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プロを目指す学生・キッズと保護者へ|学校で頑張ることと、仕事につながる準備は同じではありません

誰もいない稽古場で、プロを目指す学生が学校での努力と仕事につながる準備の違いを考える

夏休みに入って、10日以上が経ちました。

学期中は、授業に出る。場合によっては、部活も…
学校の練習室で歌やダンスを練習する。
学内公演や発表に参加する。
先生から出された課題に取り組む。

どれも大切です。

学校の設備や授業、発表の機会をできる限り活用することも、学生としては良い姿勢だと思います。

ただし、

学校で頑張ることと、プロになる準備をすることは、同じではありません。

ここを混同したまま卒業を迎える学生の方は、決して少なくありません。

私はこれまで、演劇やミュージカル、ダンスなどの実技を扱う大学のほか、養成所や専門学校でも長年指導してきました。現在の大学での指導は12年になり、場所によっては15年以上関わってきた現場もあります。

芸能事務所では、子役の方の指導にも携わってきました。

だからこそ、もったいないなと感じるのが、通常の祝日や土日はもちろん、春休み、冬休み、そして特に長くとっている学校も多い、夏休みの使い方です。

学校の中では、頑張るための枠が用意されています

授業の時間が決まっている。
課題が出される。
発表の機会がある。
練習室がある。
先生がいる。
一緒に取り組む学生がいる。

学校の中では、何をするかの大枠を誰かが用意してくれます。

これって、ある意味すごく楽なんです。本人にとってもそうですし、親や保護者の方にとっても、デザインされていることに安心感もあります。

何より自分で考えなくて良い。

その環境の中で真面目に取り組めば、本人にも「かなり頑張っている」という実感が生まれます。

もちろん、それ自体は悪いことではありません。

問題は、その頑張りをそのまま、

プロになるための準備が進んでいる

と捉えてしまうことです。

学校で用意された授業や公演に参加することは、学生としての学びです。

周囲も同じ方向を目指しているとは限りませんし、そう見えて、実は違っているご家庭も、たくさんあります。

一方、卒業後に仕事を得るためには、誰かから与えられなくても、自分で判断して動く必要があります。

事務所への所属、オーディションへの応募も同じです。

学校で頑張った延長線上に、そのまま仕事があるわけではありません

プロの現場では、

「授業にきちんと出ていました」
「学内公演にたくさん参加しました」
「毎朝、自主練習をしていました」

というだけで、仕事が決まるわけではありません。

また、3歳、4歳からこの世界にいる方々も、しのぎを削っています。

別の分野から少し方向転換して、活動を続けていく方もいらっしゃいます。

俳優、歌手、声優、ミュージカル俳優、ダンサーなど、どの分野を目指す場合でも、

いつまでに、どういった、誰の作品に参加したいのか。
どこで、どのジャンルの仕事を目指すのか。
その規模の、その現場では何が求められているのか。
今の自分には何が足りないのか。どこが伸びしろになりそうか。
どのオーディションを受けるのか。
そのために何を準備するのか。

そして、仕事ですから、責任をきちんと引き受けているか…。

こうしたことを自分で調べ、選び、動き始めなければ、学校生活は充実していても、仕事にはつながりません。

学校は学ぶ場所です。
仕事を自動的に渡してくれる場所ではありません。

また、学校の先生方が全員、現在の芸能・舞台・映像の仕事の得方や、現場ごとの事情を同じように知っているとは限りません。

これは良い悪いの話ではありません。

教育の場と、実際に仕事を獲得し続ける世界では、求められる判断や生活の組み立て方が異なる可能性がある、という話です。

「いろいろやっています」は、準備の証明にはなりません

歌を練習している。
ダンスを習っている。
身体づくりもしている。
学内公演にも参加している。
外部の舞台にも立っている。

一見すると、たくさん準備しているように見えます。

けれど、大切なのは活動の数ではありません。

その経験が、

どの仕事につながるのか。
どの技能を伸ばすためのものなのか。
次のオーディションで何に変わるのか。
目指す現場で、どのように評価されるのか。

まで見えているかどうかです。

私自身、ダンスはプロを目指す水準で取り組んでいましたが、途中から、必要な練習量や質に追いつけなくなりました。

ピアノ、トランペット、打楽器、声楽などにも取り組みましたが、それらは主として演技の助けにするためのもので、演奏家や歌手として仕事を得られる水準ではありませんでした。

それこそ、地元やユースシアターなどで、舞台に立った経験があっても、その舞台で求められる表現と、本人が目指している映像、舞台、ミュージカル、声優、ダンスなどの現場で求められる技能は、同じとは限りません。

