本日は自分自身もドッキリしたことのある、悪意は無いけれども、じわじわと侵食する、このよろしくない傾向についてです。
その話題に詳しい。
周囲に同じような症状の方がいた。
自分も似た経験をしたことがある。
ネットでもかなり調べた。
それでも、医者ではない人が診断できるわけではありません。
なぜなら、見えているのは症状の一部であって、原因の特定も、優先順位の判断も、本当に必要な処置の見極めも、別の仕事だからです。
似ている例を知っている。
自分にも思い当たる節がある。
調べた知識もある。
それだけで見立てができるなら、医療はもっと単純なものになっているはずです。
演技や歌唱など、表現の訓練でも、これとよく似たことが起こります。
自分で困っていることは分かる。
過去の失敗も思い出せる。
本や動画で知識も増える。
でも、それで自分の状態を正確に見立てられるとは限りません。
見立てを間違えると、直し方までずれます。
その結果、頑張っているのに変わらない、修正しているつもりなのに戻る、ということが起こります。
問題は、努力不足ではありません。
最初の見立てです。
また、自分で気づけていることと、気づけてないことの間にギャップがあることも。
やっかいですよね。
症状が分かることと、原因が見えていることは別です
ある程度、自分で困っていることに気づけるのは、大事な力です。
声が出にくい。
感情が動かない。
セリフが浮く。
緊張で固まる。
相手と噛み合わない。
本番になると急に崩れる。
こうした違和感を自覚できること自体は、悪いことではありません。
むしろ、変わる入口として必要です。
ただ、ここで多くの方が混同しやすいことがあります。
困っている症状が分かることと、その原因を正しく見立てられていることは同じではありません。
高い声が出ないから発声の問題だと思う。
感情が浅いから気持ちの問題だと思う。
不自然だから言い方の問題だと思う。
こうした判断は、一見もっともらしく見えます。
でも、実際には原因が別のところにあることは少なくありません。
声の問題だと思っていたら、身体の固さや息の流れが先だった。
感情の問題だと思っていたら、相手への行動が曖昧だった。
言い方の問題だと思っていたら、台本読解の段階で目的が立っていなかった。
こういうことは珍しくありません。
見えている現象に、すぐ名前をつけることはできる。
でも、その現象が何から来ているのかまでは、別の話です。
また、度合いの感じ方の人それぞれ。
これは本当に自己申告の危うさを浮き彫りにしています。
自分の経験だけでは、見立ては足りません
過去に似たことで困ったことがある。
周囲にも同じような悩みの方がいた。
だから、自分にも同じことが起きている気がする。
この考え方自体は自然です。
人は誰でも、知っている例に当てはめて物事を理解しようとします。
ただ、それだけで見立てを決めてしまうと危なくなります。
似た症状を知っていることと、今の自分に何が起きているかを正しく判断することは別だからです。
同じように見えても、原因が違うことはあります。
逆に、別々の問題に見えていたものが、実はひとつの癖から来ていることもあります。
表現の訓練では特に、ここがずれやすいです。
声が届かない。
感情が浅い。
セリフが浮く。
緊張で固まる。
身体が力む。
こうした現象は、それぞれ別の問題に見えるかもしれません。
でも実際には、ひとつの身体の使い方、ひとつの思考の癖、ひとつの準備不足が、全部に影響していることがあります。
自分の経験だけで判断すると、表面に見えているものを順番に直そうとしてしまいます。
その結果、根本が変わらないまま、対処だけが増えていきます。
知識が少し増えた状態は、かえって危ないことがあります
ネットで調べる。
動画を見る。
本を読む。
情報を集める。
このこと自体は悪くありません。
むしろ、自分で考える材料を持つことは大切です。
ただし、少し知識が増えた状態は、ときどき厄介です。
言葉を知る。
症状の名前を知る。
それらしい説明ができるようになる。
すると、自分ではかなり見えている気がしてきます。
でも、その時点で見えているのは、あくまで断片であることも多い。
全体の構造、優先順位、土台がまだ見えていないのに、分かったつもりになってしまうことがあります。
医療でこれをやると危ない。
だから、本来は専門家の見立てが必要になります。
(アルゴリズムの恐ろしさもありますし、そもそも論文や原著までたどることが難しい場合も)
さて、演じること、歌唱やダンスなどの表現でも同じです。
知識が少し増えたことで、自分なりの説明はうまくなる。
でも、全体の状態そのものが正しく見えているとは限りません。
だからこそ、情報収集だけで停滞が解けないことがあります。
また、自分ができることと、教えられることが別の場合も多いです。
私も長年ダンスなどやってきて、ある程度動いたり、それなりのレベルではできるのですが、教えることはできません。ましてや伸び悩んでいる方、初心者の方に教える(これが1番難しい)ことは、1人ではとてもできません。
