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何年も演技を続けているのに、なぜまた同じところで止まるのか

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何年も演技を続けながら同じ課題に立ち止まる俳優のイメージ

これ、俳優だけではなく、声優、ナレーター、歌手の方でもご相談を受けるのですが、今回は俳優の切り口で整理しています。

例えば、もう、初めて何年にもなる。

それなりに、舞台にも立ってきた。

なんだかんだ、撮影現場にも行った。

自分だって、稽古もしてきた。

いろいろな演出家や監督から、たくさんの演出やディレクションも受けてきた。

それなのに、気づくとまた同じところで止まっている気がふとした…。

そんなこと、ありませんか?

例えば、

「もっと相手を見て」

「もう少し抑えて」

「もっと自然に」

「そこで考えなくていい」

「もっと素早い感じで」

言葉は少し違っても、

あれ、これ前にも言われた気がする。

そんなことはありませんか。

演技経験は増えている。それなのに、なぜ同じ課題が残るのか

これは、経験の浅い俳優だけに起きることではありません。

むしろ年数を重ね、ある程度現場にも出てきた方ほど、見えにくくなることがあります。

作品は増えている。

それなりに役も増えている。

現場で対応できることも増えた気がしている。

以前より緊張もしなくなった。

それなのに、特定のところでは何度も似たような指摘を受ける。

だから、

「もっと経験を積めば変わるのかな」

「やっぱり舞台をやったほうがいいのか」

「もっといろいろな現場に行った方がいいのかな」

「別のワークショップも受けた方がいいのかな」

と、さらに単発の経験を足そうとする。

もちろん、それが必要なこともあります。

でも、年数と経験をすでに重ねているのに同じところで止まっているなら、単純に経験量だけの問題ではないかもしれません。

その場では、ちゃんと直っている

ここが少し厄介です。

演出家から、

「もっと相手を見て」

と言われる。

やってみる。

シーンが変わる。

「そう、それでいきましょう」

となる。

その場では、ちゃんと問題が解決しているように感じられます。

「もっと抑えて」と言われて、何か変えられた。

「そこは早く」と言われて、スピードやタイミングを変えられた。

「ここでは泣かないで」と言われて、なにか別のやり方を試せた。

作品も成立している。

だから本人にも、

できなかったという感覚が残りにくい。

むしろ、

「言われればできる」

「現場では対応できている」

という経験が積み重なっていきます。

場合によっては、自信につながっています。

では、なぜ次の作品で、また似たところに戻っている感覚があるのでしょう。

「その場で直ったこと」は、自分の中に何として残っていますか

ここで一度、考えてみてほしいことがあります。

以前「もっと相手を見て」と言われて、うまくいった。

では、

なぜ最初は相手を見なかったのでしょう。

そのとき、何をしようとしていたのでしょう。

台本をどう読んでいたのでしょうか。

身体や呼吸には何が起きていたか、たどることはできますか。

そして、演出を受けたあと、何が変わったからシーンが変わったのでしょう。

そこまで分からなくても、その作品は終えられます。

それは何もおかしくありません。

現場は、その俳優のすべての課題を解決するために存在しているわけではないからです。

作品には作品の目的があります。

限られた稽古時間、撮影時間の中で、必要なシーンを成立させなければなりません。

ここで、長く演技を続けている方ほど見落としやすい違いがあります。

うっかり忘れてしまうこともあるので書きますが、

演出を受けることと、演技を学習することは同じではない

演出と演技指導は、実際の現場では重なって捉えられることがあります。

優れた演出家や気心の知れた監督との仕事によって、俳優が大きな発見をすることも、大いに人間的に成長することもあります。

でも、それは、どういった業種、職業でも同じ仕組みではないでしょうか。

演技指導でも、もちろん具体的なシーンを扱います。

ですから、

「演出家は教えない」

「演技コーチは演出しない」

という単純な話ではありません。

違うのは、役割の中心にある目的です。

演出は基本的に、

この作品、この役、この場面を成立させること

に向かいます。

一方、演技指導では、

なぜ今それができなかったのかを見つけ、作品や条件が変わったときにも本人が使える能力にしていくこと

が重要になります。

つまり、

その場で修正されたことと、学習したことは同じではありません。

この違いが飲み込めていないと、演出されていることを「学んでいること」と取り違えたり、逆に学習している場で「演出されている」と抵抗したりするような、ちぐはぐが起きます。

