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感じているのに伝わらない俳優へ|感情表現が深まらない本当の理由

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俳優がスタジオで台本とノートを使いながら身体と声を見直す演技レッスンの風景

自分では感じているはずなのに、伝わらない。

もっと深くやりたいのに、途中で固まる。
相手を見てと言われても、自分の中にこもってしまう。
セリフが相手にかからない。
もっと表現豊かにしたいのに、毎回ちょっと違うと言われる。
高まりになると、ただ声が大きくなる。
本番が終わると、どっと消耗する。
緊張すると、頭が真っ白になる。

こうした悩みは、珍しいものではありません。

しかもこれは、いい加減にやっている俳優にだけ起きることではありません。


むしろ、真面目に向き合ってきた俳優ほど、ぶつかりやすい壁です。

たくさん考えてきた。
自分なりに感じようとしてきた。
もっと良くしたくて、何度も試してきた。

そうなんです、だからこそ苦しい。

しかも、好きで始めた方が多い世界。

余計に気になります…

だからこそ、うまくいかないと
自分は感情が浅いのかもしれない、
まだ足りないのかもしれない、
と思いやすくなります。

でも、ここで一度見直したいことがあります。

それは、本当に見直すべき場所が、気持ちの量だけなのかということです。

 

感じているのに伝わらないのは、感情不足とは限りません

演技が届かないとき、多くの俳優はまず
もっと感じなければ
もっと深く入らなければ
と考えます。

もちろん、何も感じなくていいという話ではありません。

ただ、感じているのに伝わらないときまで、同じ方向で頑張り続けると、かえって苦しくなることがあります。

たとえば、

感じようとするほど首や胸が固くなる
集中しようとするほど呼吸が浅くなる
熱量を上げようとするほど声だけが大きくなる
相手を見ようとするほど目が強くなりすぎる

こうしたことは、レッスンでも現場でもよく起きます。

このとき問題なのは、気持ちが足りないことよりも、

身体の構え
慣れた反応
通り道の狭さ
全体の使い方

こうしたものが混ざっている可能性です。

つまり、感情の問題だけに見えて、実際には身体と声と反応の癖が、表現の出口を狭くしていることがあるのです。

 

相手を見てと言われても、自分の世界にこもってしまう理由

相手を見て。
自分の中だけでやらないで。
やり取りして。

こう言われたことのある俳優は多いと思います。

でも、ここにも誤解が起きやすいポイントがあります。

相手を見られない俳優は、相手に興味がないわけではありません。
むしろ逆で、うまくやろう、ちゃんと受け取ろう、何かを返そうと思うあまり、自分の中で処理する量が増えすぎていることがあります。

頭の中で起きていることが増えすぎると、身体はそのぶん固まりやすくなります。

すると、視線は相手に向いているようでいて、実際には自分の内側の作業に追われている状態になります。

これでは、相手の存在を受け取りながら変化することが難しくなります。

やり取りが弱く見えるとき、足りないのは気合いではなく、相手を受け取れる余白であることが少なくありません。

 

感じるために考えるほど、演技が止まることがあります

ここで見直したいのは、身体や声だけではありません。
考え方の向きも、演技を止めることがあります。

感じるために考えている。
ちゃんと理解してから動こうとしている。
丁寧にやろうとしている。

そのつもりなのに、結果として動きが止まり、相手よりも自分の内側の処理に意識が向いてしまうことがあります。

良かれと思って、だから、細止められない癖でもあります。

この点は、こちらの記事でも詳しく書いています。

感じるために考えるほど、演技が止まってしまう方へ
https://kaorukuwata.com/thinking-stops-acting/

考えること自体が悪いのではありません。


ただ、考える位置やタイミングがずれると、行動の流れを止めてしまうことがあるのです。

セリフが相手にかからない俳優に起きていること

セリフが相手にかからないとき、滑舌や発声だけの問題にされることがあります。

もちろん、声や言葉の問題が関わることはあります。
ただ実際には、それ以前の段階で、

誰に向けて
何を起こしたくて
どの変化を欲して
その言葉を使っているか

ここが曖昧なまま、ただセリフを言うことに意識が寄っている場合があります。

さらに、身体が固まっていると、言葉は前に出ているようでいて、相手に向かって働きません。

結果として、

ちゃんとセリフは入っている
意味も理解している
でも、相手に届いた感じがしない

ということが起きます。

セリフがかからない問題は、単なる技術不足だけというより、目的、反応、身体の状態が噛み合っていないサインでもあります。

もっと深く感じたいのに固まる俳優ほど、見直す場所があります

真面目な俳優ほど、もっと深くと言われると、内側に潜ろうとします。

でも、深さは、力みや重さと同じではありません。

深くやろうとして、

呼吸を止める
胸を固める
目を強くする
声を押す
動きを狭くする

こうなると、表現は深くなるどころか、変化の幅が減っていきます。

細かい調節が効かなくなるからです。

だから、演出も受けにくい、調整が受け入れづらい…苦しくなりますよね。

たとえば、

ほんの少し相手に寄る
言葉の圧を少し抜く
受け取ってから返す
声色を一段階だけ変える
同じ場面でも反応の濃度を調整する

こうした細かい調節は、固まりすぎた状態ではやりにくくなります。

演技が単調になる。
毎回ちょっと違うと言われる。
本番を重ねると新鮮な気持ちが枯れてくる。

ループにはまっていくことも、多いかもしれません。

こうした悩みも、気持ちがないからではなく、調節できる余地が身体と声に残っていないから起きることがあります。

 

