読書は大切です。
耳にタコができるほど、聞き飽きた方もいらっしゃるかも…
この記事では、演技に必要な「相手に返す力」について、読書や台本読解だけでは変わりにくい課題として考えていきます。
映画を観ることも、舞台を観ることも、脚本を読むことも、演劇論や俳優論に触れることも、もちろん大切です。
言葉が増える。
視点が増える。
作品への理解が深まる。
人間を見る目も育っていく。
大事なことですよね。
当然、俳優、声優、歌手、ミュージカル俳優にとって、読むこと、観ること、考えることは、表現の土台になります。
けれども、演技の課題の中には、読書だけでは変わりにくいものがあります。
それは、ただ知識が足りないからではありません。
考えたことを、相手に返す力。
その場で判断を外に出す力。
相手が次に動ける形で、自分の反応を渡す力。
つまり、相手が、自分の身体の外が必要なんです。
ここが育っていないと、どれだけ本を読んでも、演技はなかなか変わりません。
これ、20年以上、俳優や歌手だけでなく、養成所や大学などでも、そしてプロの方々も指導してきて、痛切に感じます。
読書や映画鑑賞は大切です。でも、それだけでは変わらない課題があります
「もっと本を読んだ方がいい」
「映画をたくさん観た方がいい」
「良い作品に触れた方がいい」
これは、間違いではありません。
むしろ、必要です。
表現者にとって、読書や鑑賞は、感性や語彙を育てる大切な時間です。
私自身、舞台も映像も大好きで、ほぼ毎週なにかを観に行っています。
ただ、本を読むのも映画を見るのも舞台を鑑賞するのも…どうしても性質上、実践にはかなわないんです。
なぜなら、演技は一人で完結するものではないからです。
台本を読んで理解する。
役について考える。
感情を想像する。
背景を調べる。
そこまでは、スピードや深さはさておき、おおよそ一人でもできます。
でも、実際の演技では、その先が必要です。
相手の言葉を受け取る。意味を考える。
自分の中で判断する。その上で、相手に返す。
状況を動かす。影響を感じ、コミュニケーションを変化させていく。
次の反応を受け取って、さらに方法が、また変わる。
このやり取りが起きてはじめて、場面は動きます。
演技で必要なのは、考えたことを相手に返す力です
演技のレッスンやクラスで見ていると、台本について考えている人はたくさんいます。
役の気持ちを考えている。ここにたくさん時間を使う方は多い。
状況も理解しようとしている。現場でも必要なことです。
自分なりに準備もしている。苦労してる方も多いです。
それでも、いざ相手の前に立つと、演技が止まってしまうことがあります。
分かったつもりでも、相手に返せなければ場面は動きません
頭の中では分かっている。
でも、相手に返せない。返すときの種類が少ない。
言葉が外に出ない。出てはいるけど、独り言に近い。
判断が見えない。結果は見えるが、原因につながっていない。
自分が何をしたいのか、相手に伝わらない。
この状態では、台本の理解が演技に変換されません。
演技は、内側で分かっていることを発表する作業ではありません。
相手に向かって、何かをしようとすることです。
例えば、説得する。
隠す。それは何のために?
確認する。いつ、どこで?
逃げる。どこまで?
近づく。もし近づかなかったらどうなる?
拒む。それはなぜなのか…?
枚挙に暇がありませんが、その行動が相手に届いたとき、場面が動きます。
だから、自分自身も生き生きとし、キラッと光る瞬間が増えていきます。
読解はゴールではなく、相手に働きかけるための準備です
台本読解や分析は、とても大切です。
私自身、切り口や視点を変えて、またテーマ別に、オンラインでのクラスを展開しております。
けれども、読解そのものはゴールではありません。
台本を読んで、また役を分析して、
「この役は悲しい」
「この場面は怒っている」
「ここは切ない」
と分かっただけでは(私のクラスは、そのようなやり方ではありませんが)、まだ伝わるような演技にはなっていません。
大切なのは、その理解を使って、相手に何をするのかです。
悲しいから泣くのではなく、その悲しみを抱えたまま、相手に何を求めるのか。それはなぜなのか。
怒っているから声を荒げるのではなく、その怒りを抱えたまま、相手をどう変えたいのか。それがどう波及していくのか…。
切ないから雰囲気をなんとなく探し出すのではなく、その切なさの中で、何を言えずにいるのか。でももし言えたら…?
