台本読解のよくある大きな勘違いシリーズ 第1回
台本を5W1Hで読んでいるのに、芝居が浅くなる理由
どういう意味だろう?
と気になりましたか。
多くの方が、台本を受け取ったとき、ちゃんと把握したい、もっと理解したいと思って、多くの俳優がまずやろうとすることがあります。
それが、5W1Hで整理することです。
いつ
どこで
誰が
何を
どのように
これは現実の世界ではとても便利です。
出来事を共有するとき。
状況を説明するとき。
何が起きたのかを順序立てて把握したいとき。
5W1Hは、様々な場面で非常に役に立ちます。
だからこそ、台本読解でもこれをそのまま使えばいいと思いやすいのですが、ここにひとつ大きな勘違いがあります。
5W1Hは、台本を読むときにまったく使えないわけではありません。
ただ、そのまま演技の準備に持ち込むと、途中からズレやすいのです。
なぜなら…
ちゃんと読んでいるのに、芝居が浅くなる人がいます
5W1Hで台本を読むと、たしかに整理した感じは出ます。
いつの話か。
どこで起きているのか。
誰が誰に向かって何を言っているのか。
ここまでは見えやすくなります。
でも、整理できたことと、演技につながることは同じではありません。
ここを混同すると、読んでいるのに芝居が浅くなる、ということが起きます。
実際、真面目な俳優ほどここに引っかかりやすいです。
ちゃんと把握しようとしている。
ちゃんと順序立てて読もうとしている。
ちゃんと準備しようとしている。
その姿勢自体は悪くありません。
でも、演技で必要なのは、情報をきれいに並べることだけではないのです。
5W1Hで整理すると、わかった気になりやすい
5W1Hの厄介なところは、整理したことで「わかった感じ」が出やすいことです。
いつか。
どこか。
誰か。
何か。
これで、把握した気持ちにはなれます。
でも、その「わかった感じ」が、演技の準備としては浅いところで止まっていることがあります。
ともすると、国語の意味で止まっている。
情報の表面を整理しただけで、その人物の必要性や切迫感までは見えていないことがあるのです。
だから、読解をしているのに、芝居になると急に薄くなる。
考えているのに、相手とのやり取りが生きてこない。
そういうことが起きます。
その上、客観的な事実を整理しただけで止まってしまえば、
「自分ごと」にまだ置き換えていないままです。
説明できることと、演技につながることは違います
ここは大事なところです。
演技は、登場人物たち全員が合意するであろう出来事を正しく説明することではありません。
もちろん、何が起きているかを把握するのは必要です。
でも、それだけでは足りません。
舞台や映像で必要なのは、その人物にとって今何が起きていて、相手との間で何が変わろうとしているのかです。
全員が同じ出来事を体験しているようでも、主観の世界が異なります。
ただ情報を並べるだけでは、場面は動きません。
たとえば現実の生活でもそうです。
今日、誰に会うのか。いつから打つつもりだったのか。
どこへ行くのか。それはなぜなのか。
何を伝えるのか。いつからそうするつもりだったのか…
それだけわかっていても、まだ人は動きません。
まずその前に、
その相手が自分にとってどういう存在なのか。
何のために今それを伝えないといけないのか。
伝えなかったら何が起きるのか。
そこがあるから、人は実際に動きます。
台本読解でも同じです。
この前提が抜けていると、客観的事実を探し、みんなでそれに合意しようとし、主観の世界がないまま、どんどん個人の事情が置いてけぼりになります。
一番、深めたいところに触れないまま、何日も経っていきます。
場面が立ち上がらないのは、情報の先を見ていないからです
問題は、5W1Hが「説明」には向いていても、「立ち上がる場面」を見るには足りないことです。
たとえば、
この人は今どこにいるのか。
相手は誰なのか。
何について話しているのか。
そこまでは整理できても、
相手に何をしたいのか。
何を変えたいのか。
それをしないと何が起きるのか。
この人物にとって何がそんなに重要なのか。
ここが見えていないままになることがあります。
すると、台本を理解したつもりなのに、いざ立ってみると何も起きません。
言葉は読める。
意味も説明できる。
でも、場面が動かない。
それなりに想像もしてて、気持ちも覚えてるはずなんだけど…
この状態は少なくありません。
その人物が相手に何をしたいのかが見えないと、芝居は動きません
台本の読み方で本当に大事なのは、情報そのものより、その人物が相手との間で何を起こそうとしているかです。
この人物は相手に何をしたいのか。
止めたいのか。
変えたいのか。
引き出したいのか。
認めさせたいのか。
逃げたいのか。
隠したいのか。
ここが見えてこないと、人物はただ「説明の中にいる」だけで、その場に生き始めません。
相手にも、自分自身にも、そして周囲にも、影響がないのです。
逆に言うと、この視点が入ると、同じ台本でも急に場面が立ち上がり始めます。
真面目な俳優ほど、整理で止まりやすい
しばらく頑張ってきたのに、なぜかもう一段深まらない。
読んでいるつもりなのに、芝居に厚みが出ない。
現場で指示を受けると、外側ばかり直すことになってしまう。
こういうとき、見直したいのは才能や熱量ではなく、読解の入口です。
5W1Hで止まっていないか。
整理したことで満足していないか。
説明できることと、演技につながることを同じだと思っていないか。
