「がんばってるのに、うまくいかない」
そんなとき、必要なのは“気合”より“地図”かもしれません
真面目な俳優さんほど、こんなふうに感じてしまう瞬間があります。
「頑張ってるのに、なんか進めてない気がする」
「言われたことは全部やってるのに、結果が出ない」
「気持ちはある。覚悟もある。なのに、何かが違う」
その原因を、根性や才能のせいにしてしまう前に。
一度、“登山”にたとえて、ご自身の今いる場所と学び方のルートを見直してみませんか?
登ってるつもりで、実はぐるぐる
演技で遭難状態に入っているかもしれない……
努力しているのに、ずっと同じ課題でつまずいている感覚。
「またこの注意か」「前にも同じことで止まった気がする」
それは、もしかしたらぐるぐる同じところを回ってしまっている状態かもしれません。
登っているつもりで、実は同じ場所を旋回しているだけ。
本人は前に進んでいる感覚があるので、気づきにくいのです。
でも、少しだけ立ち止まって振り返ってみると、
「前とまったく同じ場所で止まってるな」と気づくことがあります。
本人には自覚がないまま、現場で出されるダメ出しも、似た内容ばかり。
自分なりには成長しているつもりなのに、なぜか突破できない。
それは「努力が足りない」のではなく、「見えていない構造」がある場合が多いのです。
たとえば:
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感情を“出す”ことに集中しすぎて、相手役や文脈が飛んでいる
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歌の技術を磨くばかりで、聴く人に届く身体の使い方が置き去りになっている
-
毎回違う演出家に合わせて自己流を微調整していて、軸が育たない
同じ場所でぐるぐるしているように感じたら、それは「もう一段上の構造」に目を向けるタイミングです。
ナビが古い/地図が違う/そもそもルートが崩れてる?
演技や表現の世界は、変化のスピードがとても早い分野です。
数年前の常識や通用していた型が、
今の現場では“通らない”ものになっていることもあります。
・ナビが古いままアップデートされていない
・自分の使っている地図と目的地が合っていない
・道そのものが崩れている(=環境や求められるものが変わっている)
そうしたことが、努力の“空回り感”を生んでいる場合もあります。
たとえば「泣ける=すごい演技」という時代は、もう終わっています。
繊細で、伝達可能で、何度でも再現できる演技が、今の現場で求められるクオリティです。
「感情を爆発させる演技」では、もう通用しない場面がある
「感情が動けばOK」
「泣けたから合格」
昔はそんな評価軸が主流だった時期もありました。
でも今は、より繊細に、より文脈的に、より伝達可能に──
つまり、再現性のある演技が求められるようになっています。
感情を「出す」ことが目的になると、
それは独りよがりな演技になってしまう可能性があります。
大切なのは、相手に伝わる構造として組み立てられているかどうか。
その準備こそが、信頼される俳優になる道です。
「またその注意」は、成長の“螺旋階段”かもしれない
一見同じような注意を受けているように感じても、実は別の角度から、より高度な要求をされていることがあります。
たとえば:
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「声がこもってる」と言われた新人時代と、
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「もっと身体全体で音楽を伝えて」と言われる中堅の時代
これは、見た目は似た注意でも、求められている解像度が違うのです。
演技も歌も、感覚だけで向き合うと、同じ注意にしか聞こえないことがあります。
でも、自分がどこに立っていて、何を求められているのかが見えてくると、それは「成長の螺旋階段」の途中であると理解できるようになります。
地図を持たずに登山していない?
準備と選択の質が、結果を変える
勢いや一時の感情に任せて、なんとなく山に入る。
それがどれだけ危険かは、登山に置き換えればよくわかります。
・登るつもりもなくふらっと来た人
・何も装備を持たずに来た人
・「この人についていけば何とかなる」と思ってついて来ただけの人
どれも、途中でつまずきます。
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台本の読み方を「感情に乗るかどうか」だけで判断している
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言われた演出にその場で合わせるだけで、根拠や軸を持たないまま動いている
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「気持ちがあれば伝わる」と思っているが、実際は相手に届いていない
どれも、一見“正しそう”に見えますが、ルートが見えていない状態の登山と同じです。
実際の現場では、こうした“準備不足のツケ”が、もっとも厳しく表れます。
「沢に降りるな」──楽な方向は、時に危険
本当に登るべき方向とは逆に、
**一見歩きやすく、下りやすい方向(=沢)**へ流されてしまうことがあります。
具体的には:
・“通りやすそうな演技”を選ぶ
・自分を守るための過剰な自己演出
・人目を気にしすぎて“無難”に逃げる
これらは、初めは楽に感じるけれど、
長期的には抜け出しにくい“危険地帯”になることが多いのです。
- 無難に見える演技を繰り返してしまう
- 指摘されないように振る舞うことが目的になってしまう
- 「通りやすさ」や「好かれる方向」を優先してしまう
表面的な甘いささやきに、うっかり乗ってはいけません。
遭難していませんか?