読解は、相手に働きかけるための準備です。
ここが整理できてくると、みなさん表情も変わります。
読書では治りにくい課題とは何か
読書で言葉は増えます。
考えも深まります。
作品への理解も広がります。
でも、読書だけでは育ちにくい力があります。
それは、相手とのやり取りの中でしか見えてこない力です。
本題に返事ができない
たとえば、現実のやり取りでも、意外と差が出ます。
「来月、参加します」
「今回は見送りますが、次回は〜」
「この日程なら行けますので〜」
「今の自分には個人レッスンが必要だと思います」
「この課題を見てほしいです、なぜなら…」
こうした返事は、相手が次に動ける言葉です。
一方で、
「自分なりに考えてみます」
「勉強になります」
「貴重な機会をありがとうございます」
「またタイミングが合えば」
という言葉だけでは、相手は次に何をすればよいか分からないことがあります。(まぁ社交辞令もあると思いますが)
丁寧ではある。
でも、本題に返っていない。
これは、演技でも同じです。
セリフを言っている。
感じているつもりもある。
でも、相手が次に動けるだけの働きかけになっていない。
そのとき、場面は止まります。
相手との距離も変わりませんよね。
判断を外に出せない
演技では、内側で考えているだけでは足りません。
内側でイメージを持っただけで伝わるようになるには、よっぽど「めぐるめいている」必要がありますし、感じていることが【邪魔されず】つたわる心身の状態や仕組みを持っていることが条件に挙げられます。
それこそ、
今、相手の言葉をどう受け取ったのか。
何が変わったのか。
次に何をしようとしたのか。
その判断が外に出てこないと、観ている側にも、相手役にも伝わりません。
本人の中では、たくさん考えているかもしれません。
でも、舞台でも映像でも、観客やカメラが見ているのは、内側の説明ではなく、今その場で起きている変化です。
だからこそ、演技には、判断を外に出す力が必要です。
これは性格の問題ではなく、トレーニングで磨いていくことができます。
相手が次に動ける形で返せない
会話は、言葉の交換だけではありません。
相手の言葉を受け取って、自分の反応を返す。
その反応を受けて、相手がまた変わる。
その繰り返しで、関係が動きます。
演技でも同じです。
自分のセリフを正しく言うことだけに集中していると、相手に何も渡せなくなります。
すると、相手も動けません。
場面が止まる。
テンポが重くなる。
セリフが説明に聞こえる。
感情を出しているのに、関係が動いて見えない。
こうした課題は、読書だけでは見つけにくいものです。
実際に相手の前に立ち、返してみて、受け取られているかどうかを確認する必要があります。
演技は、内側で考えるだけでは成立しません
演技が難しいのは、考えることと、外に出すことの両方が必要だからです。
広く、そして深く想像しない、考えない演技は、浅くなります。
でも、1人で考えているだけの演技も、動きません。
また、この差は顕著です。
受け取る、判断する、返す、変える
演技では、次の流れが必要です。
受け取る。
判断する。
返す。
変える。
相手の言葉を聞いた。
でも、それをどう受け取ったのか。
相手の態度が変わった。
でも、それによって自分の目的はどう変わったのか。
自分が言った言葉に、相手が反応した。
でも、その反応を受けて、次は何をするのか。
この一つひとつが演技の中身です。
台本読解は、この判断を支えるものです。
そしてレッスンやクラスでは、その判断が実際に相手へ届いているかを扱います。
感情は込めるものではなく、関係の中で漏れ出るものです
演技でよく起きる誤解に、
「もっと気持ちを込める」
「感情を乗せる」
「気持ちを想像する」
という方向があります。
でも、実際の人間は、現実を変えたいときに、わざわざ気持ちを込めようとはしていませんよね?
欲しいものがある。
避けたいことがある。
分かってほしいことがある。
隠したいことがある。
相手を変えたい、自分を守りたい。
その中で、感情は勝手に漏れ出ます。
隠していても、染み出てしまうものです。
だから、演技で大切なのは、感情を直接出そうとすることではありません。
相手との関係の中で、何を受け取り、何を返し、何を変えようとしているのか。
そこが動いたとき、感情は結果として見えてきます。
クラスや個人レッスンで扱うのは、知識ではなく実際のやり取りです
台本を読んでも、なかなかそんなつもりはないのに、相手に返せない。
考えているのに、実際の違いのある演技へは動かない。
ダメ出しを受けても、次に何を変えればいいか分からない。
自分の中では分かっているのに、外から見ると伝わっていない。
こうした課題は、一人で考えているだけでは見えにくいものです。
実際に相手の前に立ち、
受け取り、返し、
止まったところを確認し、
もう一度試す。
その繰り返しの中で、演技は変わっていきます。
演技を自分で変えられる人になるために
演技が変わる人は、ただ知識を増やしている人ではありません。
読んだこと。
観たこと。
考えたこと。
感じたこと。
それを、相手に返せる形に変えていける人です。
だから表情も変化が生まれますよね。
そして、自分の演技が止まったときに、
どこで受け取れていなかったのか。
何を決めすぎていたのか。
相手に何をしようとしていたのか。
声、身体、呼吸、台本読解のどこに原因があったのか。
そこを少しずつ見直せる人です。
だから現場が続きます。
