台本を読んで、内容は理解した。人物の気持ちも考えたし、このシーンで何が起きているのかも説明できる。
それなのに、実際に相手を前にして演じ始めると、いつもの言い方、いつものテンポ、いつもの反応に戻ってしまう。あるいは、一人で準備しているうちに考えることが増えすぎて、何を優先すればいいのか分からなくなる。
そんなこと、実は、ありませんか?
台本読解で「分かったこと」と、その情報を使って、役として実際に演じられることの間には、もう一段階あります。
だから10月は、10月18日(日)にオンラインで台本を読み、翌19日(月)に少人数で実際に演じます。
オンラインとスタジオを二つ並べたのではありません。前日に一緒に考え、整理できることを先にやっておく。翌日は、スタジオでしかできないことに時間を使う。
20年以上教えてきて、「この時間はもったいない」と感じていました
20年以上教えてきて、ずっともったいないなと思っていたことがあります。
広いスタジオで大人数で集まっているのに、一人ひとりが自分の台本を見ている時間が長いことです。
俳優たちが、お互い何に取り組んでいるのかをじっくり見たり、演技の変化にはっとしたりするよりも、自分の台本に何かを書き込んだり、ノートばかりつけている時間が長くなってしまう。
みんな一生懸命だし、真面目なのですが、なんだかなぁ…
私は、それがとてももったいないと感じてきました。
本当は、芝居を見たい。
演技の変化を目撃したい。さっきと今で何が違うのかを感じたい。
他の俳優が何を試しているのかも見たい。
それなのに、少し迷うと、すぐ印刷されている台本、文字に戻ってしまう…
せっかく同じ空間に俳優が集まっているのに、目の前で起きていることより、自分の手元を見ている時間の方が長くなる。そこを何とかできないかと、ずっと考えてきました。
何より、それこそが、行き詰まりや伸び悩みの原因だと気づいたのです。
芝居を見たいのに、すぐ文字に戻ってしまう
演技の変化を目撃したい、違いを感じたいと思っていても、少し不安になると、すぐ印刷されている台本、文字に戻ってしまうことがあります。
そして、セリフを入れることに一生懸命になったり、セリフを間違えないことが優先になってしまったりする。
演出家が「必要な事は、みんな台本に書いてある」と言おうものなら、つい漏れがないか真面目に探すモードに。
もちろん、セリフを確認することも必要です。
ただ、中身が深まっていないから、セリフだって入りにくいことがあります。
なぜ、この言葉なのか。なぜ、今なのか。
なぜ、この相手に言うのか。その前に何が起きて、次へどうつながっているのか。
原因や理由がはっきりしていなければ、言葉がただ並んでしまいます。イメージも次々とは湧きにくい。
監督に、「読み込んできて」言われれば、もっと読まなければ、何か見落としがあるのかもしれないと思ってしまうのは、真面目な方の性質。
仮にイメージがたくさん湧いたとしても、かといって、それが自分の頭の中だけで動き始めると、今度は相手から離れて、一人ぼっちになってしまうこともあります。
本人の中ではたくさん考えている。イメージもある。感情もある。
けれど、目の前の相手との間では、必要な変化が生まれていない。
台本を深く読むことは、自分の内側をいっぱいにすることだけではありません。実際に相手とシーンを動かすための準備でもあります。
セリフを覚える前の準備については、こちらの記事でも書いています。
急に役の人物を深める質問をされても、ぱっと出てくる方は少ない
もう一つ、スタジオで何度も見てきたことがあります。
急に役の人物を深める質問をされても、ぱっと答えが出てくる方は、そう多くありません。
それは当然だと思っています。考える時間が必要なこともあるし、一度台本に戻る必要もある。「これかもしれない」と考えてから、もう少し読んでみたら違うと気づくこともあります。
だったら、一緒に考えたいことを事前にやっておいた方がいいのではないか。
どういう取り組み方をしてほしいのか。何が役に立ちそうなのか。どこが盲点になりやすいのか。何をもう少し具体的にしておいた方がいいのか。
そういうところを先に一緒に整理しておけば、翌日のスタジオでは、もっと早く実際の演技に入れます。
すべての答えを前日に決めてしまう、という意味ではありません。
自分で考えを深めるためにどこを見るのか。何がまだ曖昧なのか。自分はどこで止まりやすいのか。
そうしたことが分かった状態で、一度自分でも持ち帰る。その時間があることに意味があります。
移動しなくてもできることを、先にオンラインでやっておく
これまで20年、指導してきて、もう一つ考えたのが、移動時間でした。
毎回スタジオまで移動して、そこで全員が同じ前提を共有するところから始めなくてもいい。
台本を読む。考える。質問を整理する。他の方の読み方を聞く。自分が見落としていたところに気づく。
そういうことなら、オンラインでもできます。
一晩、一人で振り返りたい方もいらっしゃるでしょう。
自分のノートを、整理したい方も。
だったら、移動の時間を節約しながら、効率的に前提を共有する方法はないか。台本を読む時間と、身体を使って演じる時間を、それぞれに適した場所へ分けられないか。
そこから始まったのが、オンラインで台本を読み、その後スタジオで実際に演じる今の形です。
