先日、表参道のいつもの美容師Gさんと、髪のスタイリングについて話していました。
スタイリングが決まらない。
広がる、まとまらない、うねる。
そういう時、人はつい、上から何かを足して何とかしようとします。
アウトバストリートメント。
整髪剤、スプレー。
オイル、高級トリートメント。
今すごく、流行ってますよね。
もちろん、それぞれに役割はあります。
でも、Gさんが声を大にして、どうしても譲れないと言っていたのは、そこではありませんでした。
「シャンプーだけはどうしても変えてほしい。それだけは譲れない」
そう言っていたのです。
これ、パフォーミングアーツの世界ではどういうことになるでしょうか?
流行りのオイルでも、高級トリートメントでもない。
毎日いちばん使っていて、頭皮に直接触れているシャンプーが変わらなければ、後から何を足しても根本は変わりにくい。
その話が、とても印象に残りました。
上から何を足しても、毎日使うものが変わらなければ変わりにくい
これは、シャンプーだけで全部が解決する、という話ではありません。
髪の専門的なことは、美容師さんの領域です。
ただ、私がその話を聞いて強く感じたのは、後から何を足しても、上から何を足しても、毎日いちばん触れているものが変わらなければ、根本は変わりにくいということでした。
これは、実は怖い話でもあります。
なぜなら、毎日やっていることが、いちばん積み重なるからです。
たまに使う特別なケアよりも、毎日使っているもの。
気合いを入れた日の対策よりも、何気なくくり返していること。
結局長い時間やってることなんです。
そこが変わらないままだと、上からいろいろ足しても、結局いつもの状態に戻りやすい。
これは、単発じゃない。
継続性の話です。
毎日やっていることだから、いちばん影響が大きいのです。
結局、頭皮の汚れが落ちていないのに、どんどんどんどんシリコンを重ねていって、オイルを重ねて…蓄積して欲しくないものばかり溜まっていませんか?
私自身も、10年以上シャンプーはそこで買っています(笑)
私も、トリートメントやリンスやオイルを否定しているわけではありません。
むしろ、使っています。
ただ、もう10年以上、シャンプーはGさんのところで買っています。(笑)
その時点で、彼が一番いいと思うものを、少しずつ更新しながら使っています。
なぜなら、髪も変わるし、テクノロジーも、製品も変わるからです。
昔よかったものが、今の髪に合い続けるとは限らない。
以前は十分だったケアが、今の状態に合っているとも限らない。
だから、土台も少しずつ更新していく。
この感覚は、身体と声にもよく似ていると思いました。
そして、価値観のアップデートや学習スタイルだけでなく、演技のスタイルも、実は時代とともに少しずつ変化しているんです。
さらに言うと、
これ、演技や歌の身体と声も同じだなと思いました
演技や歌でも、上から足すことはたくさんできます。
新しい台本に取り組む。
特技を増やす、もっとジムに行く。
趣味を増やす、気分転換を新しく取り入れる。
単発で何かを受ける、新しいノウハウを試す。
もちろん、それらも大事です。
新しい刺激を受けることも、経験を増やすことも、表現者にとって必要なことです。
ただ、毎日くり返している身体と声の使い方がそのままだと、その上に何を足しても、結局いつもの自分の使い方に戻ってしまうことがあります。
何百回も繰り返している立ち方、
何千回とやっている息の使い方。
無意識でどんどん出ていく、声の出し方。
いざと言う時、そしてしゃべったり動いているときの、力み方。
考え方も含めた、反応の癖。
それこそ、台本の読み方まで。
とすると、パフォーマンスを繰り返す俳優や歌手の方は共通して、
人前に立つ時の構え方であったり、緊張した時に、どこを固めるのかをかえていくことで、ブレイクスルーにもつながります。
言葉を声に出す前に、身体がどんな状態になっているのか。
こうしたことは、特別な日にだけ現れるものではありません。
普段からくり返しているから、本番でも、稽古でも、オーディションでも出てきます。
だからこそ、根っこの部分が重要になるのです。
毎日くり返している身体と声の使い方が、表現の土台になる
演技や歌でうまくいかない時、多くの方は「何を足せばいいか」を考えます。
もっと感情を出す。
もっと大きく動く、もっと声を出す。
もっと練習する、もっと知識を入れる。
それ自体が間違っているわけではありません。
でも、土台の使い方が変わらないままでは、足したものがうまく働かないことがあります。
そして、いっぱいいっぱいになったこと、ないですか?
