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真面目に稽古しているのに、なぜ作品がつながらない?その「積み重ね」に要注意

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演技コーチ鍬田かおるによる俳優への演技指導

台本を何度も読んでいる。

セリフも繰り返し読んで、イメージして、ちゃんと入れている。

最初の場面から、何度も小返ししている。

一場面ずつ、ちゃんと考えている。

真面目に稽古している。

それなのに、

なかなか作品が先へ進んでいる感じがしない。

一場面ずつは演じられるのに、作品全体で見ると、人物に一貫性がない気がする。

何度も繰り返しているのに、どこかその場しのぎに見える。

そんな違和感を覚えたことはありませんか。

もしそう感じているなら、

その違和感は、大事です。

何度も読むことが悪いわけではありません。

繰り返し稽古することが悪いわけでもありません。

むしろ、俳優や歌手には、ジャンルを問わず、反復のトレーニングや練習、繰り返しが必要です。

ただし、

「最初から順番に積み重ねていけば、そのうち一つの作品になる」

と考えているなら、少し注意が必要です。

真面目にきちんと稽古しようとする俳優ほど、うっかりやってしまうことがあります。

それが、

作品づくりまで「積み重ね」で考えてしまうことです。

俳優のトレーニングには「積み重ね」が必要です

まず、ここは分けておきたいところです。

私は、積み重ねそのものを否定しているわけではありません。

身体や声をいつでも使えるように継続的にトレーニングする。

作品に直結してるものだけでなく、幅広く本を読む。

 

仕事に必要な作品だけでなく、幅広く映画や舞台を観る実際に、人を観察する。

さまざまなプロフェッショナルと仕事をする。

そして、現場以外でも、実際に演じる。

苦手を減らしながら、得意を伸ばして、それを次に生かす。

俳優としてできることを増やしていくには、日々の積み重ねが必要です。

一度やったから身につくわけでもありません。

だから、

日常のトレーニングや学習は、積み重ねる。

これは大切です。

問題は、

一つの作品を作るときまで、同じ発想だけで進めてしまうこと。

ここです。

頭からトコトコ進めるだけでは、作品全体がつながらないことがある

たとえば台本の最初から、

この場面ではこういう気持ち。

次の場面ではこういう気持ち。

その次は、その場面に来てから考える。

そしてまた最初に戻って、小返しする。

もちろん、こうした稽古が必要な場合もあります。

けれど、それだけを続けていると、

台本の頭からトコトコ順ぐりに進んでいるだけ

になってしまうことがありませんか。

一つひとつ丁寧にやっている。

稽古時間も使っている、だからこそ、何度も繰り返している。

だから本人としては、かなり取り組んでいる感覚があります。

ところが、作品全体で見ると、

あれっ?前半と後半がつながらない。

途中で人物が何を変えたのか、初めて見る方には分からない。

大きな出来事が起きても、それまでとの関係が変化したようには見えない。

結末と途中の選択が、ちょっと合わない。

ということが起きやすい。

そうすると作品全体が、少し、

「つれづれなるまま〜」

になってしまいます。

一場面ずつ成立していることと、一つの作品として成立することは違う

ここも、よく混同されます。

一場面だけを見ると、特におかしくない。

セリフも言えている。当然、それなりに感情もある。

もちろん真剣ですから、関係についても考えている。

相手ともそこそこ会話も成立しているように見える。

でも、作品全体を通して見ると、

「この人物は結局、何をしていたのだろう?」「一体何が動機だった?」

「どこに向かっていたんだろう?」

となることがあります。

ご自身が映画や舞台を見ていても、そのように漠然としたモヤモヤを感じた事はありませんか。

私自身、職業柄、いろいろな映画やテレビ、そして、舞台も見る機会が、これまで多かったのですが、シーンの展開が奇妙であったり、演出で狙ったわけでもないのに、唐突だったり、となると、まるでクイズを出されている気持ちです。

