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俳優がリアリティを失う瞬間。状態ではなく“行動”を演じよう

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状態をやってしまう、俳優が抜け出るためのヒント

最近は、各方面から、生徒さんをご紹介いただくことも多く、ご縁のありがたさに、感謝する日々です。

本日は、私も昔やっていた、とっても残念な「状態」でやったつもりになっている、という怖いお話です。

ごめんね。

俳優がリアリティを失う瞬間。

状態ではなく「行動」を演じよう

状態を再現しようとすると、リアリティが薄くなります

これ、何が違うのと思った方、最後まで読んでみてくださいね。

例えば、

演じているとき、「身体の状態」だけに集中してしまうことはありませんか?

よくあるのが、寒い・暑い、酔っている、頭が痛い、お腹が空いている・骨折してる──そうした“状態”を信じられるように、よりリアルに見せようとするあまり「だから何なのか」の部分が薄くなってしまうことがあります。

身体の状態を細やかに研究すること、動きをしっかり観察して、様子を伝わるようにしようとすること自体は悪くありません。

もちろん、必要ですよね。


けれども、「伝えなきゃ、見せよう」と意識が外向きになった瞬間、俳優としての行動エネルギーは止まります。

観客に伝わるリアリティは、単なる状態の再現ではなく、その状態がある上で、もう1段階、”そこで何をしたいのか”に宿ります。

リアリティは「状態+目的」の整理から生まれる

俳優がリアリティをもって生きるために欠かせないのが、「状態」と「目的」をセットで考えることです。

たとえば、酔っているなら──何が欲しくなってるのか、何を伝えたいのか。

酔っ払っていても、みんなが楽しいわけではありませんよね?

寒いなら──どこから、どこへ向かおうとしているのか。

寒くても、嬉しい気持ちで、中がホクホクしたこと、ありませんか?

それこそ、単純な「お腹が空いている」ような状態だったとしても、今、そこで、目の前の相手がいる瞬間に、その上で──何を得たいのか。どこへ向かっているのか…

目的へ駆り立てる原動力のない状態は、単なる「説明」に過ぎません。


リアリティを伴う演技は、状態の中で“目的を持って行動している人”として動いていくことです。

役の人物自身が、表面上は、意識できていなかったとしても、演じる俳優が自分の行動や動機を明確に理解すると、視線や呼吸、間の取り方までもが自然に変化します。

これ、楽しくなりますよ。

 

リハーサルや稽古前に整理したい3つの質問

状態に引きずられず、行動に立ち戻るための3つの問いがあります。

  1. いま相手に何をしてほしい?それは何のため?

  2. どこから来て、どこへ向かう?そうしないと誰が困るの?

  3. どう見られたい/見られたくない?何を失う、リスクは?

この3つを明確にしてから稽古に入るだけで、行動の矛先が立ち上がります。

ぜひ試してみてください。

ただ、状態を説明するのではなく、身体が“目的に向かって動いている”という感覚が戻り、セリフの意味や空気の流れにも説得力が生まれます。

 

状態を「作る」より、行動から「生まれる」演技へ

俳優に必要なのは、状態を「作る」ことではなく、行動の中から状態が「生まれる」構造を理解することです。
極端な身体の状態を扱うシーンほど、目的を忘れず、相手との関係を基点に構築することが重要です。

フィクションの世界でも、実際の俳優の身体は、ある程度の意志をもって動いてこそ観客を惹きつけます。

その意思の間に、余白があるからこそ、その柔軟性、その場での即興性も生きてきます。

このコントラスト大事です。


静かな秋の稽古の夜に、自分の中の「状態」と「行動」のバランスを一度整理してみてください。

リアリティのある演技は、状態を超えた“行動の精度”から生まれます。

本日は、すっかり忘れていた、でも私が夢中になって読んだ話題の本の紹介もあります。

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実際の事件をもとにしているから、余計気になりますよね。

余談かもしれませんが、私はとにかくお腹が空きました…そして柄にもなく、料理など…ちょっとしてみました。

 

●この記事を書いた人:鍬田かおる

演技コーチ/インティマシー・コーディネーター(ディレクター)

演技指導歴20年以上。留学中のイギリスにて、アレクサンダー・テクニーク指導者資格を正式に取得後、音楽家、ダンサー、声楽家、歌手、俳優らを中心に、20年以上の指導歴がある。映画、テレビ、舞台で活躍する実演家を中心に、感情と身体のつながりを軸としたレッスンと世界スタンダードの台本読解及び分析のクラスをはじめ、演技クラスや各種のプロトレーニング、個別レッスンを展開中。

養成所や研修所等での指導歴を経て、映画スクールやパフォーミング・アーツの大学を始め、事務所等でも指導を進める傍ら、多様なミュージカル、オペラ、映像、舞台など幅広い現場で活躍する歌手や俳優のコーチを務める。

詳しいプロフィールは、HPのプロフィールページからご覧いただけますと光栄です。

 

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