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感情が動かない演技に悩む俳優へ|“捉え方”を掘らない限り、感情は動きません

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プロのアクティングコーチによる年末のレベルアップクラスのご紹介

今週も個人レッスンが続く、演技指導歴20年+、アクティングコーチの鍬田かおるです。

今週末は注目の映画の上映会もあり、久しぶりに監督やスタッフの方ともお会いできそうで、とてもうれしいです。

さて、これはもう私が子どもの頃からの悩みでもあったのですが…

ふと、作品によってだったり、現場の環境だったりも

組み合わさって、なんだか行き詰まるときにぶち当たる壁についてです。

 

感情が動かない演技に悩む俳優は多い

「怒れと言われても怒れない」
「泣く場面なのに涙がこない」
「感情がついてこなくて演技が止まる」
そんな経験、ありませんか?

これは決して、演技が下手だからでも、気持ちの準備が足りないからでもありません。
むしろ、“感情を出そうとする”こと自体が遠回りになっているのです。

私自身、怒る事は、その時の興奮や、なんとなくフラストレーションの発散でごまかしていましたが、必要な時にポロリと泣いたり、腹の底から笑ったりすることに難しさを感じていた時代があります。

いろいろなメソッドも一応一通りやりましたけれど、なんかよくわからなかった…

これが正直なところでした。

 

感情は“起きる”もの。出そうとした時点でズレている

多くの俳優が「怒りの芝居」「悲しみのシーン」と言われると、その感情を“出さなきゃ”と考えます。
でも、実際に感情というのは“起きる”ものであって、“出す”ものではありません。

そして、感情が起きるには、ある順番があります。
その順番を無視して、いきなり結果(=感情)を出そうとするから、うまくいかないのです。

これは、イギリスの演劇学校でもしつこく言われましたし、特に演技コースでは(俳優コース)そのためのムーヴメントとボイス、そしてアレクサンダー・テクニーク(個人レッスンあり)の授業の量は膨大でした。特に、1年生2年生は、演技のメソッド1に対して、ムーヴメントが3倍近くありました。

さて、本日はちょっと解説。

 

感情の仕組みを理解する:ABC理論の応用

心理学では、以下のような構造で感情を説明します。

A(Activating Event):出来事・刺激
B(Belief):その人の受け取り方・信念
C(Consequence):感情や反応

演技においてもこれは応用できます。
つまり、「セリフそのもの(A)」が感情を生むのではなく、
そのセリフをどう受け取ったか(B)によって、感情(C)が湧いてくるのです。

ここまでが、一般論です。

「どう受け取ったか」と書いてしまうと、

HOW(どのように)と日本語で結びつけてしまういがちですが、

実際には「何を受け取ったから」ですので、WHAT(なに)になります。

これ、解像度の高い演技のために重要です。

同じセリフでも、受け取り側の【意味づけ】次第で感情は真逆になる

たとえば──
相手役が言う「今日はもう帰っていいよ」。

このセリフを、役が
「ねぎらい・感謝」として受け取ったら、安心して帰る。
「見限り・拒否」と受け取ったら、ショックで立ち尽くす。

同じ出来事でも、感情の立ち上がりは180度変わります。

これは、日常生活でも、振り返ればわかると思います。

ただ、「自分ごと」にするときに、いろいろなことに注意は取られますから、うっかり後回しにしてしまうことも、歌手や俳優の方ですとあるかもしれません。

 

なぜ、感情が湧かないのか?

それは、「捉え方(B)」がまだ本物になっていないから。

本物になるというのは、個人的に意味があるということ、影響があるということです。

だから、例えば極端ですが「傷つかないようにいたい(演じ手自身が)」とか

それこそ「迷惑かけちゃいけない、ちゃんとセリフ言わなきゃ」などと思っていると、深まらないんです。

自分自身が揺さぶられるようなところまで、感覚的な想像が至らない。

せっかく、セリフや状況に対して、役が“なにとして受け取ったか”が、自分の中に腑に落ちていない。
そこが不明瞭なままでは、どんなにリアクションを演じても、観る側には伝わりません。
むしろ、嘘っぽく見えてしまう原因になります。

(また別の記事でも掘り下げておりますが、リアクション/反射は演技の半分だけです)

 

感情の表現を念入りに整えるより、感情が“湧いてしまう構造”をつくる

大切なのは、「感情をどう出すか」ではなく、
「なぜ湧いたのか」を明確にすること

ここが、説明的な演技「風」な様子と、自分ごとの現代の行動、演技との違いです。

そしてそれは、セリフとト書きを読むだけでは掴めません。
実際に身体を通して、呼吸を通して、自分の中で“受け取り方”が本物になったとき、
声が変わり、表情が変わり、演技が生き始めます。