あえてそのような違和感を作り出したとも見えないのに、どうにも一貫性がない。必然性が足りない、そして、一つ一つのシーンがバラバラで見てみると、素敵な瞬間もあるのに、魅力的な方々もいるのに、全体を通してみたときに、なんだかよくわからない、ということがあるのです。

これは、一場面の出来が悪いという話ではありません。

一場面ずつ成立していることと、一つの作品として成立していることは同じではない

ということです。

繰り返し台本を読み込んでいるつもりなのに、

どこか関連性がない。

その場その場で考えたことをちょこちょこ足しているだけのような気がする。

もしそんな違和感があるなら、

「まだ読み込みが足りない」とすぐに考える前に、

作品全体とのつながりを見る必要があるのかもしれません。

台本を読んではいるけれど、演じるための準備として何が足りないのか分からない方には、こちらの記事も関連しています。

台本を読んでいるのに演技が深まらない方へ|演じるための台本読解シリーズ

台本を読んでいるのに演技が深まらない方へ|演じるための台本読解シリーズ

「一貫しない」のは、感情が足りないからとは限らない

作品がつながらないとき、

「もっと気持ちを作らなければ」

「感情の流れをもっとつなげなければ」

と考えることがあります。

そのように指摘される場面もあるのかもしれません。

私自身、学生の頃、同期から「驚いてるように見えない」とわざわざ言われて、そのこと自体に驚いたことがあります(笑)。

つまり、全体の中で成立していなければ、いくらキラッと光る瞬間があっても、信じるに値するかどうかの関門を超えられないのです。

ともすると、問題が感情の量や強さとは限りません。

本人の中には、ちゃんといろいろな感情がある。

一場面ごとにも感じている。

それでも、

全体を通じた構造がなくなる。人物が一貫しなくなる。必然性がない。

ということはあります。

作品にはすでに、

途中で起きる出来事があり、

後から明らかになる事情があり、

人物の変化があり、

そして結末があります。

そこが、結末がいつ変わるかもわからない、そして大きく変えていける現実の生活とは大きく異なります。

俳優は結末を知っている。でも、役の人物は知らない

私たちは日常生活で、このあと何が起きるのかを知りません。

今日誰に会うのか。

何を決断するのか。

何時までに何が変わるのか。さもなければどうなるか?

