せっかく熱心であっても、読解がちょっと浅いまま経験を重ねていると、現場数は増えても、演出の変更や相手とのやり取りに対応しにくいことがあります。
経験を重ねているのに演技があまり伸びてないなぁ、上達していないのかもと感じる時、必要なのは、さらに現場数を増やすことだけではないかもしれません。
今日はそんな時に考えて欲しい視点です。
大切なのは、これまでのご経験を、異なるジャンルや、別の台本でも使える判断基準や、演出変更に対応できる力へ変えていくことです。
残念ですが、ご年齢やキャリアが上がるほど、「まだ勉強中です」は通用しにくくなります。
これは、学び続けてはいけないという意味ではありません。むしろ、長く活動する人ほど、学び続ける必要があります。
ただし、現場やオーディションで求められていることに対応できなかった時、「まだ勉強中だから」「経験がなかったから」という説明で受け止めてもらえる範囲は、少しずつ狭くなっていきます。
経験年数と、現在使える実力は同じではありません
もちろん、長く活動してきたことには、それ自体の価値があります。
さまざまな作品、演出、共演者、稽古場を経験してきたことは、短期間では得られない蓄積です。
しかし、経験した年数と、現在使える実力は同じではありません。
同じ準備の仕方を続け、同じ読み方を繰り返し、慣れた表現だけを使っている場合、経験年数は増えても、対応できる選択肢までは増えていないことがあります。
また、演技のスタイルいうものも存在し、映像、舞台にかかわらず、この20年、30年で、大幅に変わってきております。
これは、ライフスタイルの変化によるもので、なかなかあらがえないものです。
これまでの経験が強みになるのは、経験したことを振り返り、必要な修正を加え、次の台本や別の現場でも使える判断基準へ変えてきた時です。
今までの体験をもとに、今目の前で起きていること、来週、来月、来年に向けて何ができるか、具体的にしていきましょう。
キャリアを重ねた俳優に期待されること
キャリアを重ねるにつれて、現場では次のような力が期待されやすくなります。
- 説明されなくても、ある程度、台本に書かれている事実と、自分の推測を分けて、読めること、覚えておけること
- 役の人物の目的と、このシーンで達成したい目標を区別できること、演出の意図を組むこと
- 演出を受けた時、すぐさま、声や表情だけでなく、相手への行動を変えられること
- 相手や状況が変わった時に、その場で選択を更新できること、しかもその種類がいくつかあること
- 限られた時間内に、映像や舞台の条件に合わせて、身体や声の使い方を調整できること
ちょっと要注意なのですが、対応力とは、何でも器用にこなすことではありません。
台本の構造や役の目的を見失わず、その場で必要な変化を作れることです。
また、この「限られた時間内に」「今、ここで」がキーワードです。
半年後に、3ヶ月後に、自分がリラックスしているときに、落ち着いたら、では無いのです。
台本を読めるとは、状況を説明できることではない
台本を読めることは、セリフの意味や役の気持ちを説明できることだけではありません。
いつ、どこで、何が起きているのか。
相手との関係は、場面の前後でどう変化しているのか。
役の人物は、最終的に何を実現したいのか。
そのために、このシーンでは何を達成する必要があるのか。
その目標へ向かって、相手に何をするのか。
こうした情報を具体的に拾い、演じるための選択肢へ変えるところまでが、俳優に必要な台本読解です。
「悲しい場面」「怒っている人物」「複雑な気持ち」と形容するだけでは、実際に何をするのかは決まりません。
気持ちについて考えることと、場面の中で相手に働きかけられることは別です。
読書が好きで、国語が得意だった方でも、この優先順位をつけたり、重要な要素だけ抽出するプロセスになれない方もいらっしゃいます。
しかし、これは性格の問題ではなく、練習で解決できる部分です。
課題に気づいているだけでは、演技は変わりません
「役の準備が浅くなりやすい」
「セリフを言うことが優先になってしまう」
「動きを足しすぎてしまう」
「演技がうるさいと言われたことがある」
このように、自分の課題を言葉にできることは大切です。
しかし、課題を理解していることと、次の演技で実際に変えられることは同じではありません。
