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「まず状況を成立させることが大事」と思っていませんか? 演技を“浅い”と言われてしまうときの見直しポイント

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指導歴20年+ 舞台でも、映像でも通用する演技力をアップさせるアクティング・コーチ 鍬田かおるです。

新年度が近づき、ワクワクするような気分の方、ちょっと不安だけれど、新しいことに挑戦してみたい気持ちの方もいらっしゃると思います。

今日は、

なんとなく気になっていたけど、先延ばしにしていた問題

先日のオーディションのダメ出しでちょっとしょんぼりしてしまった方

2024年度も一生懸命やってきて、それなりに出演してきたけれど、なんだか手ごたえが感じられない方のために、「状況を成立させる」という非常に重要だけれど、最優先では無いはずの入り口について解説します。

演技の「違和感」、放置していませんか?


俳優として活動していると、ある時期からこう感じることはありませんか?

・それなりに現場はあるが、なんだか「作業」のような感じ…

・台本通りにやっているのに「演技が浅い」または「何かちょっと違うんだよね」と言われる

・もっと反応して!と言われるけれど、どうすればいいかわからない

・自分なりに試してみるが、「余計な事はしなくていい。」というような趣旨のことを言われてしまう

・オーディションで何度も落ちる理由がはっきりしない

それはもしかすると、

演技を「状況の成立」にとどめてしまっているからかもしれません。



「まず状況を成立させることが演技の要」

 

…そう思っていた頃のお話でございます。

 
小学生の頃から芸能事務所に所属し、俳優教室にも通っていた私も、最初はそう思っていました。

もちろん、役の人物が置かれている状況はイメージしていましたし、必要な情報は図書館で調べたりしていました。

でもそれだけでは、

“浅い”

“もっと反応して”

“全然中身が動いてない”

……そんな風に言われるばかりでした。

振り返れば、

「今こ、こがどこで、何の前で、何の後なのか」といった基本的な設定も、

どこか抽象的で、そして何より「この人は何をしている人なのか」「誰にとっての何」のような具体的かつ個人歴な部分が曖昧だったんです。

だからこそ、なんとなく興奮してお気持ちを伝える“説明演技”になってしまっていました。

舞台写真などを見ても、自分はその気だったのですが、どうにも恥ずかしい。

状況には合っているけれど、どんな気持ちなのか、何が欲しい人なのかはわからない。

 

今、振り返り1番良くなかった事は、

「この人物が今1番困っていること」、「どうしても、今、ここで、解決したいこと」がさっぱり見えてこないことです。



感情でなんとかしようとしても、ループから抜け出せなかった

演技は「気持ち」だけでは動かせません。

それでも、周囲の大人たちや演出家から言われたのは、

・「気持ちが伝わらない」

・「本当にそう感じてるように見えない」

という“ご感想”ばかり。具体的な解決にはつながりませんでした。

そのまま大学の演劇科に進学しましたが、モヤモヤはさらに深まりました。

「目的が大事」とまでは言われるのですが、どうやってそれを探し出すかも説明がない。(あったのかもしれませんが、当時の若かりし私には刺さってませんでした)

繰り返し「目的の設定をしっかりしろ」と指摘されても、台本を読む段階で具体的になっていないから自分事にならない。

その上、「目的と目標」の違いも、具体的に指摘されることが誰もなかったから(あったのかもしれないが記憶にありません…申し訳ありません、せっかくの先生たち!!)

結果として:

内容にに詳しくなっても

・「お勉強」みたいな整理にしかならない

・役の切実さやリアルな感覚が立ち上がらない

・具体的にと言われて、時代劇なら、当時の資料や文化背景などの「調べ物」をするが、どうも博物館っぽい

そうすると、さらに、

苦しさから興奮に頼る → 身体が固まる → 感じなくなる → もっと力任せになる → さらに感じられなくなる……

そんなループを、ずっと繰り返していました。

 

「大好きだけど、なんだかうまくいかないくて、ちょっと苦しい」

「良い瞬間はあるらしいけど、実はピンと来ていない」

そんな感じでした。



本当の転機は、ロンドンでの出会いから



その後ロンドン大学の演劇&舞台芸術学科に進学し、改めて演劇の構造や台本読解の方法、演技や物語るという仕組みみの本質に触れはじめました。演技以外の座学や幅広い舞台芸術及び演劇に関連した科目がたくさんあったので、3年間世界の様々な演技メソッドや、いろいろな演出家や作家の切り口などにも触れました。(イギリスの大学は4年制ではなく3年間で卒業です。)

このとき気づいたのは、必要なのは“気持ち”ではなく、役としての行動の明確さだということ。

セリフの奥で「何を達成しようとしているのか」。台本に書かれていないことを、どこから引き出してくるのか。

行動と目的が整理されると、演技は自然と具体的になります。

整理された行動が、演技力を底上げする

これは私だけではありませんでした。周囲の学生も、演技を専門にしていない人たちでさえ、整理された準備によって“気づいたら感情が動いていた”というような体験を繰り返していました。

 

