1. デイヴィッド・テナント主演『マクベス』から学ぶ演技の本質
先日、デイヴィッド・テナント主演の『マクベス』を観てきました。
デイヴィッドは、テレビの ドクター・フー・シリーズでも、人気がありますよね。
私が学生の頃から、いろいろな有名俳優をゲストに呼んだんだり、新進気鋭の演出家が 腕を鳴らすドンマー・ウェアハウスならではの とんがった演出と、 現代解釈が特徴でした。
さらに舞台作品を映画用に撮影し編集して、イギリス国内外に出すという ジャンルも、演劇だけでなく、バレーやオペラでも増えてきたとても良い流れだと思います。みんながみんなイギリスに行けるわけでもなく、劇場に行けるわけでもないので、これは非常に良い傾向だなと思ってます。
さて今回の、現代の映像技術を組み合わせたこの作品は、映像と舞台演技の境界線を揺さぶる試みでした。
今回のカルチャーヴィルによる ブリティッシュシアターライブのページはこちらです
https://www.culture-ville.jp/davidtennantmacbeth
(今回の画像は公式サイトからお借りしました)
初日には日本を代表する翻訳家の河合祥一郎先生と松岡和子先生のトークもあり、シェイクスピアの言葉の力と、 翻訳の問題点、その豊かさ、そして俳優がそれをどう演じるかの奥深さについて考えさせられる時間となりました。
と同時に、 シェイクスピア専門のお二人のトークですから、非常にわかりやすい形で、現代の観客に向けての演出の難しさや、ユニークであろうとするが故に、陥りやすい間違え、拡大解釈の問題など…創作の場に関わる人が常に意識したいポイントがたくさん詰まっていました。
松岡和子先生の指摘の鋭さには、改めてシェイクスピアの奥深さを感じさせられました。ただ鋭いだけでなく、俳優の成長を後押しするような優しさが滲んでいたのが印象的です。
一方、河合祥一郎先生の知的な促しと、朗らかで聡明な進行が絶妙で、俳優として学ぶべき視点を次々と引き出してくれるようでした。まるで俳優の想像力を刺激するようなもので、会場にいる誰もが新たな視点を得たと感じる瞬間がありました。
2. 2. 映像演技 vs 舞台演技|俳優・演出家が知るべき重要ポイント
日本に限らず、それこそシェイクスピアの本場イギリスでも、「映像用の演技ってなんだろう?」 とか、
「舞台用の演技を極めなければ」と言うような言い回しが散見されます。
残念ながら国を問わず、大いなる誤解があるようで、歴史を見ても、素晴らしい俳優たちは 男女問わず、年齢問わず映像と舞台との両方で活躍しておりますし、 実際、「映像用の演技」も「舞台用の演技」も、厳密には存在しません。
どの媒体であっても俳優の基礎は共通しており、それをどう適応させるか、 それぞれの特徴に合わせて調節できるかどうかが鍵です。
そうです、みなさん!
「調節」です。
例えば、今回のように、古典ですと、シェイクスピアの独白(モノローグ)は、観客に語りかけることで成立します。
当時は「 観客いじり」と 同様に、実際の 目の前にいる観客に 語りかけるスタイル、これは、シェイクスピア以外の作家の作品でもありました。これはもう、上演のスタイルとも言えますね。 現代にも1部引き継がれていると思います。
しかし!
今回の『マクベス』では、カメラ目線での独白が多用されていました。
・・・ これはもしかすると、好みが分かれるところかもしれません?
映像ならではの手法 と捉える方も多いでしょうし、 舞台公演の感覚を、映画館で味わうと言う趣旨で考えれば、喜ぶ方も多いかもしれません。
さて、果たして舞台 表現での強みを、映像を通してさらに掛け算にすることができたのか?
