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リアリティーのある演技:「感じて動く」が難しいのは、“変えたい目的”がないから

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いつも熱心に読んでくださる方々、ありがとうございます。

密かに、私の「ブログを読んでるよ!」とおっしゃる脚本家の方、「旅公演先でも読んでます!」

とおっしゃってくださる俳優の方、いつもありがとうございます。

さて、今日は、初歩じゃないけど、基礎の部分。

うまくいっていた方でも、気になる場面が出現!

「感じて動いていたはずなのに…」です。

 

「感じて動く」が難しいのは、「変えたい目的」が抜けているから。

日常では、私たちは当たり前のように動いています。
喉が渇けば麦茶を取りに行き、薬を飲もうとして、ついでに食器を洗い始める。
「何かを変えたい」と思った瞬間に、身体は自然と動き出しています。

そしてその動きに、
「どんなふうに見えているか」なーんて、私たちはほとんど意識していません。

この日常では、無意識にやっていること、自分のこと、実用的なことだとさっさとできてしまう点に、

①フィクションの世界での

②しかも他人バージョンで

の2つの難しさがあります。

ここは事実の整理、想像力、そして身体化の練習で、乗り越えていきましょう。

 


なぜ演技になると、うまく動けなくなるのか?

演技の現場に入ると、急にこうなります。

「歩き方が女らしくないって言われたから…」「この間、つま先の向き、注意されたな」
「さっきのシーンと雰囲気を合わせたほうがいいかな」、「これで足りてるのかな?」
「このキャラはかわいく見えなきゃ」「もっと男らしいほうがいいよね」

のように、外からの目線を考えすぎ(見せ方見え方を学ばなくていいと言う意味ではありません)

本来、私たち本人が、日常でそんなことを考えて動いていないはずのことで頭の中がグルグルしてはいませんか?


でも台本があると、もう展開や結末も(なんとなくでも)見えていて、

その結果、もう準備の段階でもないのに「自分がどう見えるか」に意識が向きすぎてしまう。

その結果、舞台の上でウロウロしたり、ちょこちょこ動いたり。
まるで探し物をしているかのような、不自然な“動き”が生まれてしまうのです。

この「探している状態」…

バレてます。

 


「動き」が不自然なのではない。動く理由が曖昧だから、そうなってしまう。

人が動くとき、そこには必ず「目的」があります。

  • 苦しいから、喉の渇きを癒したい

  • 迷惑にならないように、いま咳を止めたい

  • いますぐ安心して、集中したい

  • 15時までに子どもを迎えにいかなければならない!

どれもこれも、「今この状態を変えたい」という欲求から生まれるものです。


そしてその“目的”こそが、行動の原動力になる。

 


 

感情を“見せる”のではなく、行動の中に滲むもの

「感情を出さなきゃ」と思う必要はありません。
本当に必要なのは、「変えたいこと」が明確であること。

  • 声を潜めるのは、バレたくないから

  • 身体を小さくするのは、気づかれたくないから

  • ゆっくりジリジリ動くのは、恐怖を抑えながら、どうにか切り抜けたいから

例えば、こんな具合です。

それを“ちゃんと見せよう”と直接狙うのではなく、ただ当事者として行動しているだけで、いい。

もし、それでも伝わらないのであれば、「見えなくする」何か邪魔を混ぜているのかもしれないですね。

もし、それでも聞こえないのであれば「聞こえるためのトレーニング」が必要なのかもしれないですね。

これらは、漫然と「がんばる」とか「もっと気持ちを込める」では解決しません。

騒音を取り除き、呼吸を使いこなせるようになり、動きを明晰にして、動機や意図を整理する。

そこから、相手の影響も変わり、そして結果的に、お客様も、少しずつあなたの中身に興味を持ち、想像を膨らませ始めます。

 


「仮でもいいから、目的を決めておく」という演技の準備

すべてを作り込む必要はありません。

むしろ、そういった「決め打ち」しないで済むように準備をしておきたいのです

という事は、様々な解釈が可能な中で、
でも、「今この瞬間、何を何に変えたいのか」

「何が緊急なのか、何が重要なのか」―
その“目的”を仮でもいいから持っておくことで、動きが変わってきます。

そうすると、喋りたくなったり、黙りたくなったりするのではないでしょうか。

そして、動いた身体が、自分自身の“感じていること”をあとから教えてくれる。


そのときはじめて、「感じて動く」が自然につながるようになるのです。

 


動けないのは、あなたが下手だからではない

もしあなたが、
「なんだか不自然だな」「演技になると動きづらいな」と感じているなら、
それはあなたに演技力がないからではありません。

“変えたい”という目的が、明確でないまま動こうとしているだけです。

それだけで、演技はずっと楽になる。
そして、もっと選択肢を伴って、“その場にいる”ことができるようになります。

「自分ごとでしゃべってる」実感

「ほんとに感じて、気づいたら動いてた」

「まるで自分のように、周りの見え方も変わってた」

こういっためくるめく感覚体験はここからスタートします。

あきらめないでください。

 

 

この記事を書いた人:

鍬田かおる : 演技コーチ/インティマシー・コーディネーター(ディレクター)

演技指導歴20年以上。プロ俳優・歌手・ダンサーを中心に、感情と身体のつながりを軸としたレッスン、台本読解のクラス、プロのためのレベルアップ・トレーニングを展開中。映画スクールやパフォーミングアーツの大学を始め、多様なミュージカル、オペラ、映像、舞台など幅広い現場で指導およびインティマシーコーディネーター(ディレクター)としても、映画監督と講座やワークショップを行うなど、活動を広げている。

 

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