ここを見直すだけで、次の段階に進みやすくなることがあります。
特に真面目な俳優ほど、ちゃんとやろうとして整理で止まりやすい。
これは本当によくあります。
5W1Hが悪いのではなく、それだけで足りると思うことが危ない
ここで誤解してほしくないのは、5W1Hそのものを否定したいわけではない、ということです。
5W1Hは便利です。
事実確認にも向いています。
状況整理にも役立ちます。
ただ、それはあくまで入口の一部です。
そこを全部だと思ってしまうと、読解が説明止まりになります。
つまり、問題は5W1Hが悪いことではなく、5W1Hだけで足りると思い込んでしまうことです。
ここを外すだけでも、台本の見え方は変わります。
演技につながる読解は、整理の先を見るところから始まります
では、何が必要なのか。
それは、整理の先を見ることです。
この人物は相手に何をしたいのか。
何を変えたいのか。
ここで何が動くと大きいのか。
それをしないと何が起きるのか。
こうしたものが見えてくると、台本はただの文字の並びではなく、その人物にとって切実な場面として立ち上がってきます。
ここまで来て初めて、演技の準備に入っていけます。
逆に言うと、5W1Hで止まっているあいだは、まだ説明の段階にいることが多いのです。
伸び悩みを抜けたいなら、読解の入口を見直したい
演技が浅いと言われる。
ちゃんと考えているのに、反応が生きてこない。
セリフを入れてきても、やり取りになると急に弱くなる。
そういうとき、必要なのは根性論ではありません。
読む順番を見直すことです。
何が書いてあるか、だけで終わらず、その人物が何をしたいのか、何を変えたいのかまで読むこと。
その入口を見直すだけで、台本読解はかなり変わります。
まとめ
5W1Hは、現実の世界ではとても便利です。
台本読解でも、事実を整理する入口としては使えます。
でも、それだけでは演技にはつながりません。
5W1Hで整理しただけでは、まだ「何が書いてあるか」を確認した段階にとどまりやすいからです。
演技で必要なのは、その人物にとって何が起きていて、相手との間で何を変えようとしているのかを見ることです。
台本を5W1Hで読んでいるのに、芝居が浅くなる。
その原因は、読む量が足りないからではなく、読む入口が少しズレているからかもしれません。
次の記事では
次は、このズレの中でも特に起こりやすいよくある「How」について書きます。
どんなふうに言うか。
どんな表情でいるか。
どんな調子で動くか。
ここをもう少し具体的に、実際の例を交えて解きほぐしていきます。
クラスでは、こうした読解のズレを実際の台本で扱っています
ここまで読んで、思い当たることがあった方へ。
こうした読解のズレは、頭でわかっただけでは変わりにくいです。
実際の台本を使って、どこで止まり、どこから場面が立ち上がるのかを整理していく必要があります。
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この記事を書いた講師プロフィール 鍬田かおる
指導歴20年以上。桐朋学園芸術短期大学演劇科、新国立劇場演劇研修所・オペラ研修所、劇団青年座研究所などで長年指導。
ロンドン大学ゴールドスミス校卒。Royal Central School of Speech and Drama 修士課程ムーヴメント科修了。
イギリスSTAT認定アレクサンダー・テクニーク教師。日本演出者協会会員。
俳優や歌手の技術と身体の理解を統合し、現場で使える“交流のある演技”へ導く専門家。大学や映画スクールの講師を務める傍ら、個人レッスンで一人ひとりの強みを伸ばし、基礎力からアップさせる本格的なプロのトレーニングを中心に活動しています。
小学生から中堅、そして芸能の舞台や映像で活躍する俳優や歌手の方のアクティングコーチであるだけでなく、プロを目指す若手の育成も務める。
IDC認定インティマシー・コーディネータ(ディレクター)として映画やテレビ、舞台の現場も入ります。
これまで触れてきた演技のなんとかメソッドや、〇〇式に疑問を抱かれた方へ
あなたの違和感は、もしかすると「役」にとってのリアリティーではなかったからかもしれません。
また文化的にも、ヨーロッパで過ごした20代がある私、そしてバイリンガルである私が言うのもなんですが、日本を中心に活躍してらっしゃる方、日本語を母国語として多くの時間を過ごしてる方に向き不向きという傾向はある気がいたします。
物語、演技と言うものが、文化に根ざしている以上、やはり言語の壁もあり、また生活様式や基本的なコミュニケーションのスタイルが大きな誤解をむこともございます。これはクラシックバレエやオペラの輸入、様々な業種での変遷を見ても、お分かりいただける課題だと思います。。
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演技コーチ/ムーヴメント指導・演出・振付/IDC認定インティマシーディレクター/STAT認定アレクサンダー・テクニーク指導者/スピーチ&プレゼンテーションコーチングActing Coach/Movement Direction/IDC qualified Intimacy Director/STAT certified Alexander Technique teacher, mSTAT, Movement Teaching/Speech and Presentation Coaching



