感じるためには、考える必要があります
役の気持ちは、待っていれば出てくるものではありません。
残念ながら、どんなジャンルでも、それこそ、歌唱でも同じだと思います。
ただ、それは、感情を先に決めることでもありません。
だから、ちょっと厄介だと感じる時もあるのかもしれません。
その作品の世界で、何が起きているのか。
その出来事が、役の人物にとって何を意味するのか。
相手との関係に、何が起きているのか。
これは、現実の世界にもすごく似ていませんか?
台本にある事実を考え、役の立場を自分にとって個人的なものにしていくことで、初めて感じられることがあります。
つまり、私のクラスで扱っているのは、感情を作ることではありません。
【感じるために考える】ことです。
考えることは、感情を頭で賢そうに説明するためではありません。
作品の世界を曖昧なままにせず、役の人物として何が自分に起きているのかを具体的にするためにあります。
その土台があるからこそ、本人の中に一つではないものが起き始めます。
そして、俳優や歌手の方自身も、生き生きとしていきます。
感じる時には、丸ごと起きています
人が何かを感じる時、それは一つの感情にきれいに整理されているとは限りません。
複数あって、矛盾もある。
変化があって、さらに迷いもある。
相手に近づきたい気持ちと、離れたい気持ちが同時にあることもあります。
感じることは、もっと丸ごとです。
身体含め、体調に左右されることもあります。
さらに、前後の出来事に大いに影響されます。
ここで慌てて一つの感情や気分、気持ちに決めてしまうと、役の人物の複雑さや相手との間にある可能性も小さくなります。
感じられるものが多いからこそ、その後に選べるのに、です。
反対に、役の立場や状況がまだ十分に具体的でなく、感じられているものが少なければ、伝える時にも選択肢がありません。
一つの感情を強くするか、弱くするか。別の感情を上から足すか。
いつもの反応や、いつもの言い方へ戻る。声を高くする、低くする…
そのような狭い選択になりやすくなります。
これが結局、小手先と呼ばれる、自分でも冷めていくパターンにつながってしまいます。
伝わるためには、選び、整理し、絞る必要があります
感じることは丸ごとでも、それを全部同じ強さで外へ出せば伝わるわけではありません。
伝わるためには、選ぶ必要があります。
ただ感じたものが、「伝わればいいな」と願うのではありません。
【見えるように・聞こえるように】整理し、絞る必要があります。
例えば、今、何を見てほしいのか。
ここでは、どの言葉を聞いてほしいのか。
相手との間に起きた、どの変化を受け取ってほしいのか。
観客や、カメラの向こうにいる方に、何を見るかを強制することはできません。
それでも、何を見てほしいか、何を聞いてほしいかを意図することはできます。
それが身体、呼吸、声、動き、距離、速度、強さ、順番として成立して、初めて外から見え、聞こえるものになります。
可能性が多いからこそ、その場で必要なものを選べる。
感じているものが豊かだからこそ、出さないものも選べる。
絞ることは、感じているものを小さくすることではありません。
見てほしいものへ視線を集め、聞いてほしい言葉へ注意を向けてもらうための選択です。
そして、この逆はあり得ないのです。
何でも出すことが、豊かな演技ではありません
本人の中に起きていることを、すべて外へ出そうとすると、情報が多くなりすぎます。
すると、観客や共演者は、どこを見ればよいのか分からなくなります。
本来伝えたい言葉より、繰り返している癖に注意が向く。
相手との関係の変化より、余計な動きが目立つ。
本人が届けたいものではなく、整理されていないものを受け取らせることにもなりかねません。
何でも出すことと、豊かに伝わることは違います。
豊かに感じたものの中から、その場に必要なものを選び取る。
そこではじめて、伝えたいことが伝わる形になります。
また、よくある間違いとして、自分が感じたと思い込んだものや、実際に感じたものを、そのまま「発散する」「ぶつける」「爆発させる」傾向も見受けられます。
それが必要な作品や場面もあるでしょう。
しかし、プロとして他者と創作し、不特定多数の人と協働する場では、それだけでは成立しません。
一人で考えていても、同じ場所を回ってしまう時があります
感じるためには、例えば台本に書かれている一つ一つの事柄を考える必要があります。
ただし、考えているつもりでも、
セリフの国語的な意味ばかりを追っている。
感情の名前ばかりを探している。
つい、自分の印象だけで台本を埋めてしまう。
そのために、何度読んでも同じところを回ってしまうことがあります。
必要なのは、さらに長く考え続けることではありません。
何を考える必要があるのか。
今の考え方のどこが曖昧なのか。
どこから役の立場を個人的にしていけるのか。
それを、台本と実践の中で確かめることです。
ブレヒトは、観察から知識が生まれる一方で、観察するためにも知識が必要だという趣旨のことを書いています。
何を見るべきか分からなければ、見ているつもりでも、必要なものを捉えることはできません。
私たちが先入観なしに世界や他者を見ることの難しさ、そして「見ること」と「認識すること」の深い関係は、創作のプロセスでも決定的です。
だからこそ、練習とトレーニングが必要です。
2026年8月のクラスで扱うこと
2026年8月のクラスでは、感情を大きく出す練習をするのではありません。
台本を読み、役の立場から感じて、動いてしゃべるために、何を考える必要があるのかを扱います。