分からないまま、その瞬間その瞬間を生きています。

ところが作品では、

俳優本人は台本を最後まで読むことができます。

後で誰が現れるのか、何が明らかになるのか。

関係がどう変わるのか、最後に何が起きるのか。

俳優は知ることができます。知っていないと困る。

しかし、

役の人物は知らない。

ここに、俳優の仕事ならではの面白い矛盾があります。

俳優としては、先を知っている。

役の人物としては、先を知らない。

だから、作品の準備には少し特殊な考え方が必要になります。

作品づくりでは「積み重ねる」だけでなく、全体から逆算する

ここで必要になるのが、

逆算です。

作品には、すでに後で起きることが書かれています。

だから、

最初の場面から順番に考えて、

そこまでに積み上がったものだけを頼りに次へ行く、

という方法だけではなく、

作品全体を見た上で、そこへ至るまでに何が必要なのかを考える。

それが作品づくりでは必要になります。

日常生活は、まだ分からない未来へ向かって進んでいく。

作品は、結末まで書かれたものを、

初めて起きている出来事として生きる。

この矛盾が、俳優の仕事の面白いところだと思います。

「逆算する」は、結末を先取りして演じることではありません

ただし、

「逆算する」と言うと誤解も生まれます。

後で悲しいことが起こるから、最初から悲しそうにする。

未来を知っている顔をする。

伏線をわざとらしく見せる。

結末に向かって、最初から感情を仕込んでおく。

そういう意味ではありません。

むしろ逆です。

俳優として作品全体を理解して準備しているからこそ、役の人物としては「今ここで初めて起きていること」に集中できる。

目の前の相手を見る。

役の人物として聞く。

当事者として受け取る。

役本人のライフスタイルから、考える。

作品全体を知っている俳優と、

先を知らない人物。

その両方を成立させる必要があることがわかりますよね。

準備では逆算する。演じるときは、今を積み重ねる

だから私は、

俳優としては、先を知って準備する。

役の人物としては、先を知らずに生きる。

と分けて考えています。

もう少し短く言うなら、

準備では逆算する。

演じるときは、今を積み重ねる。

です。

これなら、「積み重ね」と「逆算」は対立しません。

日常のトレーニングは、積み重ねる。

俳優として使えるものを増やすのも、積み重ねる。

一方で、一つの作品を準備するときは、

作品全体を見ながら考える。

そして実際に演じるときには、

役の人物として、今ここで起きていることを生きる。

この三つを混ぜないことが大切です。

急に台本や役を渡されたときにも使える準備を普段から増やしておくことについては、こちらの記事でも書いています。

俳優のチャンスは、チャンスの顔をして来ない

俳優のチャンスは、チャンスの顔をして来ない|現場が来る前に準備しておきたいこと

真面目に稽古しているのに進まないなら、「量」以外も見直してみる

「もっと頑張らなければ」

「まだ回数が足りない」

と考える前に、

同じ方向へ積み重ね続けていないか

を見てみてください。

作品づくりでは、

ただ量を増やせば解決する問題ばかりではありません。

どこから全体を見るのか。

どの情報を重要なものとして扱うのか。

一場面で考えたことが作品全体と合わなくなったとき、何を見直すのか。

実際には、作品や役によって違います。

ここから先は、単純なチェックリストだけでは済みません。

私はクラスや個人レッスンでも、答えを一方的に渡すのではなく、実際の台本を使いながら、俳優自身が判断できることを増やしていくことを大切にしています。

台本を「読んだ」で終わらず、演じられる準備へ

「真面目に稽古しているのに、作品全体がなかなかつながらない」

「頭から何度も小返ししているのに、先へ進んでいる感じがしない」

「一場面ずつはできるけれど、人物に一貫性がない気がする」

「台本を読み込んでいるつもりなのに、相手と演じると準備したことがつながらない」

そんな方には、9月も実際の台本を使ったクラスを開催します。

9月20日(日)18:30〜22:00|オンライン|演じるための台本読解

台本に書かれていることを「分かった」で終わらせず、実際に演じるための準備としてどう扱うかを考えるクラスです。

作品全体と一つのシーンを行き来しながら、読んだことを実際の演技へつなげるための準備を扱います。

「何度も読んでいるけれど、何を演じればいいのか曖昧」

「場面ごとには考えたけれど、作品全体とのつながりが弱い」

「自分なりに準備したけれど、それをどう実践へ移すのか分からない」

という状態から、

実際に声に出し、相手との間で試せる準備へ進めていきます。

9月21日(月・祝)13:00〜15:45|少人数制・演技実践

前日に扱った台本を、今度は相手と実際に演じながら試します。

一人で準備していたときには成立していたものが、相手が入ることでどう変わるのか。

準備してきた演技をそのまま再現するのではなく、

相手から受け取ったものによって、その場で選択を更新できるか。

「分かった」を「できる」へ移し、さらに、相手や条件が変わっても使えるものへつなげるための実践です。

一場面だけをうまくまとめることではなく、

作品全体とのつながりを持ちながら、

役の人物として今ここで起きていることに向かうことを扱います。

9月20日・21日の内容と詳細、お申込みについてはこちらをご覧ください。

2026年9月 演技クラス|「分かった」を「演じられる」へ【台本読解・演技実践・身体と声】

2026年9月 演技クラス|台本読解・演技実践・身体と声

具体的な作品、役、オーディション、撮影、公演など、現在取り組んでいる課題を個別に扱いたい方は、個人レッスンについてもご相談いただけます。

日常のトレーニングは、積み重ねる。

作品の準備は、全体から逆算する。

演じるときは、今ここで起きていることを積み重ねる。

真面目に取り組んでいるからこそ、

ただ同じ方向へ積み重ね続けるのではなく、

今、何のための準備をしているのか。

そこを時々見直してみてください。

この記事を書いた講師

鍬田かおる

演技コーチ/STAT認定アレクサンダー・テクニーク教師/IDC認定インティマシー・コーディネーター(ディレクター)。

英国Goldsmiths, University of Londonで演劇・舞台芸術を学び、Royal Central School of Speech and Drama大学院を修了。

