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シーンの目的はどこから考える?|セリフや「どう演じるか」から逆算すると迷う理由

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「もっと読み込んできて」と言われたあと、何してますか?|俳優の台本読解

「このシーンの目的は?」

演技を勉強したことがある方なら、一度は考えたことがあると思います。

目的が大切なことも知っている。役についても考えている。台本にも書き込んでいる。

それなのに、実際に相手と演じ始めると何をしているのか曖昧になる。一つのシーンではそれなりに成立しているのに、作品全体で見ると人物が進んでいない。

そんな時、さらに一生懸命「目的」を考えれば解決するとは限りません。

一度見直したいのは、

「その目的を、どこから考え始めたのか」

です。

経験を積んだ俳優にも起こりますし、長く演技に関わっているうちに、いつの間にか順番が入れ替わってしまうこともあるくらい、根深い問題です。

私自身も、イギリスやアメリカで俳優の育成やプロのブラッシュアップについて学び、研究するようになるまでは、考えているつもりでも、そのシーンだけなら成立する目的を置いていたり、あとから振り返れば矛盾のある設定のまま進めていたりして、「なぜ気持ちが動かないんだろう」「なぜ一貫しないんだろう」とモヤモヤしていた記憶があります。

「どう演じるか」から目的を作ると、順番が逆になる

台本を読むと、かなり早い段階からHOW=どのようにを考えたくなります。

ここは強く言おう。少し間を取ろう。近づいてみよう。もっと静かにした方がいいかもしれない。感情を強くした方がいいかな。

しかも、そのように監督や演出家からも言われるのです。

そして、先に決めた「どう演じるか」を持ったまま、

「では、このシーンの目的は何だろう」「ちゃんとやらなきゃ」

と考える。

この順番になると、すでに選んだ演じ方が成立するように、あとから目的を探すことになりやすいのです。

近づきたいから、近づく理由を探す。

怒りたいから、怒ることが成立する読み方を探す。泣きたいから、泣けそうな解釈を探す。

台本を分析しているようで、最初に思いついたHOWを、台本を使って補強しているだけになってしまうことがあります。

しかも、演出家や監督からそのように欲しい結果を先に言われた場合、

「ちゃんと焦って見えるかな」、「もっと明るくしてほしいって言われたけど、この音でいいかな」

と外からの確認の作業が先に来てしまう。

経験者ほど、これまでの現場やレッスンで使ってきた方法をたくさん持っています。それ自体は強みです。

ただ、過去にうまくいった方法と、今回の役の人物が今このシーンで必要としていることは同じとは限りません。

方法から目的が分かるのではありません。

その人物がどんな状況に置かれ、なぜ今ここにいて、何が起きているのか。文脈や状況が具体的になるほど、目的や目標も具体的になり、使える方法は少しずつ絞られていきます。

ここでいう方法は、声を大きくする、動く、表情を変える、といった、本来は、結果的に起きる、外側の「演じ方」だけでもありません。

相手に対して何をしようとしているのか。その働きかけも含まれます。

具体的に何をどう整理し、どう選択を絞っていくのかは、実際の台本を使ってクラスや個人レッスンで扱っている部分です。

セリフからシーンの目的を決めると、裏腹を取りこぼすことがある

もう一つ、よく起きるのが、セリフから目的を考えることです。

「こんなことを言っている。だから、この人はこうしたいんだろう」

と読む。

でも、これは小説やエッセイを読んだり、テレビや映画、舞台を見たりする「お客様」としての受け取り方ではありませんか。

俳優や歌手は、物語を外側から受け取るだけではなく、その人物として行動するために台本を読む必要があります。

ただ、人間は、本当に欲しいものをいつもそのまま口にするでしょうか。

好きなのに追い払うこともあります。怖いから強がることもあります。傷ついているから、何でもないように話すこともある。本当のことを知られたくなくて、まったく別のことを言う場合もあります。

セリフには、裏腹な可能性もあります。

ですから、書かれている言葉の意味からそのまま目的を逆算すると、役の人物が実際にしていることとずれることがあります。

以前、「セリフは結果であって、原因ではない」という記事でも、この問題について書きました。

セリフは結果であって、原因ではない

セリフを軽視するという話ではありません。

セリフを、その人物の目的を決めるための答えとして使ってしまわないことです。

あらすじは入口。人物の行動をすっ飛ばさない

あらすじから目的を想像することも、よくあります。

誰が登場し、大きく何が起こり、作品がどこからどこへ向かうのか。作品に入っていくための入口になります。

ただ、あらすじを読んですぐ、

「この人物は家族を取り戻したいんだ」
「この人は成功したいんだ」
「これは愛されたい人の話なんだ」

と大きな目的を置くと、その間に人物が実際にしていることを飛ばしやすくなります。

私は時々、これを「行動をすっ飛ばしている」と感じます。

人物は台本の中で、実際に何かをしています。

人物は台本の中で、実際に何かをしています。

そうした人物の行動や、シーンの中で実際に起きていることを見ないまま、あらすじから大きな目的だけを作ると、人物として行動する前に、その人物についての「説明」を演じ始めることがあります。

