“落ち着いたら始めます”の不思議
行動を止める魔法の言葉と、その抜け方
意外に(?)まじめにアレクサンダー・テクニークの個人レッスンやムーヴメントのクラスのご案内を季節ごとに出している私ですが、そのたびによく耳にする言葉があります。
「落ち着きましたらご連絡します。」
「ちゃんとやりたいので、落ち着いてから通いたいです。」
「落ち着いたらレッスンお願いします。」
……これ、なぜか本当によく聞くのです。
「落ち着いたら」は、やんわりした断り言葉?
日本語としては丁寧で柔らかい響きですが、私はいつも少し引っかかります。
もちろん、天災や事故、手術や介護、引っ越しなど特別な事情は別です。
けれど、それ以外の多くの場合、「落ち着いたら」という言葉は——
まるで「やんわり先延ばし作戦」のように聞こえてしまうのです。
落ち着いてから、なんて言わないで
率直に申し上げて……僭越ながら。
レッスンに通い始めたり、レッスンへ行くために、落ち着く必要はありません。
同じく、
1年に数回、1回1週間程度のクラスに通うためにも、「落ち着き」は要りません。
むしろ……
「落ち着かないとできない」って、どれだけ大変なことをやろうとしているの?
“今のまま”でいい。落ち着いていなくて大丈夫。
今の状況や、よろしくない癖、先延ばしや伸び悩む自分の能力に
「落ち着き」なんて感じてなくていい。
多少、興奮していても、浮かれていてもいい。
迷っていても、不安でも、ごちゃごちゃしていてもOK。
それらも含めて、レッスンやクラスに出ることで、
ライフスタイルや思考の癖は変わっていきます。
それも学習。
落ち着くために始めていいんです。
「落ち着き」が邪魔をするとき
社会的な意味での“落ち着き”の欠如は困りますが、
自分のワンパターンな行動や、お馴染みのやり方にしがみつくような“落ち着き”は、
成長を止めてしまうことがあります。
アレクサンダー・テクニークの視点で言えば、それは「反応を選べない状態」。
“いつもの自分”に戻ろうとする反射が、変化を妨げてしまうのです。
「落ち着かない人」だった、私の師匠ロビン・シモンズ氏
私のアレクサンダー・テクニークの最初の師匠、ロビン・シモンズ氏。
多才で、情熱的で、快活で、そして——まったく「落ち着き」がなかった(笑)。
テニス!太極拳!アーチェリー!引っ越し!
ベアトリス(奥さま)に花束!観劇!合宿!ギリシャでワークショップ!
毎週毎月そんな調子で動き回り、最終的にはスイスに移住。
その後もアイルランドやロンドンを飛び回りながら、
「やあ、かおる!元気?今、学会に来てるよ!」と突然メールをくれる。
たぶん彼は、「落ち着く」よりも**“動きながら生きる”**人だったんだと思う。
好奇心はすべてに勝る
『好奇心はすべてに勝る』。
これが、いまも私の原点にある言葉です。
落ち着かなくてもいい。
気になって仕方がないなら、それがもう始まりのサイン。
完璧を待たずに動いてみる。
その一歩が、思っているよりずっと多くのものを変えてくれます。

演技コーチ/ムーヴメント指導・演出・振付/IDC認定インティマシーディレクター/STAT認定アレクサンダー・テクニーク指導者/スピーチ&プレゼンテーションコーチングActing Coach/Movement Direction/IDC qualified Intimacy Director/STAT certified Alexander Technique teacher, mSTAT, Movement Teaching/Speech and Presentation Coaching