演技は、誰かに直してもらうだけのものではありません。
自分で気づき、自分で試し、自分で変えていくための判断基準を育てることが大切です。
そのために、少人数制のクラスや一人ひとりの課題や目的に合った個人レッスンがあります。
通年で現場の準備、オーディション対策、なかなか1人では練習しにくい課題などを進めてらっしゃる方もいらっしゃいます。
スポーツ選手と同じで、コーチをつけるのは、ズルじゃないですよ。
欲しい目的、目標があるからこそ、だと思います。
次の記事へ|役に立つフィードバックとは何か
では、実際のレッスンやクラスでは、どのようなフィードバックが役に立つのでしょうか。
「もっと自然に」
「少し平坦かも」
「変化をつけて見て」
「ちょっと感情が足りない」
そう言われても、次に何を変えればいいか分からないことがあります。
私自身、小学生の頃から、そしてイギリスに行くまで、実はずっとこのようなアドバイスに戸惑っていました。
また、的確なアドバイス、具体的なダメ出しをもらっても、理由が解釈できなかった自分の力もありますし、それに対応するスキルがなく、また先延ばししていた部分もあったと感じます。
次の記事では、演技が変わるフィードバックについて扱います。
感想ではなく、次に試せる言葉。
評価ではなく、自分で演技を変えられる判断基準。
そこが、演技レッスンやクラスの大きな価値になります。
台本を読んでも、何を変えればいいか分からない方へ。
セリフ、台本読解、相手とのやり取り、声・身体・呼吸のつながりを、クラスや個人レッスンで具体的に扱っています。
最新のクラス情報は、こちらからご確認ください。
自分ごとで演じるための台本読解クラス
https://kaorukuwata.com/script-reading-purpose-goal-scene-class-20260725/
個別の課題を詳しく見直したい方は、個人レッスンもご利用いただけます。
演技の個人レッスンについて
https://kaorukuwata.com/acting-private-lesson/
個別の台本やオーディション課題を扱いたい方へ
グループクラスの日程に参加できない方、個別の台本、出演予定、オーディション課題を扱いたい方には、個人レッスンがあります。
時間を目一杯自分の課題に使うことができるので、スピードがアップして良いとおっしゃる方もいます。
ダンスや歌だと、個人レッスンが当たり前なのに、演技が後回しになってしまう方も。
初回は、現在の活動、課題、今後必要になる準備を確認し、取り組む順番を整理します。
この方向性を決めていくこと、棚卸しすることが、飛躍するための重要なステップだと考えております。
私自身、これまで様々な先生たちのおかげで、あちこちで学んできましたが、やはり深く掘るということ、これに尽きると感じております。
クラス案内・個人レッスン・講師依頼について
うちの事務所でもレッスンをしてもらいたい、所属の俳優に指導してほしい、モデルから俳優へ転校する方をサポートしてほしいなど、演技クラス、個人レッスン、教育機関・芸能事務所・映画スクール等での講師依頼については、下記よりご確認ください。
個人レッスンのお申し込み・ご相談はこちらからも受け付けています。
https://forms.gle/Na4Pe383GkxnJaqQ6
制作現場、映画スクール、舞台・映像作品に関する講師依頼やご相談は、下記のお問い合わせフォームよりご連絡ください。
公式LINEについて
クラスや個人レッスンの最新情報、ブログ更新のお知らせ、演技・台本読解・身体と声に関するご案内は、公式LINEでもお届けしています。
お急ぎの方、公式LINEから、次のレッスン情報を早く受け取りたい方、LINEもご利用いただけます。
こちらからのトークのスタートはできませんので、お一言ご挨拶かスタンプお願いします。私の方では、トークの表示がされませんので、お願いいたします。
次回以降のクラス情報を受け取りたい方へ
安全な学びの場づくりについて
当クラスでは、俳優同士がその場の流れや即興判断で、急に身体接触を行うことを禁じています。
身体的接触を含む可能性のある場面は、台本上の必要性、目的、手順、同意、境界線を事前に確認した上で扱います。
安全とハラスメント防止に関する詳細は、以下の固定ページをご確認ください。
この記事を書いた講師
鍬田かおる
演技コーチ/STAT認定アレクサンダー・テクニーク教師/IDC認定インティマシー・コーディネーター(ディレクター)。
俳優、声優、歌手、ダンサーに向けて、台本読解、身体と声、セリフ、相手とのやり取り、現場前の準備を扱うレッスンを行っています。
必要なのは、努力を否定することではなく、見ている場所を変えることです。
そこを具体的に整理すると、演技は少ずつ手応えも変わってきます。
結果的に、現場もスムーズに、作品に貢献できるようになっていけます。

演技コーチ/ムーヴメント指導・演出・振付/IDC認定インティマシーディレクター/STAT認定アレクサンダー・テクニーク指導者/スピーチ&プレゼンテーションコーチングActing Coach/Movement Direction/IDC qualified Intimacy Director/STAT certified Alexander Technique teacher, mSTAT, Movement Teaching/Speech and Presentation Coaching



