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演技が段取りっぽく見えてしまう理由 ― 届かない声と漏れてしまう心の声

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演技コーチからの問題提起です

猛暑にもかかわらず、8月もクラスに参加してくださったみなさま、ありがとうございました。

本日は、つい気になる「モレ」のお話です。

心の声が届かない一方で、なぜか漏れてしまうもの

舞台やカメラ前に立つとき、
「観客に届いてほしい声がなかなか届かない」一方で、
「届かなくていい脳内の段取りや独り言」が思わず漏れてしまう。
そんな経験はありませんか?

私自身、これでたくさん失敗をしてきたような気がします。

というのも、伝わって欲しくない、私都合の心のつぶやきは、つい出てしまい、表情を指摘されたり、動きにダメ出しをされていました。

一方、私が「感じているはず」の内容は伝わっておらず、場合によっては「全然びっくりしたように見えなかった」とか「演技が“段取りっぽい”」と指摘されてがっかりしたものです。

この「脳内対話のモレ」、何とかしたいものです。

 

なぜ段取りが透けて見えるのか

私たちの身体は、心の中の声やイメージに敏感に反応します。
「自分はここから入ってきて、次はここで動いて、このタイミングで、相手を見て、これは重要なセリフだから、しっかり声を出す」と頭の中で唱えてしまうと、その指示が筋肉や表情ににじみ出てしまいます。

特に映像には、起きていることを拡大する作用があります。

まるで顕微鏡で覗いたかのように、細やかな変化、目線の動きからも、「お段取り」が浮き彫りになります。

舞台も、全身から「(そこにいる必然性がなくて)つい何気なく歩きながら探してしまっている」、「(例えば、役として、自分の家に走っていくつもりが)急いで楽屋に向かって行く」様子がバレていることがあります。

 

漏れてほしいのは「人物の心の声」

本来、身体から滲み出てほしいのは、段取りではなく人物としての心の声です。

例えば、よく「サブテキスト」と呼ばれることもある、その場で、役として当然考えているであろうこと、その時、感じていること、です。

本来であれば、こういった「本人の意識の流れ」が通っていれば、それが視線や呼吸、背骨の動き、手先や足先、そして声にも反映されていきます。

しかし、「届けよう」や「伝えなきゃ」取り組むと、これらはモレにくく、ブロックされます。

そして、最悪の場合、そのブロックのためのメッセージが伝わります。

例えば「よし、これはすごく大事なセリフだぞ」

「さて、難しいセリフ、ちゃんと言い切った!」

「今のシーン、なかなか良かったんじゃないかな」

(このブログを読んでいる方に、そのような方少ないと思いますが)まぁ、そういった、「気が散った」、役として、その場にいない内容です。


同じ体の仕組みで漏れるなら、観客に伝わるべきなのは段取りではなく、役の人物としての生きた声だったはず…。

 

リアリティを生む準備とは

と、いうわけで、リアリティのある演技を届けるためには、身体の余計な力みを減らし、呼吸や声の流れをスムーズにしておくことが不可欠です。
そうすることで、脳内の段取りなぞりと確認ではなく、その時、その場所での、人物の思考がシミ渡るようになります。

そういった感覚、体験した瞬間はあるのではないでしょうか。

観客に届くのは、ただ台本に書かれた言葉ではなく、書かれていなかった部分が、書かれている言葉や動きを支えた時、その下に流れている、考えや葛藤、感覚的な体験、固有の意味です。

例えば「(このダメ出しされたセリフは大事だから、はっきり相手を見て、きちんと聞こえるように言わなくちゃ)!」

の代わりに、役の人物にとって、その時、その場所で、「今、緊急なこと」「ここで、重要なこと」に対しての、選択肢の数々やその意味、そして判断です。

 

今日からできる小さな工夫

セリフをいれるとき、ただ音読するだけでなく自分の役の人物は「いま、何が重要なのか」、「ここで、何が実際に緊急なのか」の具体的な想像をたくましくしてください。

その脳内対話が身体に漏れ出すようになれば、観客に伝わるのは段取りではなく、生きた人物の思考(の一部)です。

もちろん、それが誤解されて伝わらないよう、目の動きや指先、足の向き、唇の緊張、声の強さ、息の方向をご自身のスキルやアイディアをフルに活用して、調節してもらうことも、お忘れなく。


舞台や映像での存在感は、このような小さな工夫に見て、実際には私たちが普段やっていることの集まりですから、「脳内対話」によって、大きく変わっていきます。

次の現場で「段取りなぞりが透けてる」状態から一歩抜け出すために、身体と心の整え方を試してみませんか。

そして、この役の人物の意識の流れに、この段取り脳を置き換えていくこと

それこそが、まさに演技のトレーニングの1部でもあり、またプロとして「その時、その場所で、集中する」ということでもあるのです。

 

今年こそ、私と一緒に演技クラスで実際に体験してみませんか?

 

●この記事を書いた人:鍬田かおる 

演技コーチ/インティマシー・コーディネーター(ディレクター)

演技指導歴20年以上。留学中のイギリスにて、アレクサンダー・テクニーク指導者資格を正式に取得後、音楽家、ダンサー、声楽家、歌手、俳優らを中心に、20年以上の指導歴がある。プロ俳優・歌手・ダンサーを中心に、感情と身体のつながりを軸としたレッスンと世界スタンダードの台本、読解及び分析のクラスをはじめ、演技クラスや俳優の個別レッスンを展開中。

各種養成所や研修所等での指導歴を経て、映画スクールやパフォーミングアーツの大学を始め、事務所等でも指導を進める傍ら、多様なミュージカル、オペラ、映像、舞台など幅広い現場で活躍する歌手や俳優のコーチを務める。

詳しい演技指導のプロフィールは、HPのプロフィールページからご覧いただけますと光栄です。

 

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