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考えすぎて演技が止まる理由|「感じる前に考える」癖が表現を浅くする

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指導歴20年の演技コーチが解説する考えすぎのパターン

東京もすっかり寒くなりましたね、読書が進む冬、演技コーチの鍬田かおるです。

今日は「感じること・考えること」このどうしても避けられない2つの軸についてです。

本当は、もっと感じられたはずなのに

演技や表現に真剣に向き合ってきた俳優や歌手の方ほど、
「もっと届くはずだった」「こんなはずじゃない」
そんな感覚を、どこかで抱えたことがあるのではないでしょうか。

セリフは覚えている。
段取りも理解している。
大きなミスもしていない。

それでも、
なぜか自分がそこにいない感じがする。
判断や行動が、どこか他人事のまま進んでしまう。

その違和感は、単なる才能や熱量の不足ではありません。

 

気づくと「正解探し」が先に立ってしまう

多くの俳優が、無意識のうちにこう考え始めます。

どうすれば正解なのか。嫌われないためには…。
失敗しないためには何を選ぶべきか。うまくやりたい…。
これ以上、間違えないようにするにはどうすればいいのか。

そして、何より、真面目な方ほど「迷惑をかけちゃいけない」、「きちんとしていなければならない」なども考えます。

もちろん、考えること自体が悪いわけではありません。
プロの現場では、思考も判断も必要です。

判断力、論理的な思考あってこそ「感覚体験」です。

ただし、感じる前にあまりにも長い間、考え続けてしまうと、
決断も行動も、どこか距離のあるものになります。

すごく、もったいないですよね。

自分がそうしたいからではなく、
たぶんこれが無難だから。今まで通りだから、今まで以下にはならないだろう…。
そんな選択が積み重なっていきます。

まさに、これ「で」いい。という発想。

これ「が」いい。

とはあまりにもかけ離れています。

 

演技が浅くなる原因は、ただの技術不足ではない

演技が薄く感じられるとき、
多くの俳優は感情量や表現力を疑います。

けれど実際には、
感情を出そうとする前段階で、感覚が止まっている
というケースがとても多い。

考えすぎてしまうと、ついつい
身体の反応。
相手から受け取っている微細な情報。
緊張と弛緩の変化。

そうしたものが、後回しになって行き、判断の軸に使われなくなります。

結果として、
行為はしているのに、主体が立ち上がらない。
そこに生きている感じが生まれにくくなるのです。

そこに、もともとの個人的な、これまでの生活に目指した、誰にでもある程度ある防衛が働きます。

通常は、生命維持や傷つかないために、ある程度バランスが整っていれば問題がないのですが、「大事な時ほど」、守りたいがために、感じるためではなく、感じても変化がないように考えてしまうんです。

ここ、大変な矛盾であり、よくある傾向なのですが、わかりますか?

 

より「感じる」は才能でも気合でもない

ここで大切なのは、
感じることをロマンや勢いの話にしないこと。

感じることは、
鍛え直し、使い直すことのできる感覚の機能、現実を直視することも含まれていると思います。

ただ特別な人だけが持つものでも、1部の
熱い人だけに許されたものでもありません。

むしろ、
経験を積んできた俳優や歌手の方ほど、
理屈や安全策を多く持っている分、予測もついてしまいますから、何かとこの感覚が後回しになりやすい。

だからこそ、ちゃんと使い直す必要があります。

そして、頼れる感覚をいつもブラッシュアップして、磨いておく方が、健やかです。

 

葉や枝より、まず幹と根から整える

演技に限らずですが、表現を良くしようとするとき、
つい目に見える部分に手を伸ばしたくなります。

セリフ回し、抑揚、スピード。
感情表現、自分にとって素早く出せる部分、目立つ部分。
動きの工夫、いわゆる所作。
演出への対応、その場での当たり障りのない成功体験の焼き直し…

これらは残念ながら、すべて枝葉です。

ある意味、「結果の一部」といっても良いでしょう。

その前に整えるべきなのが、
判断がどこから生まれているか。
行動の起点が自分の感覚にあるか。

そもそも何のためだったのか、どこへ向かっているのか
という、幹と根の部分。

ここが曖昧なままでは、
どれだけ技術を足しても、表現は安定しません。

そして、他人の心を動かすには至らないのです。

 

力を込めて、やたら無理に頑張らなくていい

季節の変わり目や、健康に自信がない時、
また、目に見えた結果があまり出ていない時、無理にまとめようとしたり、
気合いを入れ直そうとしたり、つい「やらなきゃ」に傾きやすい時期です。

でも今必要なのは、
ただ、精神論や、思い込みで、無理に積み上げることではありません。

考える前に、感じるほうに舵を切る。

その選択をしてみる。

小さくても構いません。
判断の一瞬を、頭ではなく感覚に委ねてみる。

それだけで、表現の質も、集中のあり方も、
静かに変わり始めます。

この選択を積み重ねていくことで、感覚も信頼できるものにトレーニングされていくのです。

いわば「感じるために考える」掃除を育てていくことになるのです。

 

演じるための「共感と同調」を体感するクラスについて

感覚は、説明を聞くだけでは戻りません。

実際に使い、繰り返し身体で確認し、
安全な環境で試し直すことで、
少しずつ信頼を取り戻していきます。

演じるための「共感と同調」のエクササイズでは、
考えすぎて止まってしまう癖。
感情に頼らず、相手とつながる回路。
判断と行動を自分のものに戻すプロセス。

そうした部分を、段階的に扱っています。

12月28日、29日の演じるための同調と共感もエクササイズクラスのご案内はこちらです。

【12月28・29日開催】俳優と歌手のための「同調と共感」エクササイズクラス

 

この記事を書いた人:

鍬田かおる : 演技コーチ/インティマシー・コーディネーター(ディレクター)

演技指導歴20年以上。

幼少より芸能事務所および演技教室で学び、イギリスへ。プロ俳優・歌手・ダンサーを中心に、感情と身体のつながりを軸としたレッスン、台本読解のクラス、プロのためのレベルアップ・トレーニングを展開中。

映画スクールやパフォーミングアーツの大学を始め、多様な公演、ミュージカル、オペラ、映像。演劇など幅広い現場で指導およびインティマシー・コーディネーター(ディレクター)としても、映画監督と講座やワークショップを行うなど、活動を広げている。

 

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幼少時から芸能事務所に所属し、俳優を目指し、ダンスや音楽のトレーニングを受け、また演技の私塾を経てイギリスへ留学しました。30年以上の演劇経験、ロンドンでの大学・大学院修了、正規のアレクサンダー・テクニーク教師としての専門性、ムーヴメント指導の経験を統合しながら、これまで1,900名以上の俳優・歌手・ダンサー・声優・ナレーターも指導してきました。

今回のクラスでも、表面的な形ではなく、交流が自然に生まれる“仕組み”とそれを演技に活かす方法を身体のあり方から、丁寧に扱っていきます。

活動されてるジャンルを問わず、また演技経験の長短ではなく、現場で結果を出したい方がもっとも伸びやすい内容です。

 

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