目的を考えるなら、その前に、台本の中で実際に何が起きているのかを見る必要があります。

ただし、何を手がかりにし、そこからどう目的や目標につなげていくのか。ここから先が、実際の台本読解のトレーニングです。

「台本に書いてあることを拾えた」と「演じるために読めた」は同じではない、という話はこちらの記事でも書きました。

台本を読んでも芝居にならない理由|俳優のための「演じる」台本読解

台本を読んでも芝居にならない理由|俳優のための「演じる」台本読解

超目的を急いで探しても、シーンは具体的にならない

演技をある程度学んできた方ほど、「超目的」という言葉をご存じかもしれません。

すると比較的早い段階で、

「この人物が作品全体で求めているものは何だろう」

と、大きな答えを探したくなることがあります。

特に、自分自身がその時期に、人生の大きなテーマについて考えている場合は注意が必要です。

「幸せになりたい」「結婚するべきだろうか」「親との関係や死をどう受け止めるか」など、自分の中で大きな問いになっているものは、台本を読む時にも無意識に入り込むことがあります。

すると、作品や役の人物を見ているつもりで、自分自身が今関心を持っているテーマに引き寄せて、大きな目的を早く決めてしまうことがあります。

作品全体の方向を見ることは大切です。

ただ、全体の超目的が見えたからといって、一つひとつのシーンの目的まで自動的に決まるわけではありません。

作品全体、シーン、その中で向かう目標、そして方法は、別々の項目として横に並んでいるわけではなく、入れ子のようにつながっています。

だから、シーンはシーンで見る必要があります。

大きな超目的一つだけですべての場面を説明しようとすると、どのシーンでも同じ方向、同じ人物、同じ芝居になってしまうことがあります。

以前、この構造をバスのルートにたとえて、もう少し詳しく書いたことがあります。

方法を目的にしているうちは、演技はその場しのぎになる

全体とシーンをどう行き来するのか。目的と目標がどうつながるのか。そこから方法がどう絞られていくのか。

この構造を理解して、実際の台本で使ってみるところまでがトレーニングだからです。

一つのシーンは成立している。それでも人物が進まない

ここまでの問題が厄介なのは、一つのシーンだけなら、案外うまく見えることです。

感情もある。セリフも成立している。反応もある。瞬間的には面白い。

それでも次のシーンにつながらない。

作品全体で見ると人物が展開していない。関係が進んでいない。前に起きたことが、次の場面にほとんど残っていない。

以前から私は、

「方法を目的にしているうちは、演技はその場しのぎになりやすい」

と考えてきました。

その場その場のHOWだけを成立させても、大きな方向とシーン、その中で起きていることがつながらなければ、人物は前へ進みません。

一つの場面をそれらしく成立させることと、作品全体の中で人物として進んでいくことは同じではありません。

読解が変わると、同じセリフも違って聞こえる

ここが、台本読解を実際の演技につなげる面白いところです。

目的や目標を仮に設定し、状況や文脈を具体的にして、役の人物の立場からその場を見る。

すると、同じ台本でも、それまで気にならなかったものが気になってくることがあります。

聞こえるものが変われば、受け取るものが変わる。受け取るものが変われば、感じるものも変わる。そして、次に相手に対してすることも変わっていきます。

「ここでは悲しくなろう」「次は怒ってみよう」と感情を先に作るのとは順番が違います。

役の人物として置かれている状況が具体的になり、実際に相手から何かを受け取るから、結果として感じるものが変わる。

私は、そのプロセスをクラスの中でも大切にしています。

実際に参加した方からも、「的確な目標を持つと演技がくっきりする」「感覚や感性でいままではやれてきたが、そろそろ限界が来ているように感じた」「howではなく、whyで考える」といった振り返りがありました。

