ちょっと辛口モード、新年度に、「効く」記事をぜひどうぞ。
売れたいなら、遅いままはマズい
台本をじっくり読んでいる。
役のことも真面目に考えている。
それなのに…実は準備に毎回かなり時間がかかる。
この状態を、丁寧だとか、深いとか、真面目だとか、良い意味で受け取っている俳優は少なくありません。
でも、売れたいなら、そこは一度冷静に見た方がいいです。
遅いままなのは、味ではありません。
美徳でもありません。
少なくとも、仕事が増えていく俳優の状態ではありません。
これ、もしかしたら俳優や歌手に限らないかも。
映画、ドラマ、舞台、配信作品などに次々と呼ばれる俳優になりたいなら、今の自分に必要なのは、もっと長く悩む、1人で抱え込むことではありません。
例えば、台本や資料が、ある程度の速さで読んで理解できること。
短時間で役の輪郭、特徴がつかめること。
複数の打ち合わせ、リハーサルなど作品が重なっても、崩れずに応答していけること。
そちらです。
実際、仕事が増えてくると、いつも台本や資料が手元にある状態になります。
私自身、伴走している複数の俳優や歌手の方の作品、また振付業のほうの作品もあるため、ドラマや映画、舞台など並行してみていることも多いです。
次の作品の準備をしながら、今やっている作品も進める。
役を切り替える。
稽古や撮影に合わせて優先順位をつける。
限られた時間で読み、限られた時間で立ち上げる。
そういう処理が前提になります。
だから、質だけでは足りません。
しかも、この時代、ますます速度も必要です。
ここで言いたいのは、速くやれ、雑でいい、とにかく効率化しようという話ではありません。
本当に必要なのは、必要なところを早くつかむ力です。
この場面で何が起きているのか。
この人物は何を変えたいのか。
相手との関係はどう動いているのか。
どこが緊急で、どこが核なのか。
そこを早く拾える俳優ほど、現場で強いです。
これがホントの効率化、最大限に効果を発揮すると考えてもいいかもしれません。
遅さを美化していると、仕事量に耐えられません
一つの台本に長く向き合うこと。
一人の役に何日も苦しむこと。
準備に時間をかけること。
それ自体が全部悪いわけではありません。
でも、それをそのまま実力だと思い込むのは危ないです。
時間をかけたことと、仕事ができることは別だからです。
現場が求めているのは、時間をかければ何とかなる俳優ではありません。
この俳優になら任せられる、と思える俳優です。
その昔、私も、締め切りギリギリまで時間をかけて、デザインや絵を仕上げるダメな学生でした。今思えば、そのほとんどは、他のことをしたくなかった、そして自分の気が済むようにしたかったような印象です。
役を任せられる、とは、雰囲気があるとか、気持ちが入るとか、それだけではありません。
短時間でつかめる。
大きく外さない。調節が効く。
複数の作品が重なっても崩れにくい。
修正にも対応できる。
その安心感です。
そして、その安心感は、才能っぽさよりも、対応能力の高さから生まれます。
掛け持ちできる俳優が売れるのではありません。
掛け持ちに耐えられる処理水準の俳優が、先に信頼されるのです。
現場がある俳優ほど、普段から整えておいた方がいい
だからこそ、現場が入ったらレッスンはもういらない、とはなりません。
むしろ逆です。
現場がある俳優ほど、日ごろから整えておくこと、素早く台本の内容を深める読み方、限られた時間内に、役の特徴をつかみ、提案する立ち上げ方、今の自分の状態に合った声や身体の使い方、切り替えの精度を、普段から整えておいた方がいい。
現場は、整えられる場所でもありますが、基礎を一から育て直す場所ではありません。
もちろん、現場のたびに学べることはあります。
でも、それはおまけみたいなものだと私は思ってます。
現場では締切も、段取りも、相手も、条件も決まっています。
どうしても、落ち着いて試せる量には限界があります。
いろいろな事情で、わからないまま時間だけが過ぎることもあります。
だから、俳優にとってクラスやレッスンは、困った時だけ駆け込む場所で終わらせない方がいいのです。
調子が悪くなってから、慌てて行く。
大きくつまずいてから、久しぶりに来る。
現場がなくて不安になった時だけ、ふと思い出す。
それはそれで大事なのですが、どうしても対症療法になりやすい。
本当にもったいないのはここです。
クラスやレッスンは、治しに行く場所ではありません
俳優がクラスやレッスンを使う意味は、何かを治してもらうことだけではありません。
レベルアップです。
ブラッシュアップです。
精度を上げ続けることです。
イギリスでは、査定がある俳優組合に入っていると、特定のレッスンが割引で受けられるような制度がありました。(今もあるのかな?)
