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舞台では何とかなっていた。それでも次へ進めなかった理由|俳優・歌手・ダンサーの準備を見直す

屋外で身体を伸ばしながら前を見つめる、スポーティーな女性のイメージ

舞台には出演している。

一度共演した方から、また別の作品に誘われることもある。

身体も動き、体力もあり、真面目で明るく、現場での感じもよい。

声や映像の仕事も、まったく経験がないわけではない。

それでも、一人で次の台本を開くと、何から準備すればよいのか分からない。

オーディションや現場が近づくほど、あれも足りない、これも試した方がよいのではないかと考え始め、準備をしているはずなのに不安が増えていく。

今回ご紹介するのは、舞台を中心に10年以上活動してきた30代女性の事例です。

彼女は、演技がまったくできなかったわけではありません。

むしろ、ある範囲では何とかなっていた。

だからこそ、自分がどこで伸び悩んでいるのか、何を見直せば次へ進めるのかが、長い間見えにくかったのだと思います。

※ご本人の許可を得て、匿名でお声を掲載しています。

「できない人」だけが、表現に伸び悩むわけではない

演技がまったく成立しない人であれば、課題は比較的見つけやすいものです。

声が届かない、相手を見ていない、台本に書かれている状況が分かっていない、何をしている場面なのか観客に伝わらない。

けれど、ある程度の身体能力があり、声も使え、場面の状況を成立させられる方は、慣れた環境の中では何とか進めてしまうことがあります。

演出されたことに対応し、稽古に真面目に取り組み、共演者と関係を築き、公演を最後までやり遂げる。

一度一緒に仕事をした方から、再び声をかけてもらう。

人柄がよく、現場になじみ、周囲と気持ちよく仕事ができることも、表現者として大切な力です。

ただし、「今いる場所で必要とされること」と、「自分が行きたい次の場所へ進むこと」は、必ずしも同じではありません。

今まで20年以上、養成所や事務所含め、様々な年齢の俳優や歌手及びそれらを目指す方々を指導してきましたが、ここがおそらく悩む方、少し時間がかかってしまう方、防衛的になってしまう方々の分岐点かもしれません。

ありがたかったし、楽しかった。それでも同じ場所を回っていた

今回ご紹介する方は、身体能力もフィットネスレベルも高く、スポーティーで元気なタイプです。

舞台上で状況を成立させることができ、共演した方との関係も築けたため、同じ界隈の中で次の出演につながることもありました。

それは、ありがたいことです。

楽しい経験もたくさんあったと思いますし、その活動によって、舞台に立つ体力、対応力、人との関係を築く力も育っていました。

しかし、同じ人間関係や似た規模の現場で仕事が続いていると、そこで通用している準備の仕方を、大きく見直す機会が減ることはありませんか。

仕事が完全になくなるわけではない。舞台で何もできないわけでもない。時折、声やテレビの仕事にもつながる。

だから、「もう少し続けていれば、いつか何かのチャンスがあるかもしれない」と思いながら、何年も経ってしまう。

これは、性格の問題ではありません。

彼女の場合、できなかったから止まったのではありません。何とかなっていたからこそ、何が足りないのかが見えにくかったのではないかと思います。

「頭では理解できても、身についていない感」

個人レッスンを始める前のことを、ご本人はこう振り返っています。

まずは、台本読解への苦手意識がありました。スポットで受講した時に、頭では理解出来ても身についていない感がありました。

クラスで説明を聞けば分かる。一緒に台本を読めば、「そうか」と思える。

けれど、自宅で一人になり、別の台本を開いた時に、何から始めればよいのか、何を根拠に考えればよいのか、役の人物にどのような問いを向ければよいのかが再現できない……。

「知っている」「説明を聞けば分かる」「その場ではできる」「一人でも別の作品に使える」。

せっかく気持ちはあっても、この間には、それぞれ距離があります。

クラスで理解したことが、まだ一人の準備にはなっていない。

その状態を、ご本人は「頭では理解できても身についていない感」と表現しています。

何を、どこから学び直せばよいのかも分からなかった

彼女の悩みは、台本読解だけではありませんでした。

今後お仕事を掴んでいくためには何をどうしたらいいのかがわからず、そもそもどこから学び直せば良いかもふわっとしていました。

10年以上活動している方には、すでにさまざまな経験があります。

舞台にも立っている。発声も習ったことがある。身体のトレーニングもしている。台本読解のクラスにも参加した。オーディションも受け、映像や声の仕事も経験している。

そのため、単純に最初からすべてやり直せばよいわけではありません。

すでに使えているものと、何となくやっているもの。昔はよい感覚があったけれど、今はぼんやりしているもの。舞台では使えてきたけれど、別の現場では精度が足りないもの。知識としては知っているけれど、身体や声には定着していないもの。

