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「間接的な準備」が演技力を劇的に伸ばす3つの理由

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演技コーチによる課題やQ&Aのブログです

残暑にはカレーを!演技指導とインティマシー関連のミーティングが続く演技コーチ 鍬田かおる です。

ほんと業界のみなさんの体力には脱帽です。

さて、本日は私の専門でもある学習の仕組みや秘訣についてです。

当たり前と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私も20年近く、様々な団体での指導を経て、また自分自身も振り返ると改めて感じるところがあります。

 

「間接的な準備」が演技力を劇的に伸ばす3つの理由

実は、爆発的な力を生む掛け算の話です。

直接的な準備と間接的な準備。

この組み合わせがうまく回っていると、いろんな感覚や想像も磨かれていくので、忘れないようにしたいところです。

・自分の役割もわかっている

・描かれている状況も把握している。

・セリフも入って、相手とも、やりとりが成立しているはず…

そんな、一見、問題がないように見える、そんな時にこそチェックしてほしいのが「間接的な準備」です。

ここでは、その重要性を次の3つの理由から解説します。

 

1つ目の理由 演技の土台を強化する

直接的な準備は、セリフを入れる、段取りを覚える、役の態度や気持ちを想像する、セリフやジェスチャーを研究するといった形に見えて、“表に見える練習”です。いわば、誰しもがやらなければ仕事にならない部分ですね。

それに対して間接的な準備は、もっと根っこの部分。

例えば、もともとのご自身と言葉との付き合い、「方法」の語彙です。

さらに言えば、色や形、リズム感覚やテンポへの調整力、感覚的に、ご自分に影響を与えているものを育てることにあたります。

例えば、この作品に関係あるから読んだわけではないけれど印象に残っている本。

わざわざ調べに行ったわけではないけれど出会った絵画や彫刻。

役のために始めたわけではないけれど、日常的に親しんできたスポーツやダンス、楽器演奏や歌など….

こうした感覚体験が、演技の土台を強く支えてくれるのです。

例えば、私の演技と演技指導のV師匠は、幅広くさまざまなダンスの経験があります。その動きと感覚の鋭さから、的確な俳優のコーチングのエクササイズを生み出しており、俳優の身体的な特徴を掴むのにも役立っていると思います。

文字に書いてみると、当たり前ですが、これを意識的に「使いたいときに」結びつけて、生かせるかどうか、ここはトレーニングの要にもなります。

想像力がたくましいと自分で思っているが、いざ台本を渡されると、身近な人の心象風景しか思い浮かばない… .これでは困ります。

「体験した」「試したことがある」だけではもったいなく、使いたいときに「引き出せる」類推力でもあるので、味方につけるとほんとに良いなとひしひし感じます。

だからこそ、中期・長期的に準備できる性質もあって、間接的な準備は安定したパフォーマンスの基盤になります。

 

2つ目の理由 柔軟に対応できる力を育てる

現場では、セリフの変更や演出の追加、思いがけないトラブルや嬉しいインスピレーションも次々に起こりえます。

直接的な練習だけに頼っていると、予期せぬ変化に対応できず固まってしまうことがあります。

ひどい方をすれば、要は、本当の意味での準備ができていなかったということです。

身内の例で恐縮ですが、私のダンスの師匠の一人、M氏は、複数の打楽器の演奏ができます。これは彼の躍動感であったり、音楽を聞く耳を育てていると実感しています。実際、音響機材にトラブルがあっても、曲なしで踊り切ることができたという事件がありました。

間接的な準備を積んできた俳優や歌手は、役やシーンを多角的に理解しているため、いざという時に突破できる柔軟性を持っています。

長年にわたり耕してきた固有の感覚やご自身の語彙が引き出しとなり、演出家や監督の求める新しい提案に即座に応じられるのです。

しかも、調節できる。

これが継続的な活動につながりやすくなっています。

準備が最近、「直接的・間接的」のどちらかだけに偏っていないか。

限られた時間内であっても、ときどき見直すことで、柔軟な対応力を養うことができます。

 

3つ目の理由 表現の深みとリアリティを生む

間接的な準備は、単なる知識の補強ではなく、表現の深みを育てます。

印象に残った美術作品、デザイン、工芸品、身体を通して得たリズム感、スポーツなど、他ジャンルの体験。

そのすべてが役や歌の背景に厚みを与えます。

わざわざ狙わないでも、ヒントになったものが、後から振り返ると目に入って来ていた、もしくはありがたい縁があったという体験が多い方もいらっしゃるのではないでしょうか。

観客が「本当にそこに生きている人だ」とか「フィクションなのに、信じられる」感じる瞬間は、こうした見えない準備からも影響を受けています。

狙って集めたわけではないけれど、日常で耕してきた感覚や経験が、リアリティを持った表現に結びついていくのです。(だからといって犯罪や不幸な事件を求めることは推奨しておりません。)

時間の経過とともに定着したり、また掛け算となって膨らんだり、

その方ご自身のライフスタイルのいろいろな部分と絡み合うので、間接的な準備は演技や歌の説得力を高めるために欠かせません。

あえて恐ろしいトーンも書くならば、インプットなしのアウトプットはありえないということです。

 

まとめと次のステップ

直接的な準備と間接的な準備。

この二つの掛け算で相乗効果が生まれます。

片方だけでは到達できない表現の深さがあり、両方を意識することで「対応力がある」「表現に厚みがある」と信頼される俳優・歌手へと成長できます。

特に、舞台公演や映画の撮影、ドラマシリーズなど立て込んでいると、どうしても休息や家族とのお時間、いろいろな制限もあると思います。

だからこそ、私は声を大にしてお伝えしています。

今日からできる小さな一歩は、練習前にご自身の癖を防いだり、また興奮や呼吸を整えること、さらに印象に残った体験をメモすること。もちろん絵でも構いません。

15分でもいいから、読書する、運動する。

積み重ねが大きな力となり、現場でのさらなる強みにつながっていきます。

他にも、台本の読解や演技の紐解きについては別のリールやQ&Aでも発信しています。お役に立てたら嬉しいです。

 

●この記事を書いた人:鍬田かおる 

演技コーチ/インティマシー・コーディネーター(ディレクター)

演技指導歴20年以上。留学中のイギリスにて、アレクサンダー・テクニーク指導者資格を正式に取得後、音楽家、ダンサー、声楽家、歌手、俳優らを中心に、20年以上の指導歴がある。プロ俳優・歌手・ダンサーを中心に、感情と身体のつながりを軸としたレッスンと世界スタンダードの台本、読解及び分析のクラスを展開中。

各種養成所や研修所等での指導歴を経て、映画スクールやパフォーミングアーツの大学を始め、事務所等でも指導を進める傍ら、多様なミュージカル、オペラ、映像、舞台など幅広い現場で活躍する歌手や俳優のコーチを務める。

詳しいプロフィールは、HPのプロフィールページからご覧いただけますと光栄です。

 

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