雨でロケが難しい季節…!
雨の日には、雨の日の過ごし方を心がけたい演技コーチ 鍬田かおる です。
本日は、頭ではわかっていても、うっかり流されがちな傾向…感情について、です。
ジャンルを問わず、また様々な場面でひょっこり顔を出すものなので、お役に立てれば嬉しいです。
感情を出す=伝わる?──その思い込みが、演技を止めているかもしれません
「まずは気持ちだよ、ちゃんと気持ちが出せなきゃ!」
「感情が強ければ強いほど、しっかり伝わる」
「感情を爆発させれば観客の心に届く」──そんなふうに思い込んでいませんか? それ、実は演技の落とし穴かもしれません。
セリフもある、動きもある、感情もある。
なのに「なんか違う」と言われる──
それは、あなたのがんばり不足ではなく、 「演技として伝わるための準備」が、まだ身体に入っていないだけかもしれません。
「感情を出す」だけじゃ、足りない理由
まず前提として、私たちは、日常の生活で「感情を出そう」、「気持ちを伝えなきゃ」と働きかける場面が、少ないこと。
ともすれば「感情をあらわにしてはいけない」、「気持ちがバレると困る…」ということもあるのではないでしょうか。
また、現実の世界でも、実際に感じてる以上に「もっと伝えなきゃ」と力が入りすぎてしまうこともありますし、反対に、「(伝わったら困るので)感情はなるべく抑えよう」と試みることもあります。
本来は、この部分も、役の人物バージョンでやりたいところ。
文字にすると、明らかなのですが、それでも、熱心さや真面目さから、またサービス精神やプレッシャーから、頑張りすぎてしまう方も。
そうすると、例えば、
・実際に感じているサイズより大きなものを“出そう”としていませんか?
・時代や、地理的な環境が違うのに、現代の自分に合わせた価値観で、スピードや強さを整えてしまってはいませんか?
・演出に応えようとするあまり、自分の身体や呼吸、声や目線といった身体的なリアリティーが後回しになっていませんか?
いろいろな要因が重なり合って、動機や意図がぼんやりしたまま、 「気持ちをセリフに乗せる」「込める」という、 普段私たちがほとんどやっていないことをしてしまう。
その結果、呼吸が不自然になり、 身体がこわばってしまう。
たとえば、オーディションで「気持ちを込めよう」と力んでしまい、結果としてセリフが聞こえづらくなったり、表情が固まってしまったりする例はよくあります。
つまり、変化が伝わるどころか、逆に届かなくなってしまうのです。
逆も然りで、誇張したくないとか、しらじらしくなりたくないとか、大きくしたくないという理由で、ただ「ぼそぼそとつぶやいて」しまう。わざとらしく出そうとしたくないからといって、単に「中身がうごめいていない」まま、目標や目的を設定しない。
こちらも本末転倒です。
これ、どちらもあなたが演技に向いていないわけではありません。 ただ「演技として成立する仕組み」が、まだ身体に入っていないとは言えるかもしれません。
“伝わる”には、準備できる「仕組み」がある
感情を爆発させれば伝わる──そう思っていた時期、私にもありました。
でも演出家や先輩に言われたのは:
- 「強いけど、なんか伝わらない」
- 「気持ちは感じるけど、それでどうしたいの?」
- 「パワーはあるけど、なんかズレてる」
- 「うまい時あるんだけど、ピークじゃないところがよくわからない」
というような、非常にまとめたものでした。
そうなのです、“感情を出す”だけでは不特定多数には伝わりません。
その上、役の人物が何らかの事情があって、大泣きしたり、つい声を荒らげたり、瞬発的に爆笑したり、それこそがなったり、嗚咽したりする部分…これは数分しかありません。
映画や舞台だったとして、残りの2時間は何をしてるんでしょうか?