個人レッスンでは、その方がすでに持っているものと、現在曖昧になっているものを分けながら、今どこに時間を使う必要があるのかを確認します。

グループクラスですと、話がしにくい方、プライバシーが気になる方、周囲の方に遠慮してしまう方もいらっしゃるためです。

個人レッスンは、全員に同じ内容を行うものではありません

台本の読み方を見直す方もいれば、呼吸や発声を扱う方もいます。

身体能力はものすごく高いけれど、その力を役や作品の中でどう使うかを整理する方もいます。

オペラ歌手の方であれば、歌唱の技術ではなく、その底上げに役立つ身体や呼吸のこと、言葉との関係、また演技として、役の状況、身体の構えや変化、相手との関係を扱うことがあります。

ミュージカル俳優の方であれば、歌、ダンス、セリフを別々にうまくこなすのではなく、同じ役の人物として一つにつなげる必要があります。

映画やテレビで活動する俳優の方には、限られた準備時間の中で台本を読み、カメラの前で必要な表現を選び、相手から受け取ったものをその場で使う力が求められます。

現在はダンスを中心に活動している方にも、身体能力とは別に、何を見て、何に動かされ、誰に何を届けているのかを具体的にする時間が役立つことがあります。

オペラ、ミュージカル、映画、テレビ、演劇、ダンスでは、現場で求められる技術は異なります。

けれど、使っている身体は一つです。

 

その方の身体、呼吸、声、台本との付き合い方、現在の活動、次に目指す仕事を見ながら内容を組み立てる。それが、個人レッスンです。

自分の課題に時間を使えると、伸びしろを効率よく磨ける

個人レッスンの利点は、単に一対一で詳しく教えてもらえることではありません。

限られた時間を、今の自分に必要な課題へ集中して使えることです。

台本読解で止まっている方が、すでにできていることを何度も繰り返す必要はありません。

身体と呼吸の連動を見直す必要がある方に、一般的な演技論だけを増やしても、実演は変わりにくいでしょう。

オーディションの台本が届いている方には、その作品、その役、その提出条件に必要な準備から扱えます。

自分の課題に時間をしっかり使えるため、できていることを漫然と繰り返すのではなく、今ある伸びしろを効率よく磨いていけます。

一人で準備していると、この読み方でよいのか、もっと別の設定を考えるべきか、感情が足りないのか、声なのか、身体なのか、そもそも台本を読み違えているのかと、次々に不安が増えることがあります。

試行錯誤は必要です。

けれど、何を確かめるために試しているのかが曖昧になると、考えるほど準備が深まるのではなく、余計に不安になることもあります。

個人レッスンでは、実際に起きていることを見ながら、今は何を残すのか、何をやめるのか、次に何を試すのか、その結果のどこを見るのかを具体的にします。

一人で同じところをぐるぐる考え続けなくて済むようになり、オーディションや現場の準備でも、次に試すべきことがクリアに見えやすくなります。

迷いをすべてなくすことが目的ではありません。

迷った時に何を確認し、どこから試せば前へ進めるのか。その判断の道筋を、自分でも使えるようにすることが目的です。

グループクラスと個人レッスンでは、得られるものが違う

グループクラスでは、他の方の台本の読み方や、自分とは違う役の選択に触れられます。相手役から予想していなかった影響を受けたり、他の方へのフィードバックを自分の課題として聞いたりすることもできます。

複数の方と同じ場を共有することで、自分の癖や思い込みが見えやすくなることもあります。

一方、個人レッスンでは、その方固有の問題に時間を使えます。

なぜ、一人で台本を読むと止まるのか。なぜ、歌唱中は使える呼吸が、セリフになると変わるのか。なぜ、身体能力は高いのに、役の状況では身体が固まるのか。なぜ、舞台では成立するのに、カメラの前では表現が大きくなるのか。