現場経験が長いことと、演技を学習してきたことも同じではない

俳優は現場にいるだけでも、たくさんのことを経験します。

演出を受けて、反映させていく。

共演者とやり取りして、すり合わせる。

急な変更含め、段取りに対応する。

これらは大事なことです。

それこそ、何度も稽古する。

テイクを重ね、本番を経験する。

もちろん、どれも貴重です。

ただし、

経験したことと、そこから自分で使える能力を獲得したことは別です。

5年、10年と俳優を続けていても、同じ課題を持ち続けることはあります。

むしろ、年数を重ねても残っている問題だからこそ、

さらに同じ種類の経験を足すだけで解決するのか

を一度見直した方がいい。

経験の量ではなく、これまでの経験から、

何が自分の能力として残ったのか。

そこを見る必要があります。

私自身、これまで20年以上、様々なジャンルでもっと上達したいと望む俳優や歌手の方々を教えてきましたが、これは厳しさではなく、俳優や歌手の方が、健やかに活動を続けるための、秘訣でもあると感じます。

演技が「うまい」とは、いわゆる完成した演技を持っていることだけではない

演技がうまいというと、

それこそ、感情表現が豊か。

自然に見える。迫力がある。

ちゃんと泣ける。(これはまた別の記事でも解説します。)