スポーツや楽器演奏と同じです。
どこが良くなかったかがわかっても、足が動かないといけない。
どうしたら上達するかを知ったところで、そして良い見本をたくさん見たところで、自分の指が動く必要がある、ということです。
その課題に対して、何を試したのか。
台本の読み方や準備の手順を、どのように変えたのか。
一度できたことを、別の台本や次のテイクでも使えるのか。
同じ準備を続け、同じ癖を繰り返しているなら、時間が経っても対応力は大きく変わりません。
反応しようとすることと、相手に働きかけることは違います
他の記事にも書いてありますが、相手のセリフをきちんと聞こうとするあまり、聞いている姿勢を作ってしまうことがあります。
反応しようと構え、相手が話し終わる前から、次に見せる表情や間を準備してしまうこともあります。
しかし、シーンを進めるのは、「反応の形」ではありません。
相手から何を受け取り、それによって自分の目標や方法がどう変わり、次に相手へ何をするのかです。
反応と行動の違いについては、反応しようとするほど、演技が固まる理由でも詳しく書いています。
私の、少人数制のプロとプロを目指す方のためのクラスでは、年間を通じて、異なるジャンルの脚本や戯曲を使いながら、ときには小説も交えながら、ステップアップしてもらっています。
応用が効くと、限られた時間内にできるようになること、自分で準備を整えていけることを目指しています。
「具体的ってこういうことだったんだ」、「かおる先生の読解のやり方は、演技を始めた頃に知っておきたかったです!」と叫ばれる方も多いです。
学び直すことは、これまでのキャリアを否定することではない
長く活動してきた人ほど、基礎を見直すことに抵抗を感じる場合があります。
私自身、小学生の頃から芸能事務所にて、レッスンを受けたり、ダンスや楽器の演奏や声楽なども習っていたので、イギリスの大学に進学した時、ちょっと初歩をやっているような気がしてしまっていました。
なんとなく、今さら最初からやり直すように感じる。
これまでの方法が間違っていたと認めるようで不安になる。
慣れた方法を変えると、今までできていたことまで失うように感じる。
もったいない感じがするんですよね。
しかし、基礎を見直すことは、せっかくのご経験を捨てることではありません。
すでに持っている感覚や技術を整理し、別の台本や異なる現場でも使える形へ更新することです。
より使える部分が、くっきり見えて、伸ばしたいところがはっきりしてくる。
必要なのは、これまでを全部捨てることではありません。
残したい強みと、変える必要のある習慣を分けることです。
次の現場やオーディションが来る前に、対応力を更新する
仕事や審査の直前になってから、準備方法を変えようとすると、時間にも気持ちにも余裕がなくなります。
その状態では、慣れた読み方や慣れた表現へ戻りやすくなります。
また疲れている時、なかなか新しいアプローチを試そうという前向きな気持ちになる方は少ない。
いくらやる気があっても、経験年数は、現在の実力を自動的に証明してはくれません。
大切なのは、これまでの経験を、次の台本でも使える読解の手順と、その場で選択を変えられる対応力へ変えておくことです。
私の個人レッスンでも、年間を通じて、現場の準備、オーディション対策、長年の方向修正などを歌手や俳優の方、声優の方に向けて行っております。
7月25日オンライン台本読解・26日少人数シーン実践
今年、7月25日・26日のクラスでは、経験を増やすだけでなく、別の台本でも使える読解の手順と判断基準を育てます。
7月25日は、シーンを進め、役を深めるための「目的と目標」を中心に、シーンを進められるようになる、実感を伴って、「感じてしゃべる」仕組みが整理される方向です。
台本に書かれている役の人物の目的、このシーンで達成したい目標、相手との関係、対立、始まりと終わりの変化を整理し、相手へ何をするのかが深められるよう目指しています。
7月26日は、前日に読んだ内容を、相手への働きかけ、身体、声、視線、間、距離、行動の選択へ変えていく少人数実践です。
頭で考えるだけでなく、体験につなげていく、相乗効果を狙ったカリキュラムです。
- 7月25日(土)19:00〜22:00
- オンライン台本読解・登録制Zoom