グループクラスと個人レッスンは、どちらか一方が上位なのではありません。扱えるものが違います。

今回ご紹介している方も、オンラインクラス、グループクラス、スタジオでの実践を経て、個人レッスンへ進みました。

クラスで新しい視点を得て、相手と試す。個人レッスンで、自分の準備のどこに定着していないのかを確認し、再び別の相手や台本でも使えるかを試す。

このように行き来することで、理解した内容が一度きりの体験で終わりにくくなります。

準備する時の「思考回路」が変わってきた

半年ほど個人レッスンを続けた現在、ご本人はこう書いています。

台本読解への苦手意識が減りました。まだまだ出来ていないですが、読解を進めることへの姿勢が変化したと思います。

さらに、

準備する時の思考回路がクリアになってきた感覚があります。

とも書いてくださいました。

何が書かれているのかを確かめ、自分に必要な問いを立て、仮に選択し、実際に試し、その結果を見て更新する。

次の台本でも自分で使える思考の道筋ができると、準備のたびにゼロから考え直す必要が減ります。

このスピードアップが、表情明るくすることも多いです。

感情を出したのではなく、準備した結果として動いた

ご本人は、個人レッスン中の体験について、こう書いています。

レッスン中に先生と課題を進めると、自然と感情が湧き出る感覚があり、その実感により少しずつですが、自分できちんと問いかけよう、という意識で準備を進められるようになりました。

ここで大切なのは、感情を出すことを目標にしたのではないということです。

悲しくなろうとする。役の気持ちを想像する。感情を込める。強く感じようとする。

そういったものを信じたい方は自由ですが、私の指導では、そうした直接的な操作をしたわけではありません。

台本に書かれた状況を確かめ、役の人物として必要なことを具体的にし、相手を丁寧に見て、必要な形で聞いて、そこから影響を受ける。自分の身体や呼吸の状態も含めて実際に試す。

その結果として、感情が自然に動いたのです。

感じていることと、相手や観客に伝わることは同じではありません。感情を直接足すのではなく、状況、関係、目的、身体、相手とのやり取りを具体的にすることについては、こちらの記事でも詳しく書いています。

気持ちは動いているのに、なぜ演技が伝わらないのか

昔はよかった感覚を、現在の自分に戻す

個人レッスンでは、台本読解だけを扱っているわけではありません。

ご本人は、必要だった内容について、こう書いています。

台本読解の仕方です。また、呼吸の扱い方や表情、自己分析なども、今の自分にとても必要ですし、発声なども、かつて良い感覚があった時もある気がするけれど、いつのまにかぼんやりしてしまっていた部分を、思い出せている気がします。

以前できていたことでも、使わなければ曖昧になります。昔習った方法が、今の身体や仕事には合わなくなっていることもあります。

反対に、もうできなくなったと思っていたことが、身体や呼吸の使い方を見直すことで戻ることもあります。

これは俳優の方だけの問題ではありません。

以前は楽に出ていた声。公演が続いても崩れなかった身体。歌と芝居が自然につながっていた感覚。相手の音や動きに反応できていた感覚。

良かった時の状態を無理に再現せず、現在の身体と仕事に必要な条件を点検します。次に、それらを満たす方法を検討します。

活動の予定に合わせられるから、現場と学びを切り離さずに済む

活動中の俳優、歌手、ダンサーの方は、毎週同じ曜日に通えるとは限りません。

撮影が入る。公演やリハーサルが続く。地方へ行く。急にオーディションの連絡が来る。仕事が重なる時期と、比較的余裕のある時期がある。

個人レッスンでは、継続を前提にしながら、その時期の活動に合わせて内容や回数を調整できます。

オーディション前には、提出する台本や動画を集中して扱う。公演中に見つかった問題は、次の本番までに確認する。地方滞在中はオンラインで台本や役の準備を進める。対面で身体、呼吸、声を確認した後、オンラインで次の台本を整理する。

必要に応じて、このように使うことで、仕事がない時だけ勉強し、仕事が始まったら学びを止めるという分断が減ります。

私が長年学んでいたイギリスでは、長期公演中だからこそ、午前中にレッスンに行ってから劇場に向かう、休みの日に個人レッスンを入れるという俳優や歌手の方も多く、俳優組合が補助を出しているクラスなどもありました。

ですから、私も、俳優や歌手の方々が、現場で困ったことを、そのまま次の現場まで持ち越さなくて済む。必要な時に必要な課題を扱えるため、準備の不安を抱えたまま、一人で考え込む時間も減らせる個人レッスンを試してみて欲しいなと常々感じています。

仕事とレッスンを別々にするのではなく、今ある仕事や、これから掴みたい仕事のためにレッスンを使うことができます。

だからこそ、息の長い活躍が可能なのだと感じています。

経験者には「棚卸し」が必要になる

彼女は、それまで「なんでもまず挑戦」という姿勢で活動してきたそうです。

新しい作品に参加し、依頼があれば挑戦し、できることを増やしながら経験を積んできた。その姿勢によって得たものは、たくさんあります。

しかし、経験したことが、そのまま再現可能な技術として残るとは限りません。ここは苦労されたのではないかと思います。

様々な条件が重なり、ありがたくもうまくいったこと。共演者や演出家に助けられて成立したこと。若さ、持ち前の身体能力や勢いで越えられたこと。さらに、慣れた仲間との間では通用したこと。