たとえば、声を出そうとした時に、毎回のどや肩を固めてしまう。
人前に立つと、無意識に息を止めてしまう。
セリフを言う前に、身体がもう「ちゃんとやらなければ」という構えになっている。
相手を見る前に、自分の中で準備した言い方に戻ってしまう。
その状態で、新しいテクニックや新しい練習を足しても、身体はいつもの道を通ろうとします。
だからこそ、単発でいろいろ足す前に、毎日の立ち方・息・声・力みを見直すことが必要になるのです。
「身体を空けておく」ことについては、以前の記事「身体を空けておくとは何か|演じる身体と声を取り戻すために」でも詳しく書いています。
身体を空けておくとは何か|演じる身体と声を取り戻すために
単発で足す前に、立ち方・息・声・力みを見直す
変わるのは、特別な日に何かを足した時だけではありません。
毎日くり返している土台を少しずつ見直していく時、身体と声の反応は変わり始めます。
これは、派手な変化ではないかもしれません。
けれど、表現者にとってはとても大切な変化です。
息が少し通りやすくなる。
声を出す前の構えに気づける。
力を入れなくても、相手に届く感覚が増える。
緊張しても、全部を固めずにいられる選択肢が増える。
台本を読む時も、頭だけで考えるのではなく、身体と声で試しながら扱えるようになる。
その方が、飽和しません。
身体と声の準備は、特別な日にだけ何かを足すことではありません。
日々の使い方を、少しずつ更新していくことから始まります。
シャンプーの話で言えば、毎日触れているものを変えずに、上から何かを足し続けるだけでは限界がある。
身体と声も同じです。
毎日いちばん触れている使い方を変えないと、根本は変わりにくいのです。
実際に、身体の使い方を見直すことで、声や表現への向き合い方が変わり、「もう一度、表現が楽しくなった」と感じられた方もいらっしゃいます。
詳しくは、身体の使い方を見直すことで、声や表現への向き合い方が変わった方のご感想をご覧ください。
楽しめなくなっていた表現が、もう一度楽しくなった理由──俳優・歌手のための身体からのアプローチ
よくあるご質問
身体と声の使い方は、演技や歌にどう関係しますか
身体と声の使い方は、セリフの届き方、息の流れ、声の出し方、人前に立つ時の構えに関わります。
毎日くり返している立ち方や息の使い方がそのままだと、本番や稽古でも同じ反応が出やすくなります。
声は、喉だけで出しているわけではありません。
姿勢、呼吸、足裏、背中、首、あご、目線、空間への反応など、全体の使い方が声の響きや届き方に影響します。
単発のレッスンや新しい練習は意味がないのでしょうか
意味がないわけではありません。
新しい刺激や経験も大切です。
ただし、毎日くり返している身体と声の使い方が変わらないままだと、せっかく足したものがいつもの癖に戻ってしまうことがあります。
上から何かを足すことを否定しているのではありません。
上から足す前に、毎日触れている土台を見る必要がある、ということです。
身体と声を見直す時、最初に見るべきことは何ですか
まずは、立ち方、息の使い方、声を出す前の身体の状態、力み方、人前に立つ時の構えを確認することです。
特別なテクニックを足す前に、普段の使い方に気づくことが出発点になります。
自分では自然にやっているつもりでも、声を出す前に息を止めていたり、相手を見る前に身体を固めていたりすることがあります。
そこに気づけると、演技や歌の準備にも新しい選択肢が生まれます。
身体は1つしかありません。それを何でいっぱいにするか?と考えてみてください。
身体と声を見直すセミプライベートレッスンについて
6月29日(月)13:00-15:30 は、身体と声を見直すセミプライベートレッスンを行います。
新しい台本や特技を増やす前に、毎日くり返している立ち方、息の使い方、声の出し方、力み方を見直したい方へ。
少人数で、今の身体と声の使い方を実際に確認しながら、次に試せる方向を探していきます。
身体と声は、気合いだけでは変わりません。
でも、自分が毎日どんな使い方をしているのかに気づくと、変えられることが少しずつ見えてきます。
6月29日の身体と声を見直すセミプライベートレッスンの詳細は、ご案内ページをご覧ください。
6月29日(月)開催|身体と声のセミプライベートレッスン
単発で何かを足す前に、毎日くり返している土台を見直したい方は、個人レッスン及びこちらのセミプライベートレッスンに関しても、DMまたはお問い合わせフォームよりご相談ください。
個人レッスンで相談したい方へ
日程が合わない方、またはご自身の課題を個別に扱いたい方は、個人レッスンでもご相談いただけます。
台本読解から、役の準備。
身体と声の使い方、オーディション前の整理。
現場前の準備や相談…
俳優や歌手の方ミュージカルで活躍される方も、歌やセリフになると身体が固まる時の見直し。
一人では気づきにくい身体の使い方や、役の人物としてどこに立つのかを、アレクサンダーテクニークの考え方をベースに、一緒に確認していきます。
セリフの前に、人物は始まっています。
そして、その人物がどんな身体で、どんな感覚で、その世界に立っているのか。
そこを実際に身体と声で確かめたい方は、クラスまたは個人レッスンをご活用ください。
この記事を書いた講師
鍬田かおる
指導歴20年+
演技コーチ。俳優・声優・歌手の方に向けて、台本読解、セリフ、身体と声、ムーヴメント、アレクサンダー・テクニーク、ラバン、現場やオーディションに向けた準備などを、多角的に扱う演技指導を行っています。
セリフを覚えることだけでなく、役の人物が何を見て、何を受け取り、何を選び、どのようにシーンの中で変化していくのかを、台本・身体・声・視線・間・関係性を通して具体的に見直していきます。
詳しいプロフィールは、ホームページのプロフィールページをご覧ください。
クラス案内・個人レッスン・講師依頼について
鍬田かおるの演技指導では、俳優・声優・歌手の方に向けて、台本読解、セリフ、身体と声、ムーヴメント、オーディション対策、現場に向けた準備を扱っています。
演技レッスン、演技クラス、個人レッスン、学校・養成所・事務所でのクラス、講師依頼については、各案内ページまたは下のお問い合わせフォームよりご確認ください。
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演技コーチ/ムーヴメント指導・演出・振付/IDC認定インティマシーディレクター/STAT認定アレクサンダー・テクニーク指導者/スピーチ&プレゼンテーションコーチングActing Coach/Movement Direction/IDC qualified Intimacy Director/STAT certified Alexander Technique teacher, mSTAT, Movement Teaching/Speech and Presentation Coaching