単にオンラインが便利だから、この形にしているのではありません。
スタジオへ集まった時に、スタジオでしかできないことへ、できるだけ多く時間を使いたいからです。
10/18の台本読解「シーンの鉄則」で、翌日動くための準備をする
今回の中心は、「シーンを動かすために、役として何ができるかを読む」ことです。
セリフの意味を説明する。感情を考える。人物像をまとめる。そこで終わるのではなく、実際に演じるために必要な情報を、何を優先して読むのか整理していきます。
台本を前にすれば、考えることはいくらでも増やせます。
だからこそ、限られた時間の中で何を見るのか。何がまだ曖昧なのか。どこをもう少し具体的にした方がいいのか。自分ではどこを見落としやすいのか。
そうしたことを一緒に深掘りしつつ、実験していけます。
クラスの中だけで答えられればよいわけではありません。次に一人で台本を読んだ時にも、自分で考えを深めていくための取り組み方に、少しずつ慣れていくことが大切です。
一晩置くから、「分かったつもり」も見えてくる
10月18日に読む。その場で全部演じ切らず、一度持ち帰る。そして翌日、スタジオへ来る。
この一晩にも意味があります。
クラスの最中なら、直前まで話していたことを覚えています。講師もいる。他の参加者の発言からヒントをもらうこともできます。
でも、一人になったらどうでしょう。
自分でも整理できるところと、急に曖昧になるところが出てくる。考えすぎて、またぐるぐるし始めることもあります。
昨日は分かったはずなのに、一人ではどこから始めればいいのか分からなくなる。
そうしたものも、一晩置くと見えてきます。
「昨日、理解した」は、まだ途中です。翌日、自分でそこへ戻れるか。そこから実際に演じられるか。
今回の二日間では、そこまで進めます。
10/19は、スタジオに来てから台本を読み始めない
10月19日(月)は、少人数制のスタジオ実践です。
前日に台本を読み、考えたいことや疑問を整理しているので、スタジオではできるだけ早く実際の演技へ入ります。
スタジオへ来てから、まず台本を読む。分からないところを考える。長くノートを取る。人物について話し続ける。そこからようやく演じる。
その時間をできるだけ減らしたいのです。
その代わりに、台本を持って立つ。相手を見る。声を出す。身体を使う。距離が変わる。空間を自分のためにつかう。
自分が何かを変えれば、相手にも何かが起きる。
そこで初めて、「頭では分かっていたこと」と「実際に使えたこと」の差が見えてきます。
自分の番以外も、演技を見る時間にする
少人数で実践する意味は、自分が何回演じられるかだけではありません。
他の俳優の芝居を見る時間も、実践です。
一回目と二回目で何が変わったのか。ある言葉が急に違って聞こえたのはなぜなのか。相手との関係が変わった瞬間はどこだったのか。さっきまで平坦に見えていたシーンが、なぜ突然動き始めたのか。
こういう変化は、説明だけ聞いていても分からないことがあります。
目の前で起きたものを見るから、「あ、違う」と分かる。
その瞬間をできるだけ多く目撃してほしい。だから、自分の出番を待ちながら、ずっと自分の台本へ書き込み続ける時間にはしたくありません。
前日の「正解」を再現する日ではありません
相手が変われば、起きることも変わります。実際に声にすると、頭の中で考えていたものとは違って聞こえることもある。空間へ出れば、身体も変わります。
予想していなかった反応も返ってきます。
現場でも、演出が変わる。相手役が変わる。撮り方が変わる。時間がない。そういうことは起こります。
準備してきた一つの演じ方に固執するより、読んできたものを土台に、その場で見て、聞いて、受け取り、必要に応じて変えられること。
そこまで含めて、演じるための準備です。
稽古用でも、役の人物を演じる助けになる服を考えてくる
10月19日のスタジオ実践では、本番用の衣裳をそろえる必要はありません。
ただ、稽古用で構わないので、役の人物を演じる助けになりそうな服装を考えてきてもらいます。
何を着ているかは、身体にも影響します。立ち方や歩き方が変わることもあるし、靴が違えば動き方も変わります。ポケットがあるかないかでも、身体がすることは変わるかもしれません。
もちろん、服を着れば人物になれるという話ではありません。
台本の中で考えてきたことを、少しずつ身体や空間へ移していくための一つの準備です。
「分かった」と「演じられる」は違う
台本についてなら説明できる。人物の状況も分かる。自分なりの解釈もある。
それでも、立って演じてみると薄くなることがあります。
相手から何かが返ってくる。思っていた間で進まない。予想していた感情にならない。
オーディションの抜粋であれ、ドラマのコメディー、またヒューマンドラマでも、ジャンルを問わず、自分が読んだことを土台にしながら、その場で選び直せることから、演出との共同作業がスタートできます。
「知った」ことと「できる」ことは違います。「説明できる」ことと「演じられる」ことも違います。
一度レッスンでできたことと、次の作品でも自分で使えることも同じではありません。
だから、読むところだけでも、演じるところだけでも終わらせない。その間をつなぐ練習が必要だと考えています。