真面目な人ほど、見立てがずれたまま努力を積み上げてしまいます
我流で頑張っている方が伸び悩むのは、怠けているからではありません。
むしろ逆です。
真面目だからこそ、遠回りしやすいことがあります。
自分で原因を考える。
自分で修正しようとする。
真面目に練習を重ねる。
この姿勢自体は立派です。
ただ、最初の見立てがずれていた場合、そのあとの努力もずれたまま積み上がってしまいます。
もっと強く声を出す。
もっと感情を足す。
もっと細かく考える。
もっと意識する。
もっと練習量を増やす。
でも、問題がそこにない場合、努力するほどズレが深くなることがあります。
ここが苦しくて、もったいなく、時間がかかってしまうところ
だから、変化が薄いときに疑うべきなのは、まず努力量ではありません。
何をどう見立てているかです。
1人で学ぶことが悪いのではなく、修正の機会が少ないのです
1人で考えること自体は大事です。
表現の仕事では、自分で考える力がないと深まりません。
誰かに言われたことをそのままなぞるだけでは、役も歌もセリフも薄くなります。
ただし、1人で全部判断し続けることには限界があります。
なぜなら、自分では正しいと思って続けていることが、実は少しずれている場合、そのズレを止める視点が外から入らないからです。
すると、
数週間
数か月
場合によっては数年
同じ場所をぐるぐる回ることがあります。
本当にもったいないのは、努力不足ではありません。
修正の機会が少ないことです。
1人で頑張れることと、1人で全部判断できることは別です。
ここを混同すると、真面目な方ほど長く停滞しやすくなります。
専門家の意見を入れる価値は、答えをもらうことではありません
専門家に見てもらうことを、どこかでズルのように感じている方がいます。
自分でできない人が頼るもの。
そこまでしなくてもいい気がする。
まだ自力で何とかすべきではないか。
そう感じる気持ちは分かります。
でも実際には逆です。
本気で変わりたい方ほど、
どこがずれているのか
何を優先すべきか
今のやり方で合っているのか
どこが土台なのか
これを早めに確認します。
これは、答えを丸ごともらうことではありません。
努力を省くことでもありません。
努力の方向を整えることです。
何を増やすかより先に、何をやめるか。
何から直すか。
どこを先に整えるか。
そこが見えた方が、前に進みやすいのは当然です。
だから専門家の意見には意味があります。
自分では見えにくいズレを、外から見てもらう。
曖昧だった優先順位を整理する。
何を土台にするかを明確にする。
そのために、レッスンがあります。
レッスンに来る意味は、気合いを入れ直すことではありません。
見立てを整えることです。
我流を押し通さないことには価値があります
表現の世界では、ときどき「自分の感覚を信じること」と「我流を押し通すこと」が混ざってしまいます。
でも、この二つは同じではありません。
自分の感覚を使うことは大事です。
ただし、その感覚をどう検証するかは別です。
我流を押し通すと、外からの視点が入るたびに、自分を守る方向に行きやすくなります。
でも本来必要なのは、防御ではありません。検証です。
自分の感覚を持ったまま、
外から見たらどう見えるのか
相手とやり取りすると何が起きるのか
準備として何が足りないのか
何を変えると結果が変わるのか
そこを確かめる必要があります。
だから、我流を押し通さないことには価値があります。
誰かに全部合わせるという意味ではありません。
思いつきや自己判断だけで走り続けない、という意味です。
そのために、クラスがあります。
私自身、演技だけでなく、ダンス、それこそトレーニング、また、語学も数多くの専門の先生方のお世話になってきました。
プロ及びプロを目指す方が、クラスに参加する意味は、単に回数を増やすことではありません。
自分ひとりの見立てを絶対視せず、他者とのやり取りの中で検証することです。
その中での発見、そしてスキルアップだけにとどまらない、考え方も更新や現在地の確認も重要だと感じます。
真面目な人ほど、頑張る前に見立てを整えた方が早いです
真面目な方は、課題を見つけるとすぐ努力します。
これは大きな強みです。
でも、見立てが曖昧なまま努力すると、
量は増えるのに変化は薄い
直したつもりでもまた戻る
一時的によくなっても安定しない
違う場面になるとまた崩れる
こういうことが起きやすくなります。
必要なのは、頑張るなという話ではありません。
頑張る前に、何を頑張るべきかを整えた方がいい、という話です。
順番が整うと、やることはむしろ減ります。
でも、変化は深くなります。
声を足す前に、身体の使い方を見直す。
感情を足す前に、行動を明確にする。
言い方を変える前に、相手との関係を読み直す。
本番対策を増やす前に、準備の型を整える。
こうした見直しが入るだけで、停滞はかなり減ります。
実際、10年、20年とそれなりに活躍しつつも、いざレッスンのお申し込みをされた時、実はモヤモヤしていたとおっしゃる方も多いです。