その後、ひょんな出会いから、歌手や俳優のトレーニングの基礎になっているアレクサンダー・テクニークの指導資格を取ったり、偶然が重なり、ロイヤル・セントラル・スクール・オブ・スピーチ&ドラマの俳優教育とムーブメントの新しい課程に進学することになりました。

すでにこの時、私は20代後半、ここから毎日、名門演劇学校で、さらに具体的な、端的に言うと

「シーンを面白くする」

「俳優の魅力を生かす」

「演出家のテーマの掘り方、その際立て方」

「現代の俳優に必要な準備方法と長く活躍していくためも素地」

「演出と動きの整理」

のようなことを中心に、大学時代よりさらに実践的かつ、現代の俳優に求められているもの、不特定多数の他人に見せる前提での「物語る」ことと「役という他人」を演じることの仕組みについて解剖!と実践させられた印象です。

詳細は今回端折るとして、多くの方々の助けがあって、演出と教育の課程を修了し、今では実際の脚本を扱いながら、多角的な切り口で役の準備を導いています。



「状況を成立させることが優先の演技」から抜け出すには?



演技力をアップさせるには、「状況を成立させる」ことをゴールにせず、

今どんな目的を持って行動しているのか?

どう変化させたいのか?

といった“行動の明確さ”を言語化しておく必要があります。

でも、これは「お勉強」から来るものでも、1つか2つの「ハウツー」の型があって、成立するものでもありません。

「人間の仕組みを理解すること」ーしかも科学的、かつ現実に根差して、です。

よく、私のイギリス、アメリカの師匠たちがそれぞれ専門は異なるのですが

「自分をまるごとつかう」と描写します。

なぜなら、台本に書かれている情報を作り出しているのは、役として行動している自分であり、

自分なしに状況がありえないわけです。

その順番を逆にしてしまい、状況を説明することで、「役の気持ちを出そうとする」なんてうまくいくはずがありません。

 

「まず自分ごと」


これは、オーディションや撮影現場で特に大きな差を生みます。

演出家や監督からの指示に対して、また周囲の俳優からの提案にも、

自分の判断軸で柔軟に応答できる俳優は、それだけで信頼されるからです。

それには、まず自己洞察、そして役の人物を多角的な視点から、「検証」というと、日本語では大げさに聞こえてしまいますが、台本に書かれている事実を整理する必要があります。

聞き慣れた感があるかもしれませんが

「これはいつなのか」

「これはどこなのか」

「あなたは誰なのか?」

をスタート地点にします。

そんなこと知ってるよ、当たり前じゃない。何を大事そうに言うんだ!と知ってるふうに言われる方も多いのですが、これを「個人的」に「役の世界観/固有の感覚世界」で実際に使う方法を実践している方はもしかしたら少ないかもしれません。(もしだけど、今までもやってるよ、という素晴らしい方ももちろんいらっしゃいます。)

入り口は同じだけれど、その後が「お客様目線の状況描写/説明」と「自分ごとの、固有の体験、感情も思考も行動に結びつく」と分岐しているので要注意です。

 

つまり、気をつけなくちゃいけないのは、「文学を読む」ときのお客様の視点ではありません。

台本を読み物として楽しんで、あらすじを味わって、自分が周囲と一緒に演じている姿を外からお客様のように想像してはいけません。

お客様目線である限り、役を批評してしまいますし、自分のことを外側から演出しようとしてしまいます。

アプローチが直接的になってしまうのです。

「自分で自分の背中は見えない」

これを飲み込んでください。

 


◾️3月のオンラインでの台本読解及びスタジオでの演技クラスについて



私が主宰している台本読解と実践クラスでは、こうした準備の視点を、実際の脚本を使って深めていきます。題材は、古典の時もあれば、映画の脚本のこともあります。1部ドラマの抜粋や必要な場合は、小説などを使うこともございます。

●台本読解オンラインクラス/Zoom

3月26日(火)・27日(水) 19:00〜22:00(2日間セット

●実践スタジオクラス/東京・新宿区

3月29日(土)・30日(日) 12:00〜15:00(2日間セット

▶ 詳細・お申込みはこちら:https://kaorukuwata.com/actingclass2025marchzoomstudiotextanalysis/

※今回は日程が合わないという方も、次回以降のご案内を優先的に受け取れる方法をご案内しています。

今回は参加できない方へ:次回以降のご案内を受け取るには

今回の内容に「もっと知りたい」「いつか参加したい」と感じてくださった方へ。

次回のクラス案内はInstagramとLINE公式で最速でお届けしています。

ブログにももちろん詳細を書きますが、少人数制で予約が埋まりやすいため、速報は公式LINE及びストーリーズの方から、現在は出しています。

Instagram → https://www.instagram.com/actingcoachkaorukuwata/

 

これまで触れてきた演技のなんとかメソッドや、〇〇式に疑問を抱かれた方へ

あなたの違和感は、もしかすると「役」にとってのリアリティーではなかったからかもしれませんよ。

こちらの記事も、ご参考になればうれしいです。

「セリフに気持ちは『のせないで』ください?」— これが演技のリアリティを変える

 

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・現場で役立つ準備の方法

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