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シーンスタディ入門:目的・テーマ・身体から学ぶ俳優の基礎力

カテゴリー:
シーンスタディー

シーンスタディ入門 ― 発表会から見えた学び

2015年、ブログを書き始めて10年を迎えた頃に振り返りとしてまとめた記事を、いまの視点でまとめました。

当時は養成所や専門学校、大学など複数の教育現場を掛け持ちして指導していた時期で、そこで繰り返し浮かび上がった課題を整理したものです。

これから学ぶ俳優にとっても、特にお若い方には、役立つ内容になるはずです。

発表会は、単なる成果披露の場ではなく「学びを可視化する場」です。

人に見せる前の段階だからこそ、俳優にとって大切な課題が浮き彫りになります。

今回は発表会を通じて見えた3つの大きな学びを整理してみましょう。

私自身、養成所の安易な発表会の繰り返し、特に1年目での開催を良いとは思った事は1度もありません。

しかしながら、どうせやるのであれば、2年目は私も「プロの照明やプロの音響に依存しない」、とにかく学びの中間地点を実際にやってみると言うことで、設定しておりました。

名作が多いので、登場する。面白い。これらの本ぜひ読んでみてくださいね。

 

『二十日鼠と人間』(ジョン・スタインベック)― 目的と方法を取り違えない

スタインベックの名作『二十日鼠と人間』は、友情や人間の尊厳を描いた物語です。

映画にも、舞台にも、繰り返し取り上げられています。


しかし、シーンスタディの中で「ジョージの目的」が単に「レニーにネズミを捨てさせたい」と解釈されてしまったことがありました。

それだと、もったいないですよね。

これは「目的」ではなく「方法」にすぎません。

俳優が考えるべきは「何を達成したいのか」という目的です。またそれすらも、作品全体を通した時は、全体における目標になるものです。

となると、ネズミを取り上げる行為は、ジョージが望む未来や守りたいもの(友情や生きる希望)につながっているのです。ここから、結果的に感情は動きます。順序は逆では無いんですよ。

シーンを読むときは、行動の奥にある目的を掘り下げることが欠かせません。

ここをすっ飛ばして、何とか状況成立しようとがんばっても、どんどん矛盾が生じていき、浅くなってしまうものです。

 

『椿姫』(アレクサンドル・デュマ・フィス)― テーマを捉える力

19世紀パリの社交界を舞台にした『椿姫』。

オペラやバレエにも取り上げられていますよね。

華やかな恋愛劇に見えて、実は社会的制約や病、犠牲といったテーマが重く横たわっています。

ある発表では「娼婦との恋愛」が主題だと単純に捉えられていました。
しかし、作者が描こうとしたのは「愛と社会的制約の衝突」「人間の尊厳をかけた選択」です。

そもそもの設定から見直すことをしてみないと、例えばもし実際に公演を打つとして、なぜ今この時代に、現代のお客様にお見せしたいのかがなくなってしまいませんか?

登場人物の行動や選択を、職業や状況のラベルだけで捉えるのではなく、作者の問いを想像すること。これがテーマに近づくために必要な力です。

「役の人物を断罪しない」これも重要な学びです。

 

『ブーリン家の姉妹』(フィリッパ・グレゴリー)― 身体の「表情」を持つ

『ブーリン家の姉妹』は、宮廷を舞台に愛憎や権力闘争を描いた歴史大作です。

こちらも繰り返し映画やドラマになってますね。

あるシーンでは、姉妹の複雑な感情がぶつかり合うはずなのに、俳優の身体が「目的不明の動き」に終始してしまうことがありました。

これは明らかなスキル不足ですが、、そして自己洞察や感覚のトレーニングによって解決できるものです。

演技に必要なのは「セリフを言う」こと以上に、「身体が何を望んでいるか、どこから来てどこへ向かっているか」を、個人的に、見えるようにすることです。
やりたいこと、避けたいこと、恐れていること…。
それらを身体が表情として伝えるとき、観客は人物の生きた欲求を感じ取ります。

身体がうまく使えたとき、「具体的」になり、その具体は、不特定多数の私たちを動かします。

一方、悪意はなくとも、身体が無意識の癖にあまりにも、ずっと支配されていると、動きは役の目的を裏切ってしまいます。

半ばよくわからないミックスのメッセージを送られている感じ。何を信じていいかわからず、何がお約束事なのか、ためらいが生じます。

だからこそ、俳優は自分の身体の状態を客観的に感じ取り、選択的に使えるようになる必要があるのです。

これは基礎的なトレーニングですが、初歩ではありません。

幅広く活躍する、芸歴の長い俳優や歌手の方でも、みなさん身体のあり方、つかい方のクセ、コンディションにすごく気を遣っていらっしゃいます。

 

まとめ ― シーンスタディで鍛えられる3つの力

今回の発表会から見えたのは、シーンスタディを通じて俳優が磨くべき3つの力です。

  • 目的と方法を区別する力(行動の裏にある欲求を掴む)

  • テーマを捉える力(表面的な出来事ではなく作者の問いに近づく)

  • 身体の表情を生み出す力(役の欲求を身体を通じて伝える)

シーンスタディは、作品を通じて自分の理解を試し、修正し、次のステップへ進むための訓練です。

もちろん楽しいですし、やりがいもありました。

しかし、一つひとつの作品から具体的に学び、発表会を単なる披露の場ではなく「次の挑戦への出発点」として活かしていきましょう。

その時、どんどん力がついていくものなのです。

 

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