1人で考える時間が長くなっているなら、見立てを整理しに来てください
頑張っているのに、なかなか変わらない。
自分なりに直しているのに、また同じところに戻る。
何を優先して直せばいいのか分からない。
そんな状態が続いているなら、努力不足ではなく、見立ての問題かもしれません。
何を増やすかより先に、
何が起きているのか。
どこがずれているのか。
何を土台に整えるべきか。
そこが見えるだけで、努力の質は大きく変わります。
専門家の意見を入れることは、弱さではありません。
レッスンに来ることは、甘えではありません。
治療では無いから、できないから来るんじゃないんです。
もっとできるようになりたくて、さらに楽しみたくて、快適になりたくて、作品に貢献したいから、レッスンやクラスを使っていくんですよ。
自分では見えにくいズレを整理し、努力の方向を整えるための行動です。
また、我流を押し通さないことも、負けではありません。
クラスに参加することは、自分の感覚を他者とのやり取りの中で確かめ、修正の精度を上げるための選択です。
1人で考える時間が長くなっているなら、まずは見立てを整理しに来てください。
そして、我流を押し通すのではなく、クラスの中で検証しながら進めてみてください。
自分だけの判断で頑張り続けるより、いま何が起きているのかを明確にした方が、上達はずっと早くなります。
2026年4月のクラスの締め切りが近づいています。
もっと活躍する2026年後半、仕事を通じていろいろな感覚を体験し、作品にも貢献していく、そのためのクラスです。
4月開催|オンライン台本読解+スタジオ演技実践クラス。読んだだけで終わらせない3日間
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枠には限りがあります、オーディションや現場の準備、差し迫った課題や中長期的なビジョンがある方ほど、お早めのご相談をお勧めしています。
この記事を書いた、講師プロフィール 鍬田かおる
指導歴20年以上。
ロンドン大学ゴールドスミス校卒。Royal Central School of Speech and Drama 修士課程ムーヴメント科修了。
イギリスSTAT認定アレクサンダー・テクニーク教師。日本演出者協会会員。
俳優や歌手の技術と身体の理解を統合し、現場で使える“交流のある演技”へ導く専門家。大学や映画スクールの講師を務める傍ら、個人レッスンで一人ひとりの強みを伸ばし、基礎力からアップさせる本格的なプロのトレーニングを中心に活動しています。
小学生から中堅、そして芸能の舞台や映像で活躍する俳優や歌手の方のアクティングコーチであるだけでなく、プロを目指す若手の育成も務める。
IDC認定インティマシー・コーディネータ(ディレクター)として映画や舞台の現場も入ります。
これまで触れてきた演技のなんとかメソッドや、〇〇式に疑問を抱かれた方へ
あなたの違和感は、もしかすると「役」にとってのリアリティーではなかったからかもしれません。
また文化的にも、ヨーロッパで過ごした20代がある私、そしてバイリンガルである私が言うのもなんですが、日本を中心に活躍してらっしゃる方、日本語を母国語として多くの時間を過ごしてる方に向き不向きという傾向はある気がいたします。
物語、演技と言うものが、文化に根ざしている以上、やはり言語の壁もあり、また生活様式や基本的なコミュニケーションのスタイルが大きな誤解をむこともございます。これはクラシックバレエやオペラの輸入、様々な業種での変遷を見ても、お分かりいただける課題だと思います。。
不可思議な単発ワークショップやらの誇大広告に疑問を持たれた方、なんちゃらメソッドばかりのプロモーションに違和感を持たれた方、ご自分のせいだと責めないでくださいね。
今の時代は、日本にいながら、日本語で、演技をブラッシュアップし、アメリカだけでなく、世界各地の様子や(ありがとう同期や先輩たち)業界の流れを汲みながら、着実にスキルアップしていく方法はございます。
ぜひ、ご自身の課題や方向性、モヤモヤしている部分がありましたら、クラスや個人レッスンのお問い合わせフォームからお送りください。
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演技コーチ/ムーヴメント指導・演出・振付/IDC認定インティマシーディレクター/STAT認定アレクサンダー・テクニーク指導者/スピーチ&プレゼンテーションコーチングActing Coach/Movement Direction/IDC qualified Intimacy Director/STAT certified Alexander Technique teacher, mSTAT, Movement Teaching/Speech and Presentation Coaching




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