9月20日、実際の台本を一緒に読みながら深めます

2026年9月20日(日)18:30〜22:00、オンライン「演じるための台本読解」を開催します。

今回扱うのは、シーンを進め、役を深めるための目的・目標・文脈です。

用語の正解を覚えるための講座ではありません。

自分では目的を考えているつもりでも、セリフから逆算していないか。あらすじから大きな答えに飛んでいないか。HOWを先に決め、その方法が成立するように台本を読んでいないか。全体の超目的を急ぐあまり、一つひとつのシーンを見ることを飛ばしていないか。

実際の台本を一緒に読みながら、そうしたズレを整理し、実際の台本を一緒に読みながら、そうしたズレを整理し、シーンの目的・目標・文脈を【自分ごと】の演技に」つなげていきます。

一方的に講義を聞くだけのウェビナーではありません。ライブ形式のオンラインクラスですので、分からないところはその場で質問できます。

「自分の場合は、ここをどう考えればいいんだろう?」

そんな疑問も、実際の台本を読みながら一緒に考え、【役の事情】へつなげます。

オンライン部分だけの参加も可能です。

海外在住の方、東京のスタジオまで来ることが難しい方、まず一度オンラインで台本読解そのものを見直してみたい方にもおすすめです。

映像やストレートプレイの俳優だけでなく、ミュージカルやオペラで役やシーンの読み方に悩んでいる方、声優として台本を読む機会が多い方にも応用できます。

ジャンルが変わっても、役の人物の立場から何が起きているのかを読み、見て、聞いて、行動する必要があることは変わりません。

また、これまでにクラスへ参加した方にとっては、以前学んだことを別の台本でも自分一人で使えるようにしながら、台本を見る切り口や選択肢をさらに増やしていくクラスでもあります。

 

2026年9月 演技クラス|「分かった」を「演じられる」へ【台本読解・演技実践・身体と声】

9月20日オンライン「演じるための台本読解」詳細・お申し込み

9月21日は、同じセリフがどう変わって聞こえるかを試します

翌9月21日(月・祝)13:00〜15:45は、9月20日のオンライン参加者を対象に、少人数制のスタジオ実践を行います。

オンラインで構造を理解したあと、シーンの目的や目標を仮に設定し、実際に相手役の前に立ってみる。

役の人物の立場から相手を見る。役の耳で、相手の言葉を聞く。

すると、相手からまったく同じセリフを言われても、自分が何を必要としているかによって、聞こえ方や受け取るものが変わることがあります。

その違いを、実際に身体と声を使って確かめます。

読解したことが頭の中の分析で終わらず、見ること、聞くこと、感じること、そして相手に対して行動することまでつながっているかを試す時間です。

まず台本の読み方を見直したい方は、9月20日のオンラインだけでもご参加いただけます。

読んだことが実際の相手とのやり取りの中でどう変化するのかまで体験したい方は、9月21日の少人数制スタジオ実践とあわせてご参加ください。

9月20日オンライン・9月21日少人数制実践の詳細/お申し込み

特定の役やオーディションが迫っている方へ

現在取り組んでいる特定の役を個別に深く整理したい方、オーディションや本番が迫っている方、自分がどこで目的・目標・方法を混同しやすいのか個別に見直したい方は、個人レッスンが適しています。

クラスでは、他の参加者の試行錯誤にも触れながら、別の台本にも応用できる考え方を扱います。

個人レッスンでは、ご自身が現在取り組んでいる台本や役、現場までの時間に合わせて、その時に必要な課題を絞っていきます。

個人レッスンをご希望の方はこちら
https://forms.gle/Na4Pe383GkxnJaqQ6

「このシーンの目的は?」

その答えを一つきれいに言えることより、自分で新しい台本を受け取った時に、どこから見ればいいのかが分かること。

そして、役の人物の立場から見て、聞いて、相手に対して行動できること。

一度「分かった」で終わらず、次の台本でも使える力にしていきましょう。

この記事を書いた人|鍬田かおる

演技コーチ。俳優・歌手・ダンサーを対象に20年以上、台本読解、役づくり、身体と声をつなぐ演技指導を行っています。

桐朋で演劇を学び卒業。その後ロンドンのGoldsmiths Collegeで演劇・舞台芸術を学び、Royal Central School of Speech and Dramaで修士課程を修了しました。

これまで、母校である桐朋をはじめ、新国立劇場演劇研修所・オペラ研修所、映画スクール、芸能事務所など、俳優や歌手の養成・トレーニングの場でも指導してきました。

英国・米国での学びと研究、20年以上の指導経験をもとに、「知っている」で終わらず、俳優自身が別の台本や現場でも使える力につなげることを大切にしています。

現在は演技指導のほか、映像作品のインティマシー・コーディネーター、舞台のインティマシー・ディレクターとしても活動しています。

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