俳優として大切なのは、単にセリフの 意味と内容を届けるのではなく、「 その言葉が、いま、どうして、ここで、必要になってしまったのか、 誰が、誰に語るのか」を意識すること。 感覚の世界、感情の世界との融合でもあります。
この違いを理解し、作品ごとに適応できる俳優こそが、 中長期的に、舞台と映像の両方で生き残る存在となります。
また、このように舞台作品が映画館で観られる機会が増えていることは、非常に喜ばしいことです。
イギリスの「ナショナル・シアター・ライブ(NTL)」や、日本の松竹が手掛ける「ニューヨーク・メトロポリタン・オペラ(MET)」の上映など、世界各地の舞台芸術がより多くの人に届く機会が増えています。
ライブ作品を映画館で体験できることは、演劇界全体にとって大きな可能性を広げる動きです。
イギリスのナショナルシアター・ライブのHP /今年も愉快なラインアップが続きます
アメリカ、ニューヨークMet ライブビューイング 2025/名作・超大作が登場です
https://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2024-25/
3. シェイクスピア映画化の難しさとケネス・ブラナーの挑戦
シェイクスピア作品の映画化は、演出家や俳優にとって常に挑戦です。
古典の名作に慣れているとされる名優ケネス・ブラナーですら、 かつて『恋の骨折り損』では、観客との対話を再現しようとしたカメラ目線の多用が議論を呼びました。(ケネス・ブラナーは、こちらも素晴らしい俳優エマ・トンプソンの前の旦那さんですね)
私、今マイルドに「 議論を呼びました」 と日本語で書きましたが、 当時、私の母校などでは、避難の的でした…
さて、意図は明確でも、それが映画というフォーマットに適応できているかは別の問題になります
映像だからこそ可能な演出があり、逆に舞台ならではの 強みがある。
どちらかに偏りすぎると、作品のバランスが崩れることがあります。 また観客が冷めてしまうことも考えられます。
しかしながら、どんな演出手法を用いるにしても、、基礎にあるのは 生きた人間の、その場での生き生きとしたセット力のある「素晴らしい演技」、 一人ひとりの「身体から、声から発せられる交流」からです。
演出のスタイルがどうであれ、俳優が役を深く理解し、その瞬間に生きていることが最も重要なのだと、 どんな作品を見ていても思います。
4. 台本読解・演技レッスン|俳優・演出家が今すぐ取り組むべきこと
✅ 現場で求められる「映像と舞台の演技の違い」を学ぶ
✅ 台本読解の力を磨き、役の人物として一貫した演技をする
✅ 抑える演技、エネルギーのコントロールを意識する
「演技と演出の可能性を、一緒に深めていきませんか?」
台本読解の基本については、こちらの記事でも整理してありますので、ぜひ参考にしてください
40年の演劇歴で鍛えられた「台本を受け取ったらまず何をすべきか」7ステップ
俳優としての「うてば響く身体」、「自然に感じてうごく」でお悩みの方には、こちらの記事が役立ちます
5. 2月22日(土)・23日(日) 特別クラスのご案内
📅 2/22(土):身体性を高めるアレクサンダー・テクニーク
役の人物として自然に動くための身体の使い方を見直し、不要な力みを取り除く。
📅 2/23(日):首都圏対面・台本読解と想像力を引き出す演技メソッド
シェイクスピアに限らず、あらゆる台詞に奥行きを持たせるための実践的なアプローチ。俳優や演出家の方はぜひ対面での実践クラスにチャレンジしてみてください。
「演技の奥深さを語り合える場をつくることが、俳優と演出家にとって大きな財産になる。
だからこそ、2月のクラスでは、あなたの視点をさらに一歩前に進めるためのヒントを提供したい。」
🎭 自分の演技や演出に、もう一度新しい視点を加えてみませんか?
🎟 詳しくは 2月22(土)/23(日)2日間クラス https://kaorukuwata.com/acting2025febclassat/
からご覧ください。
- この特別クラスは少人数制のため、席が埋まり次第締め切ります。興味のある方は、今すぐお申し込みください
- このクラスでは、現場で即活かせる台本読解のスキルと今すぐ差をつけ始めるための身体のつかい方を2日間で体験できます
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![](https://kaorukuwata.com/wp-content/uploads/4824C94B-2C10-446B-B3DC-60890BDBAF06.jpeg)
演技コーチ/ムーヴメント指導・演出・振付/IDC認定インティマシーディレクター/STAT認定アレクサンダー・テクニーク指導者/スピーチ&プレゼンテーションコーチングActing Coach/Movement Direction/IDC qualified Intimacy Director/STAT certified Alexander Technique teacher, mSTAT, Movement Teaching/Speech and Presentation Coaching
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