学生公演、小劇場、大衆演劇、商業演劇、ミュージカル、映像作品、ライブ、テーマパーク、声優の現場。

たくさんありますね。

規模も異なれば、地域によって特徴があることも。

どれが上で、どれが下という話ではありません。

市場も、観客も、演出も、仕事の得方も、求められる技能も、責任の所在も異なるという話です。

目指している場所と直接関係の薄い経験を増やしても、それだけで目的地に近づくわけではありません。

経験したこと自体を大きく評価するのではなく、

その経験が、自分の目標にどう接続しているのか

を考える必要があります。

特に高校生以上の方は、できることが本来は増えている反面、期待されることも増えているでしょう。

夏休みは「与えられなくても動けるか」が見える期間です

学期中は、授業や発表、公演準備で予定が埋まります。

忙しく過ごしているため、本人も保護者の方も、「よく頑張っている」と感じやすいでしょう。

けれど、夏休みに入り、学校から与えられる予定が少なくなった時、差が見えてきます。

外部のオーディションを探したか。
自分に足りない技能を具体的に見直したか。
学校の外で必要なレッスンを受けたか。
宣材写真やプロフィールを整えたか。
歌唱曲、モノローグ、ダンス動画など、応募に必要な素材を準備したか。
入りたい現場や団体について調べたか。
卒業後の生活と、継続的なトレーニングを両立する方法を考えたか。

誰かに予定を決めてもらわなくても、自分で次の行動を作れるか。

夏休みは、単に時間がある期間ではありません。

学生として学ぶことから、自分で仕事を取りに行く準備へ移れるかが見える期間です。

私自身、習い事気分でなんとなく通っている時期もありましたし、発表会があるからといって頑張っているという本末転倒な、今思うと、親に申し訳ないような態度の時期もあったと思います。

それでもやはり、プロの俳優になる意識があったからこそ、長年続けることができましたし、そのために遊び、友達との付き合い、なんとなく気になっている趣味、学校の部活などはある程度は経験しましたが、時間や量、取り組みの内容を振り返れば、結果的に後回しになっていたと思います。

ですが、今はそれを全く後悔していません。

保護者の方が予定を埋めるだけでも足りません

キッズや若い学生の方の場合、保護者の方がレッスンやオーディションを探し、予定を組んでいることもあります。

もちろん、年齢によっては保護者のサポートが必要です。

ただ、予定がたくさん入っていることと、本人が目的を理解していることは別です。

本人が、

何を目指しているのか。
なぜ、そのレッスンを受けるのか。
何を変えたいのか。
次に何を試すのか。

を少しずつ自分の言葉で考えられるようにならなければ、用意された予定をこなすだけで終わります。

楽しい方が良い、本人が楽しんでいることが重要だ、面白そう、通いやすいということが前面に出てしまうことも。

もちろん続けられる事は大事なのですが、何より目的に近づいているかが重要です。

また、保護者の方がすべてを選び続けると、本人はいつまでも「用意されたものに参加する側」のままです。

プロの仕事では、自分の現在地を知り、必要な準備を選び、自分から動く力も必要になります。

年齢によってはまだ早いと感じるかもしれませんが、やはり考える力は重要になってきます。

私も、テレビや映画の現場などで10代の方、小学生、中学生にお会いすることもありますが、それはそれは皆さん…しっかりしてらっしゃいます。

頑張っているかではなく、近づいているか

本人も周囲も、次のような行動を、実際以上に高く見積もってしまうことがあります。

例えば

毎日練習している。
学校の行事に参加している。
舞台にも出ている。
レッスンにも通っている。

このようなところです。

その努力を否定する必要はありません。

ただし、努力の量だけで安心しないことです。

見るべきなのは、

目指す仕事に、本当に近づいているか。

何をやったかではなく、
なぜそれを選んだのか。
何が変わったのか。
次に何へつなげるのか。

そこまで考えて、初めて準備になります。

学校で頑張った延長線上に、そのままプロの仕事があるわけではありません。

夏休みに入って10日以上。

学校から予定を与えられなくなった今、何を取りに行ったでしょうか。

まだ何も動いていないなら、遅すぎるわけではありません。

ただし、

「夏休みだから、これから考える」
「卒業してから、本格的に始める」
「何年間か挑戦して、だめなら別の道を考える」

と、時間だけを先に置いても、準備は進みません。

まず必要なのは、自分の目標と、現在地と、その間に足りないものを見ることです。

学校で一生懸命やることと、プロになる準備をすることは、同じではありません。

これは本当に異なるのです。

そして、

「いろいろやっています」は、準備の証明にはなりません。

この夏、何を増やすかだけではなく、
何を目指して、何を選ぶのか。

一度、具体的に考えてみてください。

今の自分に何が足りないのか。
何から見直せばよいのか。
なぜオーディションで結果につながらないのか。
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プロフィール

鍬田かおる

演技コーチ/インティマシー・コーディネーター(ディレクター)
演技指導歴20年以上。

各種養成所や研修所等での指導歴を経て、映画スクールやパフォーミングアーツの大学を始め、事務所等でも指導を進める。

英国での演劇教育と20年以上の指導経験をもとに、台本読解、役の準備、身体・声・感情のつながりを扱う。

多様なミュージカル、オペラ、映像、舞台で活躍する歌手や俳優のコーチを務める。

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