そのまま進むのは危険かもしれません
努力しているのに、状況が悪化している。
新しい課題に進めていない。
周りのフィードバックも、ずっと同じ。
それは、気づかないうちに“遭難状態”に入っている可能性があります。
このまま進むのは危ない。
でも、焦って引き返すこともできない。
そんなときこそ、「立ち止まって、場所を確認する」ことが必要です。
“がんばり方”を変える必要があるというサインかもしれませんよ。
迷ったら「上」へ──視点を高く取ろう
登山でも、道に迷ったときに「上に出る」「尾根に出る」と
状況が見えるようになります。
同じように、演技や学びも、
迷ったときには**“目の前の課題”から少し離れて全体を見る視点**が必要です。
・本当にやるべきことは何か
・そもそも、なぜこれをやっていたのか
それを再確認することで、
同じ道でも、進み方が変わってきます。
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そもそも、何を目指してこの道を歩いてきたのか
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今やっていることは、その目的に本当に向かっているか
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この先に、自分はどんな表現を届けたいと思っているのか
ここをくっきり、はっきり、言葉にするなり、他人に伝えられる形にしてみませんか。
「えー、またこの台本?」=初歩の戯曲はありません
例えばですが、シェイクスピアの「夏の夜の夢」は世界のあちこちで、様々なレベルの、年齢も異なる学生も上演します。翻訳もありますので、それこそ世界各地で、プロも上演します。場合によっては英語で上演する会もあるでしょう。
「初歩の戯曲」「素人向けの台本」などと言うものは実は無いのではないかと思います。
たとえ子供向けの本であっても、プロがいろいろな形で掘り下げること、テーマをあらわにすること、プロフェッショナルなスキルを使って、レベルをアップさせていく事は可能です。
つまり、もとになる台本に初歩向けのものがあるわけではなく、
誰に向けて、どんなレベルで、誰が、何のために、どんな考えや意図をもって、映像作品にしたり、舞台公演にしたりするのかということです。
一見繰り返しのように見える同じ台本を扱うにしても、大幅に変化はつけられます。
台本そのものに初歩向けのものがあるとか、学生限定の作品があるというように考えないでください。
自分一人で地図を描かない
ガイドの存在が必要なときもある
自力で頑張ることは素晴らしい。
でも、自分一人では見えないこともあります。
登山にガイドがいるように、
俳優にも**「道を見失ったときに信頼できる人」**が必要です。
それは、演技コーチかもしれないし、信頼できる指導者や仲間かもしれません。
どんなに経験を積んでも、
「今の自分の位置を確認する」という作業は、一人では難しいことがあります。
演技コーチや指導者は、単に「答えをくれる人」ではありません。
今どこにいて、どこに向かっているかを一緒に確認し、整理してくれる存在です。
一人で迷い続けるよりも、誰かと一緒に地図を広げてみること。
それが、次のステージに進む大きな一歩になることがあります。
ルートは、状況によって変わっていい
目的地を変えるのではなく、“登り方”を変える
進んできた道を、見直すのは勇気が要ります。
でも、それは“今までの努力を否定する”ことではありません。
むしろ、それを活かすために、
最適なルートへ乗り換えることが、プロフェッショナルの判断です。
真面目で努力家な人ほど、
「いまさら方向転換なんて…」と思ってしまうかもしれません。
でも、ルートは変わってもいいのです。
目的地が見えているなら、“登り方”を変えてもかまわないのです。
一度決めた道を途中で変えることに、抵抗がある方も多いでしょう。
でも、ルートを変えることは、“過去の努力を無駄にする”ことではありません。
むしろ、それまでの経験を活かして、より適切な方向へ進むための判断です。
まとめ:今どこにいるのか、見えてますか?
「がんばってるのに結果が出ない」
「もうずっと止まってる気がする」
「頑張る方向が合ってるのか不安」
そんな方へ。
もしかしたら今は、地図を広げて確認するタイミングなのかもしれません。
努力が報われないのではなく、
その努力の“方向”と“装備”がズレてきているだけかもしれません。
今こそ、次の一歩を考えるチャンスです。
必要であれば、私がガイド役になります。
ご自身の今いる場所を、
一緒に確認してみませんか?

演技コーチ/ムーヴメント指導・演出・振付/IDC認定インティマシーディレクター/STAT認定アレクサンダー・テクニーク指導者/スピーチ&プレゼンテーションコーチングActing Coach/Movement Direction/IDC qualified Intimacy Director/STAT certified Alexander Technique teacher, mSTAT, Movement Teaching/Speech and Presentation Coaching