こんなところで止まっていませんか
すでに演技を学んできた方、現場やオーディションの経験がある方でも、台本を読むとセリフの意味や気持ちばかり追ってしまうことがあります。
一人になると考えが増えてぐるぐるする。
何を優先して読めばいいのか分からない。自分なりにはかなり考えているのに、演じると薄くなる。
セリフを間違えないことに意識が向きすぎて、相手が見えなくなる。イメージはたくさんあるのに、自分の中だけで完結してしまう。
相手役や演出が変わると、それまで準備してきたものを使えなくなる。台本について説明はできるのに、実際の行動へつながらない。
今回の二日間は、初心者向けの「台本の読み方入門」ではありません。
すでに学んできたこと、経験してきたことを、もっと自分で使えるものへ変えていくためのトレーニングです。
増やしたいのは、「一人でも判断できること」
クラスの中で一度うまくできることだけを、ゴールにはしていません。
次の作品でも使える。限られた時間でも、何から考えるのか選べる。何がまだ曖昧なのか、自分で気づける。
別の演出を求められても、それまでの準備を全部捨てずに選び直せる。一人で台本に向かった時にも、「なんとなく」ではなく、具体的な輪郭を伴って掘り下げていける。
そしてスタジオへ来たら、文字だけを追い続けるのではなく、目の前の芝居を見る。相手を見る。変化を見る。
だから、演じている時って見ているときの感覚から変わっていけます。
「ぼんやりと感覚で捉えていたものに、具体的な輪郭が見えた」
これまでクラスに参加された方から、
「ぼんやりと感覚で捉えていたものに、初めて具体的な輪郭が見えたような感覚」
というご感想をいただきました。
それまで「なんとなく」「漠然と」「抽象的に」捉えていたものが、具体的になっていく。
目指したいのは、誰かの正解を覚えることではありません。
自分で根拠を持って判断する。相手から何かが返ってきたら、また選び直す。監督や演出家から別の要求が来た時にも対応できる。
そこまでつながって初めて、読解が実際の演技に使えるものになっていきます。
10/18に読んで、10/19はスタジオで動き始めます
10月18日(日)18:30〜22:00
オンライン|演じるための台本読解「シーンの鉄則」
参加費:10,000円
10月19日(月)13:00〜15:45
下北沢駅から徒歩1分・少人数制スタジオ実践
参加条件:10月18日のオンラインクラス受講者
10月19日のスタジオ実践のみの単独参加はできません。
10月18日+19日
2日間:22,000円
質問や盲点を整理する。一度、自分で持ち帰る。
そして19日は、台本を持って実際に相手の前へ。
スタジオへ集まったら、芝居を見る。変化を見る。実際に演じる。
「読んで分かったつもり」で終わらず、翌日、本当に自分で使えるかを試す。そのための二日間です。
10月18日・19日クラスのお申し込み
参加をご希望の方は、お申し込み前にキャンセルポリシーをご確認の上、お申し込み・お問い合わせフォームよりお知らせください。
10月18日・19日クラスのお申し込み・お問い合わせはこちら
公式LINEからもお問い合わせいただけます。ご登録後、こちらから最初のトークを開始することができないため、一言メッセージまたはスタンプをお送りください。
講師|鍬田かおる
演技コーチ/STAT認定アレクサンダー・テクニーク教師/IDC認定インティマシー・ディレクター(コーディネーター)。指導歴20年以上。
桐朋学園芸術短期大学演劇科卒業後に渡英。Goldsmiths, University of Londonで演劇・舞台芸術を学び、Royal Central School of Speech and Drama大学院、ムーヴメントコース第一期生、唯一の日本人、アジア人として、ムーヴメント指導、演出、教育学、演技指導を学びました。
新国立劇場演劇研修所・オペラ研修所をはじめ、教育機関、芸能事務所、舞台・映像の現場などで、俳優、声優、歌手、ダンサーに向けた指導を行ってきました。
現在も、台本読解、身体と声、人物、セリフ、相手とのやり取りを別々に扱わず、実際の作品や現場で使えるところまでつなげることを大切にしています。
参加について確認したいことがある方へ
「今の自分の課題に合うか確認したい」「10月18日のオンラインのみ参加したい」「参加条件について確認したいことがある」という方は、お問い合わせフォームまたは公式LINEからご連絡ください。
今回のクラスの日程が合わない方、11月及び12月のクラスの優先案内をご希望の方も、はじめての方はプロフィールや近況とともにお問い合わせください。

演技コーチ/ムーヴメント指導・演出・振付/IDC認定インティマシーディレクター/STAT認定アレクサンダー・テクニーク指導者/スピーチ&プレゼンテーションコーチングActing Coach/Movement Direction/IDC qualified Intimacy Director/STAT certified Alexander Technique teacher, mSTAT, Movement Teaching/Speech and Presentation Coaching