演技は、止まって分かるだけでは変わりにくい

演技は、頭で理解しただけでは変わりにくいものです。

もちろん、整理して考える時間は必要です。
でも、そこで止まったままだと、実際の場では使えません。

相手を前にしたときにどう反応するか。
言葉を発したときに身体がどう固まるか。
受け取ろうとした瞬間に、どこが狭くなるか。

そういうことは、動きながらでないと見えてこないからです。

しかも、ただ同じことを繰り返せばいいわけでもありません。

毎回なんとなくやる。
我流で反復する。
うまくいった気分だけで終わる。

これでは、慣れた反応を強化してしまうことがあります。

必要なのは、少し負荷のかかる条件の中で、検証しながらやることです。

少し難しい。
少しやりにくい。
でも、そのぶん何が起きているかが見える。

その中で、できることを少しずつ増やし、苦手を少しずつ減らしていく。
演技の変化は、そういう積み重ねで育っていきます。

そして、無理に力まなくても文字通り「現れる」ようになっていきます。

高まるシーンになると声が大きくなるだけになるのは、熱量の問題ではありません

感情が高まる場面で、ただ声が大きくなるだけになってしまう俳優は少なくありません。

本人としては、しっかりやっているつもりです。
高まりを出そうとしている。
必死にその場を生きようとしている。

でも、観る側からすると、一本調子に見えることがあります。

これは、感情があるかないかよりも、高まりを扱う手段が限られているからです。

本当に表現が豊かな俳優は、音量だけでなく、

様々な間
視線だけでなく、胸や身体のパーツ、エネルギーを向ける方向
呼吸の様々
視線の微細な変化
声の響き
テンポやリズム
身体のあらゆる変化

こうした複数の要素で高まりを扱います。

ただの興奮、大声だけではないのです。

逆に、通り道が狭くなっていると、高まりがすべて押すことに集まりやすい。

その結果、熱量はあるのに届かない。

せっかくイメージがあっても、なかなかそれが行かせない。
強くやっているのに単調に見える。
終わったあとだけ疲れる。

こういうことが起きます。

 

本番後に燃え尽きる、頭が真っ白になるのも、気合い不足ではありません

本番になると急に飛ぶ。
緊張すると頭が真っ白になる。
終わると一気に消耗する。

こうしたことがあると、メンタルの問題だと思われやすいです。

けれど実際には、本番で起きることに対して、身体と声の側に余裕が残っていないことがあります。

稽古では何とかできる。
でも本番では情報量が増える。
相手も違う。空間も違う。
緊張も加わる。

そのとき、もともとギリギリで成立していたものは崩れやすくなります。

つまり本番で飛ぶのは、弱いからではなく、余白の少ないやり方で成立させていた可能性もあるのです。

これは責めるための話ではありません。
むしろ逆です。

違和感や失敗は、実際に場に立ってやってきた証拠です。
何もしていない人には、こういう種類の悩みは起きません。

だからこそ必要なのは、自分を責めることではなく、見直す単位を変えることです。

また、準備の段階から、変えていけるところはたくさんあります。

 

実際に変化した方のお声にも共通しています

こうした変化は、理屈だけの話ではありません。

実際に、身体の使い方や声の通り道、全体の使い方を見直したことで、表現や響き方が変わっていった方は少なくありません。

たとえば、オペラ歌手の方のお声でも、身体の使い方を見直したことで、声だけでなく表現の伝わり方そのものが変わっていった様子がわかります。

歌手のお客様のお声はこちら
https://kaorukuwata.com/opera-singer-voice-change/

俳優と歌手では仕事の条件は違います。
それでも、感じているのにうまく届かない、頑張っているのに通り道が狭くなる、という問題の根には共通するものがあります。

 