という事は、ご自身の感情的な生活ももちろんですが、

プロは、役のためにつかう身体(顔も声も含めた)をよく知り、アップデートしながら、毎週チューニングし、使えるようにしておくことが重要になるのです。

 

演技で感情を動かしたいなら、掘るべきは「捉え方」

感情が動かないときに必要なのは、感情の“つくり方”を学ぶことではありません。

ここもしかすると、まだ勘違いしてらっしゃる方もいるのかも…

「そのセリフや出来事が、自分の中でどう響いたのか」を徹底的に掘ること。

その精度こそが、プロの演技を支える技術です。

調整できるからこそ、演出にも答えられる。

演技は、頭で理解しているだけでは成立しません。

身体の中で「本当に起きる」ことを、想像と組み合わせ、また相手と一緒に、何度でも、必ずしも全てが一緒ではないが、まるでバス停を通るかのように、目的に向かって通過していくような感じで、大事な目標外さないで、繰り返しできるようにする。

それが本物の、息の長い活躍を続けていくためのプロの準備です。

 

実践で体感したい方へ|2025年最後の12月スペシャルクラスご案内

この「感情が起きる構造」を、実際のセリフ・シーン・さらに、特別に考案されたエクササイズを使って体得していく演技クラスを、以下の日程で開催します。

【ステップ1|土曜夜・オンライン台本読解】
日時:2025年12月27日(土)18:00〜22:00
内容:書かれていることから書かれていないことを、根拠のある形で創造するところまで。

【自分ごと】で行動して演じるための台本読解の基礎と作品を面白くするためのシーンの鉄則(なるものがあります)を深掘りするオンライン講座です。

形式:登録制Zoom開催/台本の分析の方法と役立つ実践的な視点をじっくり扱います。

特定の台本だけではなく、エクササイズも作られます。双方向の対話を重視した少人数のオンラインクラスです。俳優だけでなく、歌手や演出家、脚本家の方を含め、また海外在住、遠方にお住まいの方のオンライン部分のみのご参加も歓迎しております。

 

【ステップ2|日曜・月曜の対面クラス】
日時:2025年12月28日(日)・29日(月)各日13:00〜16:00
内容:「同調」と「共感」に基づく、演じるためのエクササイズ

実際に身体動かしながら、1人で、またはペアで、または3名で、特別に考案された交流するためのエクササイズを行います。よく見ること、よく聞くこと、そして想像することをベースに、様々な交流の形を探っていきます。

セリフを入れてくる必要はありません、そのような課題もありません。

役の人物同士が、どういう関係性の時、何を感じているのか、どこへ向かっているのか、緊張と弛緩、そして、相手とつながるとは、役と結びつくとは…。

演じることを極めていきたい方にお勧めの、交流のための、そして感覚を磨いていくトレーニングを兼ねています。ぎメモ

形式:スタジオでの身体を動かす対面クラス/演じるための共感と同調の身体的トレーニング

 

【ステップ3|火曜・水曜のシーンクラス】
日時:2025年12月30日(火)・31日(水)各日12:00〜16:00
内容:実際のシーンを用いた実践クラス

シーンの鉄則を踏まえた上で、現場で通用するレベルのサイドコーチを受けながら、【自分ごと】で演じる実践クラスです。

調節が可能で演出が受けられる、現場での対応が可能な感情や想像の構造を構築していきます。

少人数で、いくつかのシーンを交代で演じながら、演技の要素及び現代の生き生きとした演技の仕組みをひもとき、レベルアップさせていきます。


形式:対面クラス/分析+実演を通じて統合します。後日のテキストによるフィードバックも含まれています。

オンライン台本読解及び共感と同伴のエクササイズクラスは単発で受講可能ですが、連続受講での相乗効果が高く、割引もございます。
特に、12月27日のオンライン台本読解と、30〜31日のシーン実践クラスは内容が直結しています。

つい多くの方が休んでしまうことも多い、この機会に、ぜひご自身の現在地を見直してみませんか。

表現が伸び悩んでいる方、「気持ちが動かない」と悩んできた方、
そして、自分の中で本当に起きる演技を形にしたい方は、ぜひご参加ください。

モヤモヤしたまま年を越さず、今年の課題をスッキリさせ、来年の飛躍に備えましょう。

結果はあとから、ついてきます。

 

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📩kaoru(アットマーク)kaorukuwata.com

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台本の読み込みが浅いと言われたら?—プロの演技力はどこで差がつくのか

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