最近は現場の演技プランやオーディション対策も腕が鳴る、指導歴20年+演技コーチの鍬田かおるです。
さて、今日は私も常に悩んでしまっていた…
「セリフをうまく言わねば」の落とし穴|リアリティある演技へ
今日のお題がこちらです。
稽古場やオーディション前の楽屋で、よく耳にする会話があります。
「セリフがなかなか難しくてさ…」
「どうやったらこのセリフ言いやすくなるかな」
「もっと感情を乗せれば、ちゃんと内容も聞こえるはず…」
――でも、この“あるある”の発想にとらわれている限り、演技は嘘っぽく見える危険があります。
なぜって、
セリフをどう言うかばかりを気にしてしまうと、観客やカメラに映るのは「役を生きる人物」ではなく、「台本をこなそうとする俳優」だからです。
そうなんですよね、つい頑張りが透けてしまう…恐ろしいことです。
セリフ中心ではリアリティは届かない
「もっと自然に言えないかな」
「声の出し方やセリフの頭を工夫すれば、伝わるはず」
…こうして“セリフに集中”するほど、逆に言葉は浮き上がってしまいます。
だって、実際の私たちは、普段、決してそんなふうに考えていないですから。
必要なのは、セリフを「どう言うか」ではなく「なぜ言うのか」。
つまり役の状況を【自分ごと】として生きる視点です。
特に、現代の観客が求めているのは技巧的で巧みなそれっぽいセリフ回しではなく、その人物がそこに存在しているというリアリティ。
残念ながら、リアリティはただの「言い方の工夫」からは生まれません。
自分ごと化がリアリティをつくる
「この役、結局なんでこのセリフを言うんだろう?」
その問いかけを避けて練習してしまうと、どうしても段取りっぽい演技に見えてしまいます。
大切なのは【自分ごと化】。
相手との関係性、欲求や恐れ、いま直面している問題やその障害を、自分の行動として整理することです。
・相手にとって自分はどういう存在か
・いま何を望んでいて、何を避けたいのか
・この瞬間に立ちはだかる障害は何か
こうしてシーンを整理すれば、セリフは「言いにくい言葉」ではなく「出てくるしかない言葉」へと変わっていきます。
セリフを言いやすくしようと思うと、簡単になってしまうから、余計自分の「腕の見せ所」なくなりますよ。
これも多くの俳優や歌手がついウッカリ、失敗するところです。
繰り返せる仕組みが俳優を強くする
現場でよく耳にするのは「今日はうまくいった」「昨日は全然だめだった」という声。
誰しも体調の変化や、環境の影響もありますが、あまりにも自分だけの感覚や気分に頼った演技は、日によって揺らいでしまうのです。
ここを整えていくのが、プロの仕事でもあり、息の長い活躍の秘訣でもあります。
必要になるのが「繰り返しても揺らがない仕組み」。
監督や演出家、それこそ作家の意図をなるべく取りこぼさずに受け止め、相手との関係を行動に落とし込み、再現性を持たせること。
これができれば、現場で信頼される俳優に一歩近づけます。
●お知らせ
9/27・28 少人数制モノローグクラスで実践
今月のモノローグクラスでは、「セリフをうまく言わねば」という発想から抜け出すための整理法を扱います。
セリフを自分ごと化し、行動と関係性に根ざした形に落とし込む。
そのプロセスを少人数制で、一人ひとりにフィードバックします。
9月27日(土)・28日(日)10:00–13:00|東京
いろいろやってきたはずなのに、うまくいかない、もっと活躍したい、自分の課題をレベルアップさせたいなど、次のステップを探している方におすすめです。
まとめ
セリフが嘘っぽく見えるのは、才能や感情が足りないからではありません。
「どう言うか」から「なぜ行動するのか」、そして「どうしてこのような言葉が必要になっているのか」へ。
視点を切り替えることで、演技の説得力も存在感も劇的に変わります。
さらに詳しく知りたい方は、下の関連記事もどうぞ。
次の現場に向けて、あなたの演技を「リアリティーで届くもの」に磨き上げましょう。
●この記事を書いた人:鍬田かおる
演技コーチ/インティマシー・コーディネーター(ディレクター)
演技指導歴20年以上。留学中のイギリスにて、アレクサンダー・テクニーク指導者資格を正式に取得後、音楽家、ダンサー、声楽家、歌手、俳優らを中心に、20年以上の指導歴がある。プロ俳優・歌手・ダンサーを中心に、感情と身体のつながりを軸としたレッスンと世界スタンダードの台本、読解及び分析のクラスをはじめ、演技クラスや俳優の個別レッスンを展開中。
各種養成所や研修所等での指導歴を経て、映画スクールやパフォーミングアーツの大学を始め、事務所等でも指導を進める傍ら、多様なミュージカル、オペラ、映像、舞台など幅広い現場で活躍する歌手や俳優のコーチを務める。
詳しいプロフィールは、HPのプロフィールページからご覧いただけますと光栄です。
こちらの記事もお役に立てれば幸いです。
演技が段取りっぽく見えてしまう理由 ― 届かない声と漏れてしまう心の声
台本読解については、こちらの記事もご覧ください。
実際、昔からもちろん芸能事務所や養成所などで私自身も言われてきたことですが、「整理する」ことが大事です。
ただ、想像を広げるだけでもなく、また国語の解釈を細かく、まるで博物館のように永遠に調べ物をすることでもありません。
台本読解のスタンダードは、「書かれていることから書かれていない部分を推測する」力を育てます。「描かれている事実から、まだ描かれてない部分への膨らませる」力も養っていきます。
また「自分以外の他者を理解する」、「物語を構造から見直してパフォーマンスに活かす」という意味で、ジャンルを問わず使える実践的な方法です。
私自身、日本の芸能事務所、俳優の先生の演劇教室、各種養成所、大学の演劇科を経て、イギリスでも、そしてオーストラリア、アメリカでも学んできました。
毎年アップデートさせたメソッドで、特定の流派にこだわることなく、現代の演技に必要なもの、目の前の方々に実際に役立つものを、組み合わせて提案するよう心がけております。
まずご紹介になりますが、ご参考になれば幸いです。
40年の演劇歴で鍛えられた「台本を受け取ったらまず何をすべきか」7ステップ
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演技コーチ/ムーヴメント指導・演出・振付/IDC認定インティマシーディレクター/STAT認定アレクサンダー・テクニーク指導者/スピーチ&プレゼンテーションコーチングActing Coach/Movement Direction/IDC qualified Intimacy Director/STAT certified Alexander Technique teacher, mSTAT, Movement Teaching/Speech and Presentation Coaching
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