- オンラインのみの参加費:9,000円(税込)
- 7月26日(日)13:00〜17:30
- 少人数制・シーンを使った演技実践・世田谷区内スタジオ
- 7月25日・26日の二日間:24,800円(税込)
- 7月26日のみの参加はできません
- 録音・録画はできません
7月のクラス記事はこちらです。
もっと活躍したい俳優へ|突き抜けて演じるための台本読解と少人数シーン実践【7月25日・26日】
7月25日オンライン台本読解・26日少人数シーン実践の詳しい内容と申込方法を見る
個別の台本やオーディション課題を扱いたい方へ
グループクラスの日程に参加できない方、個別の台本、出演予定、オーディション課題を扱いたい方には、個人レッスンがあります。
時間を目一杯自分の課題に使うことができるので、スピードがアップして良いとおっしゃる方もいます。
初回は、現在の活動、課題、今後必要になる準備を確認し、取り組む順番を整理します。
この方向性を決めていくこと、棚卸しすることが、飛躍するための重要なステップだと考えております。
私自身、これまで様々な先生たちのおかげで、あちこちで学んできましたが、やはり深く掘るということ、これに尽きると感じております
クラス案内・個人レッスン・講師依頼について
うちの事務所でもレッスンをしてもらいたい、所属の俳優に指導してほしい、モデルから俳優へ転校する方をサポートしてほしいなど、演技クラス、個人レッスン、教育機関・芸能事務所・映画スクール等での講師依頼については、下記よりご確認ください。
個人レッスンのお申し込み・ご相談はこちらからも受け付けています。
https://forms.gle/Na4Pe383GkxnJaqQ6
制作現場、映画スクール、舞台・映像作品に関する講師依頼やご相談は、下記のお問い合わせフォームよりご連絡ください。
公式LINEについて
クラスや個人レッスンの最新情報、ブログ更新のお知らせ、演技・台本読解・身体と声に関するご案内は、公式LINEでもお届けしています。
お急ぎの方、公式LINEから、次のレッスン情報を早く受け取りたい方、LINEもご利用いただけます。
こちらからのトークのスタートはできませんので、お一言ご挨拶かスタンプお願いします。私の方では、トークの表示がされませんので、お願いいたします。
次回以降のクラス情報を受け取りたい方へ
安全な学びの場づくりについて
当クラスでは、俳優同士がその場の流れや即興判断で、急に身体接触を行うことを禁じています。
身体的接触を含む可能性のある場面は、台本上の必要性、目的、手順、同意、境界線を事前に確認した上で扱います。
安全とハラスメント防止に関する詳細は、以下の固定ページをご確認ください。
この記事を書いた講師
鍬田かおる
演技コーチ/STAT認定アレクサンダー・テクニーク教師/IDC認定インティマシー・コーディネーター(ディレクター)。
俳優、声優、歌手、ダンサーに向けて、台本読解、身体と声、セリフ、相手とのやり取り、現場前の準備を扱うレッスンを行っています。
必要なのは、努力を否定することではなく、見ている場所を変えることです。
そこを具体的に整理すると、演技は少ずつ手応えも変わってきます。
結果的に、現場もスムーズに、作品に貢献できるようになっていけますよ。
他にもこのような記事を更新しております。
自分の課題を整理したい方へ
経験年数やキャリアに関係なく、演技の課題は一人ひとり違います。
演技の手ごたえを見直したい俳優へ|セリフ・台本読解・癖のセルフ診断まとめ
自分の場合はどこから見直す必要があるのか確認したい方は、演技のセルフ診断まとめも参考にしてください。
息の長い活動を応援しています。

演技コーチ/ムーヴメント指導・演出・振付/IDC認定インティマシーディレクター/STAT認定アレクサンダー・テクニーク指導者/スピーチ&プレゼンテーションコーチングActing Coach/Movement Direction/IDC qualified Intimacy Director/STAT certified Alexander Technique teacher, mSTAT, Movement Teaching/Speech and Presentation Coaching



