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台本の読み込みが浅いと言われたら?—プロの演技力はどこで差がつくのか

よくある俳優の悩み

猛暑の中、撮影やリハーサルに飛び回るみなさま、お疲れ様です。

室内でも熱中症になってしまうので、本当にゆとりを持ったスケジューリングを通常以上に考えたいと思っているところです。

さて本日は、何かと俳優だけでなく、演出する側からもお声をいただく

演技が“惜しい”ところで止まってしまうーという点について。

少し、ひもといてみたいと考えております。

また「台本を何度も読んでるのに、演技が浅いと言われる…」

そんな経験のある俳優の方へ、より突き抜けていくプロに求められる “4つの読解力”を解説します。

私自身、

  • 書かれているセリフは読んでいる。

  • 感情も入れているつもり。

  • 舞台上でもミスなくこなしている。

それなのに、何かが足りないと言われる。評価されない。

こんな時代を、学生のときからずっと繰り返していた気がします。

もちろん、演劇科だけでなく、直々に当時、テレビに舞台にお忙しかった俳優の先生からも根気強く教えていただいてました。また、幸い演出家の先生たちにも恵まれていたので、日本でもイギリスでも、いろいろなお話を聞くことができ、感謝しております。

ただ、実際に「セリフは読んでいるし、状況も把握できている」にもかかわらず、読みが浅いと言われてしまうときに何をしたらいいかというところまでは、私もぼんやりしていた記憶です。

もちろん(それなりにですが)「感情も動いていて、なんとなく役の気持ちがわかったような気もして」、やるべき事はやったような気がしちゃっていました。

サボっていたわけでもなく、指導されていなかったわけでもなく、ただ細かい具体的な方法まで、繰り返し、ひもといて、いわば「伴走」してもらう必要があったのが当時の私です。

せっかく現場がうまく回っていても、

「ちょっと違うんだよね」、「悪くないんだけど、もう一回…(と何回もやらねばならない」、「そうだね。だいぶ良くなってきたけど…」

というようなダメ出しをもらい、試行錯誤していた記憶は私にもございます。(今年は、さらに何か指摘される場面が少ないように感じます。具体的なご指摘なくとも、なんとなく呼ばれなくなったり…)

また、こうした悩みは、実は初歩の方と言うよりも、演技経験が増えてきた俳優や歌手の方ほど直面しやすい壁です。

なぜなら、一通りできるからこそ、「それ以上の深みや厚み」が要求されるからです。

これって、スポーツやダンス、楽器の演奏なども同じですよね。期待される方、すでにある程度活躍している方、歴が長い方には当然期待してしまいます。それが人の心。

いわゆる中堅であったり、さらに経験者とみなされる層になると、「できて当たり前」のスタンダードが非常に高いわけです。

これをプレッシャーと捉えるか、チャンスと書き換えていくか、分かれ道かもしれません。

さらに、初歩時代に養成所で習っていたやり方、若かりし頃に見よう見まねで身に付けた方法、なんとなく感覚的にやってきたことのみでは立ち行かない大作に出会ったりもするわけです。

また、監督や演出家に「演技をつけてもらう」つもりはなくとも、それに類似した質問ばかりしてしまう方も、もったいないです。

 

読解が「足りない」と言われる本当の理由

こちらは一般論ですが、多くの俳優が、「読解」を“書かれていることを読み取る”ことだと思い込んでいるように見受けられます。

えっ、私、書いてることおかしいですか?!

そうなんですよ。

「すでに書かれていること」は非常に重要ですから、何度も何度も、目を皿のようにして読んでしまいます。

さらに、セリフを入れるためにも、繰り返し読む必要がありますから、余計「目の前にある文章」にどんどん集中していきます。

しかし、それ自体が問題なのです。

当然、台本に書かれている内容をきちんと読み、理解していたとしても、演技が届かないことはよくあります。

その理由は、書かれていることをもとに、「書かれていない部分」をまるで書かれていることと、同じくらい大切に扱う必要があると言うことです。

これを「可能性を想像する」、「いろんなバージョンを想定する」のように表現される監督や演出家の方もいらっしゃると思います。

 

いわば “書かれていないこと”を埋める作業をせずに、もしくは想像はしているけれど、なんとなくイメージしているだけだと、まだちょっと足りないのです。

俳優に求められるのは、4つの読解力

演技に必要な読解には、実は、次の4種類があります:

  1. 書かれていることから明らかに共有される「事実」

  2. 書かれていることから推測できる「背景・主な感情・関係性・文脈など」

  3. 書かれていないけれど想定できるであろう範囲の「事実」

  4. 書かれていないことから導く「理由や動機の可能性・心理や心象風景の可能性・役の正当化へ」

この4つを明確に区別し、組み立てていく作業が、 プロの俳優に求められている準備です。

たとえば、セリフに「ごめん」とあるとき。

それが「何に対する謝罪か」「どんな関係の中で言っているのか」 「本気で思っているのか」「口先だけなのか」……

これらの要素は台本には“書かれていない”ことがほとんどです。

もちろん、ト書きがヒントになっていたり、前後関係でわかると言うこともあるでしょう。

にもかかわらず、演じる俳優には“何らかの意味を持たせたり”、場合によっては”解釈を絞った形で”、実際にいくつかやってみて欲しいと求められます。

 

バックボーンをつくることで、演技は立体になる

書かれていない部分を想像で埋める。 ただしそれは「感覚で埋める」のではなく、事実と論理をもとにした推測で構築すること。

これが、バックボーン作りです。

これは、演出家や監督がやるべきことだと思ってしまっている方も多いのですが、一緒にやる場合はもちろんありますが、基本的には自分の役の事は自分がある程度、用意しておく方が、スムーズな稽古やリハーサルになると思います。(だって、最終的には自分がうごいて、しゃべるのですから)

言葉や動きの裏に、「なぜそうするのか」「なんのために」という背景があるとき、 演技は観る人の心を動かし、存在感を生みます。

可能性として、また(仮)であっても、そこが人任せで、宙ぶらりんだとボヤボヤした、「当たり障りはないが、刺さりもしない」表情や動き、しゃべりになります。

書かれていないことを丁寧に組み立てる力。

これが、ただ状況から判断するとか、なんとなく日常の延長での感覚任せの演技との決定的な違いです。

ここにリズム、テンポ、重さ、強弱、サイズ、ボリューム…..などを「調節するスキル」が組み合わされた時、的確な演出的な効果や、セリフが出てくる動機や原因、そして役の人物固有の事情や、個別の感覚体験に結びつけていけます。

その結果、演じ手である俳優や歌手の方の魅力も、間接的に伝わっていくことが多いでしょう。

 

●この記事を書いた人:鍬田かおる 

演技コーチ/インティマシー・コーディネーター(ディレクター)

演技指導歴20年以上。留学中のイギリスにて、アレクサンダー・テクニーク指導者資格を正式に取得後、音楽家、ダンサー、声楽家、歌手、俳優らを中心に、20年以上の指導歴がある。プロ俳優・歌手・ダンサーを中心に、感情と身体のつながりを軸としたレッスンと世界スタンダードの台本、読解及び分析のクラスを展開中。

各種養成所や研修所等での指導歴を経て、映画スクールやパフォーミングアーツの大学を始め、事務所等でも指導を進める傍ら、多様なミュージカル、オペラ、映像、舞台など幅広い現場で活躍する歌手や俳優のコーチを務める。

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「まず状況を成立させることが大事」と思っていませんか? 演技を“浅い”と言われてしまうときの見直しポイント

 

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