演技を変えたいなら、気持ちを足す前に条件を整える

ここで大切なのは、感情を軽視することではありません。
感情を出すな、ということでもありません。

そうではなく、

固まりすぎないこと
相手を受け取れること
声と言葉が通ること
細かい調節ができること
繰り返しても再現できること

こうした条件を整えることで、感じていることがより届きやすくなる、ということです。

私は長年、俳優や歌手のレッスンで、感情だけを増やそうとして苦しくなっているケースを数多く見てきました。

そこではいつも、努力が足りないのではなく、見直す場所がずれていることが多くあります。

演技を変えたいなら、ただ気持ちを盛るのではなく、その気持ちが届く状態をつくる。
ここを飛ばさないことが大切です。

身体や声を部分修正するだけでは変わりにくい理由

もし今、

感じているのに伝わらない
相手に届かない
本番になると固まる
もっと豊かにやりたいのに調節が効かない

そう感じているなら、問題は一つのパーツだけではないかもしれません。

身体と声を、部分ごとに直すだけでは変わりにくい理由については、こちらの記事でも詳しく書いています。

身体と声が変わらない本当の理由
https://kaorukuwata.com/body-voice-performance/

今回の記事が俳優に特化した話だとすれば、こちらはもう少し広い視点から、なぜ部分修正だけでは足りないのかを整理した記事です。

うまくいかないときは、責めるより見直す場所を変えましょう

演技が思うようにいかないとき、真面目な俳優ほど自分を責めます。

でも、責めても通り道は広がりません。

必要なのは、もっと頑張ることではなく、

どこで固まっているのか
何が狭くなっているのか
どこなら調節できるのか
相手に向かうために何が邪魔しているのか

そこを見直すことです。

今ある違和感は、あなたが雑だから起きているのではありません。
実践してきたからこそ見えてきた課題かもしれません。

そして、その課題は、気合いで押し切るより、構造的に見直した方が変わります。

4月18日土曜12時から14時30分の少人数レッスンで、実際の使い方を見直します

こうした悩みは、読んで理解するだけでは変わりにくいものでもあります。

実際にやってみると、

感じようとするほど固まる
相手を見ようとすると視線が強くなる
高まりになると声だけが大きくなる
細かい調節が効かない

といったことが、自分の中でどう起きているかが見えてきます。

4月18日土曜12時から14時30分の身体と声のセミプライベートレッスンでは、こうした部分を少人数で具体的に見直していきます。

感情を足す前に、固まりすぎない条件を整えたい方。
相手に届く状態を、身体と声の両面から見直したい方。
毎回気合いで押し切るのではなく、調節できる土台を作りたい方に向いた内容です。

詳細はこちらです。
https://kaorukuwata.com/expression-not-face/

演技が届かない悩みは、才能の有無だけでは決まりません

感じているのに伝わらない。
もっと深くやりたいのに固まる。
相手を見てと言われても、自分の中にこもる。

こうした悩みは、才能がない証拠ではありません。

むしろ、やってきたからこそ出てきた違和感であり、次の段階に進むための入口でもあります。

見直すべきなのは、気持ちの量だけではありません。

身体の構え
慣れた反応
声と言葉の通り道
相手を受け取る余白
調節できる全体の使い方

ここが変わると、演技の届き方は変わります。

責めるより、見直す場所を変える。
そのほうが、演技は前に進みます。

 

お申し込みについて

4月の各種クラスのお申し込みをスタートしています。

身体と声のセミプライベートにご参加希望の方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
初めての方で、自分に合うか迷う方も、まずはご相談だけでも大丈夫です。

顔だけ変えようとしても変わりにくい。
声を出そうとしても、かえって力んでしまう。
そういう時は、もっと手前の身体の状態を整理し直すタイミングかもしれません。

4月18日、少人数で一緒に見直していきましょう。

 

この記事をかいた講師: 演技コーチ 鍬田(くわた)かおる

指導歴20年以上。

幼少時から芸能事務所に所属、オーディションを受ける日々。俳優の先生の私塾および桐朋学園演劇科を経て、英国留学中にアレクサンダー・テクニーク指導資格を取得。

ロンドン大学・演劇学校・大学院を経て、20代から、各種養成所や研修所などで指導活動スタート。

俳優、歌手、声楽家、ダンサーへの指導を中心に、映画・舞台・映像現場で活動する実演家のコーチを務める。

映画スクールやモデル事務所での指導の傍ら、ミュージカル俳優や芸能人の個人レッスンも担当。

たんなる感情論や精神論、またどこか1つのメソッドにこだわらず、課題に合わせた指導を進めています。

幅広い知見に支えられた、多角的な視点を用いて、根っこからの指導と、お一人お一人の現場に備えるコーチングも行っています。

さらに詳しいプロフィールはHPをご覧ください。

 

各種クラス及びレッスンのお申し込み・お問い合わせ

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個人レッスンをご希望の方は、ご希望日を添えてご相談ください。

どれが自分に向いているか迷う方も、まずはご相談だけでも大丈夫です。

止まっている原因が見えると、変えられることはたくさんあります。

4月、ここで一歩前へ進めていきましょう。

 

他にもこのような切り口で、俳優や歌手の方、ダンサーの方に役立つ記事をシェアしています。

『動けない』『伝わらない』演技を、身体から変える方法 ─演技力を上げる前に、身体の止め方を見直すべき理由

お役に立てましたら幸いです。

*各種クラス及びレッスンのキャンセルポリシーは、以下に記載の通りです。念のためご一読ください。

https://kaorukuwata.com/class-cancellation-policy/

 

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