もっと早く読めるようになる。
もっとズレに早く気づけるようになる。
もっと相手に対して具体的に動けるようになる。
もっと短時間で立ち上げられるようになる。
もっと疲れにくく、何かあっても崩れにくくなる。
こういう力は、困ってから一気に身につくものではありません。
日々の積み重ねで育ちます。
これ、スポーツやダンス、楽器の演奏や語学も同じですよね。
しかも、俳優の仕事は、できるようになったら終わりではありません。
現場が変われば、相手も変わる。
作品が変われば、求められる質も変わる。
年齢や立場が変われば、任される役の重さも変わる。
だから、継続して整える習慣がある俳優ほど、長く強いのです。
続けている俳優は、いざという時だけ強いのではありません
継続してクラスやレッスンに来ている俳優は、何か大きな問題が起きた時だけ助かるわけではありません。
普段から、読み方の癖を修正できる。
準備の甘さに早めに気づける。
声や身体の無駄な緊張を見直せる。
現場で増えた課題を、そのまま放置しないで持ち帰れる。
自信を持って、のびのび作品に没頭できる。
何か起きても、慌てずに、自分のベストを尽くして納得していける。
つまり、崩れてから戻すのではなく、崩れにくい状態を育てているのです。
この差は、数ヶ月後よりも、数年後に大きく出ます。
なんとなくやっている俳優と、継続的に調整している俳優では、同じ年数が過ぎても、中身がかなり変わってきます。
ちょっと恐ろしいけれど、楽しみでもありませんか?
本気で仕事を増やしたいなら、学びも生活の中に入れた方がいい
仕事として俳優を続けたいなら、クラス参加やレッスン受講も、気分で決める特別なイベントにしない方がいいと思います。
美容院に行く。
身体を整える。
定期的にメンテナンスをする。
仕事道具を点検する。
それと同じように、自分の読解、演技、声、身体、準備の質を整える時間を、生活の中に置いておく。
この感覚の方が、実はずっと現実的です。
売れたら学ばなくてよくなるのではありません。
売れたいなら、売れた後にも耐えられるやり方を、先に日常に入れておく必要があります。
一つの役に悩み続ける自分を、美化しない
一つの役に延々と苦しむこと。
長く悩んだこと。
準備に時間をかけたこと。
それ自体を美化しないことも大切です。
時間をかけたことと、仕事ができることは別です。
もちろん、丁寧に向き合う時間は必要です。
でも、仕事として信頼される俳優に必要なのは、丁寧さだけではありません。
必要なことを見抜く速さ。
整理する力。
試して修正する柔軟さ。
再現する安定感。
その土台があるからこそ、深さも現場で生きます。
継続参加は、一部の特別な俳優だけの話ではありません
これは、特別にストイックな俳優だけの話ではありません。
むしろ、何をどう続ければよいかわからない俳優ほど、生活の中に学ぶ場所を持っておいた方がいいです。
一人でやっていると、どうしても自己流が固まりやすい。
何年も続けているのに、なぜか変わらない。
現場では何となくこなしているけれど、どこか頭打ち感がある。
そういう時こそ、単発で気合いを入れるより、継続できる形を持つ方が強いです。
月に一度でも、定期的に読解を見直す。
少人数のクラスで実際に試す。
声や身体の状態も含めて調整する。
そういう積み重ねが、派手ではなくても、確実に差になります。
だから私は、現場がある俳優にもクラス参加を勧めています
現場が忙しいからこそ、全部を一人で抱え込まずに、定期的に整える場所を持っておく。
台本読解を整理する時間。
読んだことを演技に接続する時間。
声や身体の使い方を見直す時間。
これらを、困った時だけではなく、ブラッシュアップのために使ってほしいと思っています。
私自身、いくつかのレッスンに、常に通っています。師匠たちとの仲ももう、10年、20年代。同期や先輩方にも支えられ、ありがたい気持ちでいっぱいです。
クラスやレッスンは、できない俳優が行く場所ではありません。
もっと仕事を任せられる俳優になるために使う場所です。
できないから行くところじゃないんです。
もっとできるから、行くんですよ。
今のうちに、売れた後にも崩れにくい土台を
理想の未来が、たくさんの作品に呼ばれることであるなら、今鍛えるべきなのは、読解の深さだけでなく、読解の速さと再現の安定です。
もちろん、売れることだけが目標ではありませんし、いろいろな目的があると思います。
しかし、継続的な学習は、いろいろな意味で人を豊かにしてくれます。その土台は、追い詰められた時だけでは育ちません。
普段から整える。
普段から試す。
普段から修正する。
普段から積み上げる。
その習慣が、俳優としての信頼をつくっていきます。
現場がある時も、現場がない時も。
一回ごとの気分ではなく、仕事を続けるためのライフスタイルとして。
クラスやレッスンを、そんなふうに使っていける俳優は、やはり強いです。
台本読解と実践を、単発ではなく積み上げたい俳優へ
私のクラスでは、台本を読んで終わりにせず、演じるために何を拾うのか、どう整理するのか、どう行動に変えるのかを具体的に扱っています。
また、読解したことを実際の演技につなげたい俳優には、少人数で試せる実践の時間も用意しています。
困った時だけ来るのではなく、普段から整え、磨き、仕事の精度を上げていきたい俳優にこそ、使っていただきたい内容です。
今のやり方のまま何とかし続けるのか。
それとも、売れた後にも崩れにくい準備の仕方を、今のうちから育てていくのか。
その違いは、少しずつ、でも確実に積み上がっていきます。