役になりきれる…そんなイメージを持つ方もいるかもしれません。

このような言葉で、少しドラマティックに、また広告や宣伝用に書かれている記事を信じ込んでいる方もいらっしゃるかもしれません。

でも、仕事として演じるときに必要な「うまさ」は、ちょっと違います。そして、表面的に見える、それらだけではないのです。

例えば、限られた時間で、演出の変化、違い、要求を理解する。

実際の監督や演出家からの提案を受け取る。

一度試して、必要ならすぐに変える。

相手役から違うものが返ってきても、崩れずに、対応する。

カメラ位置、段取り、尺、劇場のサイズ、演出が変わっても調整する。

自分が準備してきたものに固執せず、その場で更新する。

そして、限られた時間の中で必要な結果を出す。

こうした能力も、演技力です。

すなわち、演出を受けやすい俳優になることも、演技力の一部。

ただ、それだけではないんです。

演技を学ぶのは「演出がいらない俳優」になるためではない

演技を学ぶというと、

「自分一人で何でもできるようになる」

「演出されなくても完璧に演じられるようになる」

という方向を想像する方もいるかもしれません。

私はそうは考えていません。

むしろ、学習してきたものが自分の能力として残っているほど、演出家や監督から渡されたものを具体的な行動へ変えやすくなります。

「もっとリスクを取って欲しい」

「もっと軽くやって欲しい」

「ここはもっと二人の距離を感じさせたい」

そんな提案を受けたとき、

実際にやる事は何なのか、声を大きくするのか。

表情を何から何へ変えるのか

それとも、

自分の何を変えれば、その提案を実際の演技として試せるのか。

ここで差が出ます。

現場で必要なのは、一度だけ「うまくできる」ことだけではありません。

言われたことを受け取り、試し、必要ならまた変えられること。

演技を学ぶことは、演出から独立することではありません。

むしろ、

演出をもっと受け取れる俳優になること

にもつながります。

「言われれば直せる」で止まっていないか

ある程度経験のある俳優や歌手の方ほど、一度ここを確認してみてください。

現場では、言われたら直せる。

演出家に言われれば分かる。

一緒にやればできる。

優秀な方々に恵まれて、仕事をしていると、ますますそういった傾向が強くなる気もします。 

でも、一人で台本を準備すると、何から考えればいいのか分からない。

作品が変わると、また同じようなところで止まる。

毎回違う言葉で指摘されるので、別の問題だと思っていたけれど、振り返ると似たことが続いている。

もしそうなら、足りないのは単純な経験量ではないかもしれません。

自分で判断するための材料と、その使い方が、まだ十分に自分のものになっていない可能性があります。

現場で受けたフィードバックを、次の行動へどうつなげるかについては、こちらの記事でも詳しく書いています。

演技のフィードバックが「分かった」で終わるとき、何が起きているのか

演技のフィードバックが役に立たない理由|「もっと自然に」で止まらないために

良い演技指導は、先生の「正解」を覚えることではない

演技指導で大切なのは、講師が毎回、

「ここはこうしてください」

「こう演じれば正解です」

と答えのようなものを渡すことではありません。

それでは、講師がいなくなった途端に困ってしまうはず。

必要なのは、

自分が実際に何をしているのかを、見ること。

どこで止まったのかを知ること、解決方法を探せること。

台本の何を根拠にしているのかを確かめること。

身体や呼吸、声がどこで変化したのかを見ること。

変えるための練習が自分でできること…

相手から何を受け取り、それによって自分がどう変わったのかを自己洞察のように、振り返れること

そして、

次に何を試すかを、自分でも判断できるようになること。

ここまでが学習だと思います。

また、このプロセスで、それぞれの自信もついていくなと、実際に、舞台だけでなく、テレビや映画でも活躍する方を指導してきて、感じます。

「自分が演技できること」と「他人をできるようにすること」は別の専門技術

これは、私自身が20年以上の演技指導で大切にしてきたことでもあります。

自分が演技できることと、他人をできるようにすることは、別の専門技術です。

私は、自分自身が演技や舞台芸術を学ぶだけでなく、特にイギリスでは、「他者を教えること」について専門的な訓練を受け、実際の指導を続けてきました。

そこで必要になるのは、単に演技を見て、

「良かった」「さっきより面白かった」

「ここがダメだった」「ちょっと似てた」

こんなふうに言われて、困っちゃったことありませんか。

つまり、このように、印象を評価すること、感想をただ述べるわけでは無いのです。

その人が今、実際に何をしているのかを観察する。

何が起きているのかを見分ける。

身体、呼吸、声、台本、目的、行動、相手とのやり取りのどこで止まっているのかを切り分ける。

この課題の解きほぐしが、教える側の専門技術の一つだと思っています。

そして、

次に何を試せばいいのかを、その人が使える形で渡す。

だから個人レッスンでも、シーンを私の好みや演出に直すことを目的にしていません。

その場で「うまくやらせる」だけなら、次の作品ではまた困るかもしれないからです。

現場に行ってみたら、演出が変わっていた、ということもあるでしょう。

目指しているのは、

次に自分でできるようになること。

準備しているときに、基準に照らし合わせられるようになること。

そして現場では、

演出や監督から渡されたものを、より早く、より具体的に試し、必要に応じて調整できること。

です。

だから、実際、クラスの参加を続けている方、個人レッスンでブラッシュアップを進めている方からは

「全然、精神論じゃなかった。他のワークショップや単発のクラスに行ったこともありましたが、あの宗教みたいな雰囲気が苦手でした。かおる先生のクラスは全然違います。」

と言われます。

演技が伸び悩んだら「何年やったか」より「何が残ったか」を見る

何年、俳優を続けてきたか。

何本の作品に出演したか。何人の演出家と仕事をしたか。

どんなワークショップを受けたか。