20年以上にわたり、俳優、声優、歌手、ダンサーなどの実演家を対象に、演技指導、身体と声、台本読解、人物理解、相手とのやり取り、オーディションや現場前の準備を指導しています。

新国立劇場演劇研修所の創設期からムーヴメント、アレクサンダー・テクニークの指導に携わり、演劇研修所・オペラ研修所をはじめ、バイリンガルの映画スクール、各種教育機関、芸能事務所、舞台・映像の現場でも指導を行ってきました。

2006年頃から、専門であるラバンやアニマルスタディーを俳優のトレーニングに取り入れ、身体だけで終わらせず、モノローグ、シーン、台本読解、人物、声へとつなぐ指導を続けています。

現在も、特定のメソッドを一律に当てはめるのではなく、その実演家に今何が必要なのかを見極め、身体、声、台本、人物、相手との関係を一続きの演技として扱うことを大切にしています。

目指しているのは、先生がいなければできない状態ではなく、俳優や歌手自身が現場で受け取り、判断し、選び直し、更新し続けられることです。

鍬田かおるのプロフィール・演技指導について詳しく見る

 

毎月の少人数制クラスの日程が合わない方・現場の課題や作品に個別に取り組みたい方、お急ぎのブラッシュアップを目指す方へ

個人レッスンでは、決まったメソッドを一律に進めるのではなく、ご本人の現在地、仕事、目的に合わせて、必要な課題を見ています。

演技、歌唱、身体や声の使い方、台本、オーディションや本番に向けた準備など、具体的な課題を持ち込んでいただくこともできます。

新しい知識を増やすだけではなく、自分の中に実際に使える感覚と選択肢を増やし、これからも更新し続けたい方へ。

個人レッスンをご希望の方は、現在の演技経験、今気になっている課題、今後の活動予定などを添えてお問い合わせください。

自分は、これまで何をできるようになったのか。

そして、

次の現場で、何を自分で判断し、受け取り、変えられるようになりたいのか。

そこから一緒に見ていきます。

時間を自分の課題に集中して使えるため、

「台本を読んでいるのに、演技につながらない」
「同じ注意を繰り返し受けている」
「一人になると、何を準備すればいいのか分からない」
「現場やオーディションの前に、一度整理しておきたい」

という場合にも利用していただけます。

初回は、現在の活動や困っていることを確認し、台本読解、身体と声、相手とのやり取りなども含めて、今どこで止まっているのかを見ていきます。

また、私は日本、イギリスだけではなく、アメリカ及びオーストラリアでも教えるためのスキルアップと研鑽を積んでおります。1つのメソッドに縛られず、複数のメソッドやアプローチの中から、適宜必要なものを組み合わせて、個人レッスンではカスタマイズして使っております。

メソッドや特定のテクニックの習得は目的ではなく、また飛躍を目指す俳優や歌手の方は、メソッドや特定のエクササイズそのものを学びたいのではなく、メソッドや複数の切り口を使ってより息の長い活躍を目指していけるからです。

 

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当クラスでは、俳優同士がその場の流れや即興判断で、急に身体接触を行うことを禁じています。

身体的接触を含む可能性のある場面は、台本上の必要性、目的、手順、同意、境界線を事前に確認した上で扱います。

安全とハラスメント防止に関する詳細は、以下の固定ページをご確認ください。

レッスン・クラスにおける安全とハラスメント防止ポリシー

 

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