そこも含めて見直さなければ、何が自分の力として残っているのか分からなくなります。

ご本人は、

自分のやってることへの棚卸しが必要、というお話には衝撃を受けつつも、「私が俳優で食べていけるようになる、指名される俳優になる、芝居が上手くなる」には、棚卸しは必要だなと思い、いろいろと考えるようになりました。

と書いてくださいました。

棚卸しとは、これまでの活動を否定することではありません。

何をすでに持っているのか。何が人から評価されてきたのか。何はまだ曖昧なのか。今の方法のままでは、どこで止まりそうなのか。次に進むために、何を学び直す必要があるのか。

それを具体的にする作業です。

私自身、イギリスの演劇学校では、実は学校といえども、それこそ少人数制でしたし、毎日ジャーナルをつけるように言われていました。仲間と毎週チェックし合うこともそうですし、学期ごとに先生方の面談でも、見ていただいていました。この棚卸し、振り返りのシステムから得たものは非常に大きいです。

 

何とかなっている方にこそ、個別に見直す時間が必要になる

まったくできないわけではない。舞台にも出演している。歌える。踊れる。人柄も悪くない。現場にもなじめる。また次に声をかけてもらえる。

それでも、思うように仕事や表現の幅が広がっていない。

その場合、努力が足りないとは限りません。これまでの経験を否定する必要もありません。

ただ、すでに身についているものと、曖昧なまま残っているものを、一度分けて見る必要がありませんか、

何とかなっていたからこそ、見えなかったことがある。呼ばれていたからこそ、立ち止まらなかったことがある。楽しかったからこそ、その場所で続けることが、伸び悩みの理由にもなっていたことがある。

ご本人は、個人レッスンを始めた当時について、

ずっと気になっていたけれど踏み出していなかった自分に、今は「早く申し込めばよかったのに」と強く思います。

個人レッスンを受けるたびに、自分が目指す未来を、昔よりも自分の中でくっきり描けるようになってきています。

と話しています。

個人レッスンでは、台本読解、身体、呼吸、声、発声、相手とのやり取り、オーディションや現場前の準備を、その方の現在地に合わせて扱います。

オペラ歌手を含む歌手の方は、目標に合わせてご相談ください。 ミュージカル俳優の方も、目標に合わせてご相談いただけます。 映画やテレビ、舞台で活動する俳優の方もご相談ください。 声優やナレーターの方、現在はダンスを中心に活動している方も同様です。

8月は、グループクラスから始めることもできます

日程が合う方は、個人レッスンだけでなく、オンラインとスタジオを組み合わせた8月クラスから始めることもできます。

8月29日(土)はオンライン台本読解、8月30日(日)はスタジオでの少人数シーン実践、8月31日(月)は役を「自分ごと」に深める発展クラスです。

他の参加者の選択や、相手とのやり取りから学びたい方には、グループクラスが適しています。

撮影、公演、地方滞在などで日程が合わない方や、現在の課題へ集中的に時間を使いたい方は、個人レッスンをご相談ください。

現在の活動、今困っていること、これから目指したい仕事を、お問い合わせの際にお知らせください。

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安全な学びの場づくりについて

当クラスでは、俳優同士がその場の流れや即興判断で、急に身体接触を行うことを禁じています。

身体的接触を含む可能性のある場面は、台本上の必要性、目的、手順、同意、境界線を事前に確認した上で扱います。

安全とハラスメント防止に関する詳細は、以下の固定ページをご確認ください。

レッスン・クラスにおける安全とハラスメント防止ポリシー

 

この記事を書いた講師

鍬田かおる

演技コーチ/STAT認定アレクサンダー・テクニーク教師/IDC認定インティマシー・コーディネーター(ディレクター)。

俳優、声優、歌手、ダンサーに向けて、台本読解、身体と声、セリフ、相手とのやり取り、現場前の準備を扱うレッスンを行っています。

必要なのは、努力を否定することではなく、見ている場所を変えることです。

そこを具体的に整理すると、演技や歌唱、ダンスの手応えも変わってきます。

見ている場所が変わると、考え方が変わり、演技や歌唱、ダンスで選べることも変わります。

その選択肢が、現場で相手と協働し、作品へ具体的に貢献する力につながります。

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