それらは、もちろん大切な経験です。

でも、自分の現在地を見るなら、もう一つ確認してみてください。

以前ならできなかったことが、今は自分からできるのか。

条件が変わっても使えるのか。

【つたわる】形にするまでに、かかる時間が縮まっているか。

初めての台本でも、ある程度の確信を持って、自分で準備を始められるのか。

監督や演出家からのフィードバックを、具体的な次の行動へ変えられるのか。

一度やってみたあと、さらに違う要求が来ても調整できるのか。

経験年数ではなく、何が自分に残ったのか。

ここを見ると、

「経験してきたこと」と「学習してきたこと」の違いが見えてきます。

これは、俳優、歌手、声優、ダンサーの方、みなさん似ているのではないでしょうか。

何年も同じところで止まっているなら、経験を足す前に一度見直してみる

長く演技を続けてきた。

現場にも出てきた。

演出もたくさん受けてきた。

それでも、

「もっと自然に」

「もっと相手を見て」

「もう少し抑えて」

「もっと動いて」

と、似たようなことを繰り返し言われている。

だからといって、これまでの経験が無駄だったわけではありません。

ただ、

次も同じ種類の経験を増やせば解決するとは限りません。

これまで積み重ねてきたものの中から、

何が自分で使えるようになったのか。

何は、まだ人から言われなければ変えられないのか。

どこで毎回止まるのか。

そこを一度見てみる。

長く続けてきた人だからこそ、次に必要なのは「もっとやること」ではなく、これまで何を学習してきたのかを見直すことかもしれません。

個人レッスンでは「なぜまたそこで止まるのか」を一緒に見ます

今の課題が、

「長くやっているのに、なぜか同じところで止まる」

「言われれば直せるけれど、自分では気づけない」

「台本を読んで準備しても、演じると曖昧になる」

「監督や演出家の言っていることは理解できる。でも、どう変えればいいか分からない」

という状態なら、まず現在地を具体的に見るところから始めます。

個人レッスンでは、台本、役、身体、呼吸、声、相手とのやり取りなどを実際に見ながら、

何が起きているのか。

どこで止まっているのか。

次に何を試すのか。

を切り分けていきます。

ただ「もっと頑張る」のではなく、次の稽古や現場で何を試せばいいのかが具体的になるところまで扱います。

台本読解とシーン実践で「分かった」を実際に試したい方へ

2026年8月29日(土)19:00〜22:30には、舞台・映像共通のオンライン台本読解クラスを開催します。

8月30日(日)13:00〜17:30には、世田谷区内のスタジオで少人数制のシーン実践を行います。

オンラインで読んで考えたことが、実際に相手を前にしたときにも使えるのか。

相手から予想していなかったものが返ってきたときに、自分の演技を変えられるのか。

読解と実践を切り離さず試したい方は、こちらをご覧ください。

2026年8月|オンライン台本読解・少人数シーン実践クラスの詳細

【2026年8月開催】演じるための台本読解オンライン+シーン実践|もう、一人で考え込まない

個人レッスンをご希望の方は、現在の演技経験、今気になっている課題、今後の活動予定などを添えてお問い合わせください。

自分は、これまで何をできるようになったのか。

そして、

次の現場で、何を自分で判断し、受け取り、変えられるようになりたいのか。

そこから一緒に見ていきます。

現在取り組んでいる台本、出演予定の作品、オーディション、動画提出、撮影や舞台稽古など、今ある具体的な課題を個別に扱いたい方には、個人レッスンがあります。

時間を自分の課題に集中して使えるため、

「台本を読んでいるのに、演技につながらない」
「同じ注意を繰り返し受けている」
「一人になると、何を準備すればいいのか分からない」
「現場やオーディションの前に、一度整理しておきたい」

という場合にも利用していただけます。

初回は、現在の活動や困っていることを確認し、台本読解、身体と声、相手とのやり取りなども含めて、今どこで止まっているのかを見ていきます。

個人レッスン専用フォームはこちら

少人数クラス・セミプライベートをご希望の方へ

一人だけでなく、実際に相手と演じながら学びたい方には、少人数制のグループクラスがあります。

オンラインでの台本読解、スタジオでのシーン実践、身体と声のクラスなど、内容や時期を変えながら年間を通じて開催しています。

また、ご家族やお仲間、同じ事務所・劇団など複数名で取り組みたい場合は、セミプライベート形式についてもご相談いただけます。

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所属俳優への演技指導、モデルから俳優へ活動を広げる方のサポート、芸能事務所や映画スクール、学校等でのクラス開催、講師招聘も承っています。

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安全な学びの場づくりについて

当クラスでは、俳優同士がその場の流れや即興判断で、急に身体接触を行うことを禁じています。

身体的接触を含む可能性のある場面は、台本上の必要性、目的、手順、同意、境界線を事前に確認した上で扱います。

安全とハラスメント防止に関する詳細は、以下の固定ページをご確認ください。

レッスン・クラスにおける安全とハラスメント防止ポリシー

この記事を書いた講師

鍬田かおる

演技コーチ/STAT認定アレクサンダー・テクニーク教師/IDC認定インティマシー・コーディネーター(ディレクター)。

俳優、声優、歌手、ダンサーに向けて、台本読解、身体と声、セリフ、相手とのやり取り、現場前の準備を扱うレッスンを行っています。

必要なのは、努力を否定することではなく、見ている場所を変えることです。

そこを具体的に整理すると、演技や歌唱、ダンスの手応えも変わってきます。

見ている場所が変わると、考え方が変わり、演技や歌唱、ダンスで選べることも変わります。

その選択肢が、現場で相手と協働し、作品へ具体的に貢献する力につながります。

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