複数あります。

もちろん、雑に何でもよいわけではないです。
ただ、最初から完璧な答えを当てにいくと、俳優は動けなくなります。

仮にこう読んでみる。
この方向でやってみる。
相手とのやり取りの中で確かめる。
やってみたら違ったので修正する。

本来は、この往復、そして科学の実験のように検証していくプロセスそのものが必要です。

正解探しに時間をかけすぎる俳優ほど、稽古場で固まりやすいです。
逆に、仮置きして試せる俳優のほうが、変化が早いです。

正しく読めるまで動きません、では遅いのです。
その頃には、だいたい稽古が進んでいます。

そして、時間切れになります。

 

6 ノートは立派なのに、身体も声も何も変わらない

これはかなり大きいです。

頭の中では理解している。
ノートも書いている。
関係性も整理している。
でも、立つと散る。

こういう場合、読解した内容が、身体や声の使い方につながっていないことがあります。

国語のように「まとめる」という間違いが起きるのもこの段階。

たとえば、
相手を試している場面なのに、声が全部同じ高さで流れていく。
言葉では引き止めたいのに、身体はすでに諦めている。
傷つけたくて言っているのに、顔も呼吸も安全なまま。
本当は近づきたいのに、全身が閉じている。

これでは、頭で読んだことがカメラの前や舞台上で働きません。

演じるための台本読解は、机の上で終わってはいけません。
読み取ったことが、声の方向、間、反応、身体の変化、相手との距離にどう現れるかまで見えてくる必要があります。

ノートが立派でも、身体も声も何も変わらないなら、まだ読解は演技につながっていません。

そこは、かなり冷静に見たほうがいいです。

お客様はノートを見るわけではありませんから…

7 読解しただけで変われるなら、みんなもう売れています

最後に、これも大事です。

台本読解をすれば演技が変わる。
たしかに、それは半分正しいです。
でも、半分は違います。

読解は必要です。
ただ、読んだだけでは変わりません。

相手が入ると崩れる。
立つと飛ぶ。
セリフを入れると散る。
動くと浅くなる。
感情を足そうとして不自然になる。

こういうことは、実際にやってみないと見えません。

楽器演奏や歌唱、ダンスやスポーツと似ていますよね。

だから、読解はゴールではなく入口です。

演じるための台本読解とは、
理解して終わることではなく、
試して、崩れて、修正して、再現できるようにしていくための準備です。

ただ、入り口が適切であると、進むのがスムーズであることも確かです。

でも、読解だけ立派で、演技だけ変わらない。
これは珍しくありません。

読解しただけで変われるなら、みんなもっと早く困っていません。

台本読解で本当に見たいもの

ここまで7つの勘違いを書いてきました。

まとめると、演じるための台本読解で本当に見たいのは、次のようなことです。

この人物は何をしようとしているのか。
相手との間で何が変わるのか。
どの言葉が働きかけになっているのか。
どこで選択が変わるのか。
読んだことが、身体や声や反応の何につながるのか。

気持ちを考える。
設定を集める。
意味を読む。
人物を理解する。

それらは全部、必要です。
ただし、それだけでは足りません。

演技につながる読解にするには、相手、目的、変化、行動に変えていく必要があります。

だからこそよく言われる「サブテキスト」も生き生きとできますし、ジャンルによっては、原作に演技のスタイルを調節したり、演出の効果のために様々な調節も可能なのです。

読んでいるのに変わらないなら、読み方を見直したほうがいい

台本は読んでいる。
考えてもいる。
それでも変わらない。

そのとき、足りないのは努力ではないかもしれません。
読み方の順番や焦点が少しずれているだけかもしれません。

すぐに気持ちを考えていないか。
設定集めで止まっていないか。
意味の説明で終わっていないか。
相手が消えていないか。
正解探しで固まっていないか。
身体や声につながっているか。
読解だけで終わっていないか。

ここを見直すだけで、台本の見え方はかなり変わります。

そして、台本の見え方が変わると、稽古場での迷い方も変わります。

そうなると、自分自身も生き生きしてくるから楽しいですよ。

このサイクルが回り出すと、充実していきます。

何より台本を読むことが面白い、何度読んでも発見がある。

これは本当です。

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