そして、考えたことが本人の中だけで終わらず、相手とのやり取りや、身体、呼吸、声、行動としてどう現れているのかを実践の中で確かめます。
だから、クラスでの体験が増えるにつれて、よりリアリティーを伴うことができるようになったとおっしゃる方が多いです。
台本を前に、一人でぐるぐる悩み続けなくて済むようになる。
何を考えれば、役の状況が具体的になるのかが分かるようになる。
セリフの意味や感情の名前だけに引っ張られにくくなる。
その結果、台本を読んだ時の迷いが減り、声に出して試すまでの準備も進めやすくなります。
感じられる可能性を増やした上で、その場に必要なものを選び、整理し、絞りやすくなる。
オーディションやリハーサルの限られた時間でも、何を準備し、何を提案するかを考えやすくなるので、「もちろん緊張はするけれど、前ほどあがらなくなった」とおっしゃる方もいます。
そのための具体的な問いや台本上の扱い方は、クラスの課題と実践の中で取り組みます。
オンラインはウェビナーではなく、双方向の対話があり、一緒に読み進める実践的なクラスです。
8月29日(土)19:00〜22:30
演じるための台本読解|オンライン
8月30日(日)13:00〜17:30
少人数制シーン実践|世田谷区内スタジオ
8月31日(月)13:00〜15:45
役を「自分ごと」に深める発展クラス
スタジオでの実践は少人数で、一人ひとりの課題を整理しながら進めます。
一度演じて終わるのではなく、演出を受けることとは別に、演技力を高めるためのコーチングを受け、再度試す時間があります。
クラスの詳しい内容、参加条件、参加費は、以下の案内記事をご覧ください。
【2026年8月開催】演じるための台本読解オンライン+シーン実践|もう、一人で考え込まない
https://kaorukuwata.com/acting-script-analysis-scene-practice-202608/
クラスの日程が合わない方や、現在取り組んでいる役、オーディション、動画提出、撮影、舞台稽古などの課題を個別に扱いたい方は、個人レッスンについてもご相談いただけます。
個別の台本やオーディション課題を扱いたい方へ
グループクラスの日程に参加できない方や、個別の台本、出演予定、オーディション課題を扱いたい方には、個人レッスンがあります。
時間を自分の課題に集中して使えるため、準備や修正が早く進んだとおっしゃる方もいます。
初回は、現在の活動、今困っていること、今後必要になる準備を確認し、取り組む順番を整理します。
ダンスや歌唱では個人レッスンが一般的でも、演技の準備は後回しになってしまう方が少なくありません。
一度、自分の準備や課題を棚卸しすることも、次へ進むための大切なステップです。
クラス案内・個人レッスン・講師依頼について
うちの事務所でもレッスンをしてもらいたい、所属の俳優に指導してほしい、モデルから俳優へ転向する方をサポートしてほしいなど、演技クラス、個人レッスン、教育機関・芸能事務所・映画スクール等での講師依頼については、下記よりご確認ください。
個人レッスンのお申し込み・ご相談はこちらからも受け付けています。
https://forms.gle/Na4Pe383GkxnJaqQ6
制作現場、映画スクール、舞台・映像作品に関する講師依頼やご相談は、下記のお問い合わせフォームよりご連絡ください。
公式LINEについて
お急ぎの方、公式LINEから、次のレッスン情報を早く受け取りたい方、LINEもご利用いただけます。
こちらからのトークのスタートはできませんので、お一言ご挨拶かスタンプお願いします。私の方では、トークの表示がされませんので、お願いいたします。
安全な学びの場づくりについて
当クラスでは、俳優同士がその場の流れや即興判断で、急に身体接触を行うことを禁じています。
身体的接触を含む可能性のある場面は、台本上の必要性、目的、手順、同意、境界線を事前に確認した上で扱います。
安全とハラスメント防止に関する詳細は、以下の固定ページをご確認ください。
この記事を書いた講師
鍬田かおる
演技コーチ/STAT認定アレクサンダー・テクニーク教師/IDC認定インティマシー・コーディネーター(ディレクター)。
俳優、声優、歌手、ダンサーに向けて、台本読解、身体と声、セリフ、相手とのやり取り、現場前の準備を扱うレッスンを行っています。
必要なのは、努力を否定することではなく、見ている場所を変えることです。
そこを具体的に整理すると、演技や歌唱、ダンスの手応えも変わってきます。
見ている場所が変わると、考え方が変わり、演技や歌唱、ダンスで選べることも変わります。
その選択肢が、現場で相手と協働し、作品へ具体的に貢献する力につながります。
他にもこのような記事もシェアしています。お役に立てれば幸いです。
なぜこの台本読解クラスは、精神論や依存に寄らないのか|参加俳優の声から

演技コーチ/ムーヴメント指導・演出・振付/IDC認定インティマシーディレクター/STAT認定アレクサンダー・テクニーク指導者/スピーチ&プレゼンテーションコーチングActing Coach/Movement Direction/IDC qualified Intimacy Director/STAT certified Alexander Technique teacher, mSTAT, Movement Teaching/Speech and Presentation Coaching