たとえば、ある俳優の例── 彼は「怒ってる場面」となると、つい、声を荒らげてしまう。役の人物が声を荒らげると言うよりも、フラストレーションが溜まって、勢いがついて、声を大きくするという感じ。
じゃあ、声を大きくしないで「怒る」となると、なかなかうまく進まず、 毎回怒鳴る・睨む・しかめっつら・所作が乱暴になる、というあまりにも表面に出すぎた場面もありました。
しかし、感情は目的に向かっていて、いろいろな事実から変化していくものである、そして必ずしも、感情を強く出そうとがんばることが、結果的に、気持ちの変化や本人の背景、行動の意図や同期につながってはいないのだと納得すると、直接的ではないが、間接的な準備に時間をかけるようになりました。
そこから、「伝わる」レッスンを重ねるうちに、 「怒りのきっかけとなる行動」とその背景、「台本の構造と演出の狙い」と自分のリアリティーを整理したところ、出そうとがんばらなくても、 声も静かなトーンでも、観客がつい引き込まれるような怒りや憤りがにじみ出ていくようになりました。
この演出を強く願ったり、直接的に、ただ気持ちを出そうとがんばるのではなく、間接的かもしれないが、人物像を深めて、また「自分ごと」にしていくプロセスが、現代のリアルでイキイキとした演技の準備につながります。
だからこそ、説明演技にならず、あたかも実際にいる人間のように(場合によっては、わざとそれらを消すことで)、作品の世界を作っていけるのです。
だから涙も出る、直接狙わなくてもつい笑ってしまう、気づいたら鳥肌が立っている、すごいタイミングで冷や汗が垂れた…というようにリアリティーを伴っていくのです。
演技の“仕組み”は、才能だけではなくトレーニングで育ちます
「感情があれば、自然に出る」 「センスのある人だけができる」 ──そう思っていませんか?
演技の“仕組み”は、よくわからない才能論ではなく、「トレーニング」で身につけられます。
・台本に描かれている事実から、想像をたくましく働かせつつ、動きながら
・自分の、身体に呼吸に超え、、感覚、想像、記憶、知性、といったあらゆる部分を使って
・繰り返し再現できるよう精度を高めていく
・繰り返しつつも、調節ができるように、感覚を磨き続ける
・目的の設定や目標を変えずに、またセリフや所作を変えずに、役の人物として「行動」しながら、周囲と調整を図っていく
…..やること、たくさんありますね。
(だからこそ、やらなくていいこと、やっても効果がないこと、やるとマイナスなことは減らしたいです)
仕組みを体得すれば、 “感じるだけで出る”ではなく、 伝わるために”選べる”俳優になります。
一方、感情を“出す”ことを、演技のゴールにしてしまうと、 実は届かないまま自己満足で終わることもあります。
感情を解放して使えるようにしておくことと、実際に調節できること、効果を周囲とすり合わせることの両立が必要です。
演技に必要なのは、 「自分ごとでいられる仕組み」。
この直接的じゃないかもしれないが、「伝わる」ための準備をする、そのために例え間接的であっても、多角的に作品と役という他人にアプローチするためにも、
どうしても、性質上「自分」を使うところからスタートします。
▶ 演出家から求められるレベルの再現性が可能になり
▶ 現場での安心と信頼が生まれ、
▶ 観客にも自然と伝わるようになる
そのためには、無意識でやっているかもしれないけれど、役には活かしたい部分、これまでなんとなく発揮してこなかったけれど、本当は使える部分も育てたいところです。それこそ、様々なジャンルや役がありますし。
私のレッスンでは、まさにこの“仕組み”を丁寧に身体に入れていきながら、得意を増やし、苦手を減らし、感覚を育てていきます。
・感情の爆発に憧れすぎている方
・とにかく感情を出さねばと、つい身体に余計な緊張を走らせがちな方
・「気持ちが伝わらない」とフラストレーションがたまりがちな方
いきさつはさておき、「感情が動いていく」ために必要な準備をし、違いを体感していただきたいとクラスやレッスンでは願ってます。
「気持ちになっちゃう」というプロセスももっと大事にされて良いのではないかと日々感じます。
◾️6月「シーンの鉄則」と演技のクラスのお知らせ
6月22日(日)10:00〜14:00に開催されるクラスでは、この“仕組み”をテーマに、少人数制のグループクラスを実施します。
実際に多くの俳優や歌手の方々が「今まで何となくやっていた演技が、手応えのあるものに変わった」、「なんだ、出そうとしなくてもなるじゃん!」と語ってくれています。
一緒に「伝わる演技」の手応えを掴んでみませんか?
●この記事を書いた人:鍬田かおる :
演技コーチ/インティマシー・コーディネーター(ディレクター)
演技指導歴20年以上。プロ俳優・歌手・ダンサーを中心に、感情と身体のつながりを軸としたレッスンを展開中。映画スクールやパフォーミング圧の大学を始め、多様なミュージカル、オペラ、映像、舞台など幅広い現場で指導。
詳しいプロフィールは、HPのプロフィールページからお願いします。
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演技コーチ/ムーヴメント指導・演出・振付/IDC認定インティマシーディレクター/STAT認定アレクサンダー・テクニーク指導者/スピーチ&プレゼンテーションコーチングActing Coach/Movement Direction/IDC qualified Intimacy Director/STAT certified Alexander Technique teacher, mSTAT, Movement Teaching/Speech and Presentation Coaching
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