忘年会も増えてきましたね、おかげさまでありがたいご縁に恵まれて、2025年も嬉しい出来事ばかりでした。
俳優や歌手の方だけでなく、スタッフの方々にも大変よくしていただいたので、感謝の気持ちでいっぱいです。
さて、本日は質問にも多いセリフとその裏側のお話です。
セリフは入っている。リアクションもしている。
必要な動きも問題ない。
それでも「なんだか演技が薄い」「感情が届いてこない」と言われた経験、ありませんか?
演技経験のある方ほど、こうした“見えにくい壁”にぶつかります。原因のひとつは、セリフの外側――つまり、「時間」と「空間」にあるかもしれません。
セリフは、数ある選択肢の中のひとつ
セリフは「その場で、相手に、今、言う」と決めた選択肢の一つです。
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他に何を言うこともできたのか?
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なぜその言葉が選ばれたのか?
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どのような空気の中でそれを発したのか?
そうした“選ばなかったものたち”も含めて想像して「自分ごと」にしていくと、セリフやうごきに説得力や質が生まれます。
これがどうしても片方になってしまいやすい。
なぜならセリフは書かれており、実際に実行される所作もト書きに書いてあったり、明らかだからです。
明らかなことを実行する方が、まだ明らかでない部分を見える形や聞こえる形にする、よっぽど気が楽です。
広い方をすれば、根拠があったとして、書かれている事実に基づいていて、文脈に合っていたとしても、「可能性」を行動に起こすことには、1種の勇気といいますか、決断力といいますか、選択を迫られます。
セリフの“前”と“後”が演技を支える
「今言っている言葉」だけを正確に再現しようとする演技は、どうしても薄くなりがちです。
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言うまでにためらいはなかったのか?
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言った後にどんな空気が残るのか?
この「前後の流れ」まで準備しておくことが、演技の深さにつながります。
ここまでは多くの方が納得されています。しかし、結局これもまだセリフ中心なのです。
セリフありきになっていませんか?
セリフをヒントに、気持ちを想像している。
セリフをヒントに、前後の気持ちや展開を想像している。
セリフをヒントに、あり得たこと、あり得そうなことをどんどん想像している。
これでもやはりまだ仕事は半分なのです。
なぜならば、現実の私たちの仕組みを振り返った時、私たちはセリフになっていないと、まだ声になっておらず、聞こえない形になっている考えや小さな動き、そういったものの集合からスタートしているからです。
厳密に書くと気が遠くなるかもしれませんが、実際、目の動きに思考の流れが反映されること、無意識のジェスチャーに後から気持ちが現れていたなぁと振り返った経験は、多くの方があるのではないでしょうか。
空間の扱いも、演技の一部
セリフをどう言うかだけでなく、空間との関係も見落とせません。
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相手との距離感
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視線の方向
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誰もいない場所に向けた一瞬の反応
空間を無意識に消してしまっていないか。
演技の中で空間が“生きて”いるかを確認してみましょう。
つまり、行動から前提を洗い直すという一手間が重要になるのです。
つまりセリフの手前です、例えば、どこにいるか、どこにいないか。
相手は自分にとって誰なのか、相手にとって、自分は誰である可能性があるか、もしくはあったか…
届かない演技は“今だけ”、”言葉にできる部分”を演じている
届かない演技には、「今、この瞬間」しか存在していないことが多いです。
セリフに書かれた内容や動きだけを再現していると、それ以外の要素が抜け落ちます。
観客が見ているのは、「なぜそのセリフを言うに至ったか」です。
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なぜ今この言葉なのか?
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他にどんな選択肢があったのか?
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言わなかったのはなぜか?
これらの背景が演技に含まれているかどうかで、伝わり方は変わります。
より現実味を帯びてきませんか?信じやすくなっていますよね?
セリフに書かれていないものを読む力
台本には書かれていないことの中に、演技のヒントが多く含まれています。
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語られていない過去の出来事
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登場していない第三者の影響
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言葉にならなかった本音
これらを丁寧に想像し、役の内側に取り込んでいくことで演技に厚みが出ます。
特に私は他の記事でも書いておりますが、「いつ」「どこ」「誰」からスタートすることが有益です。
整理もしやすいですし、現実の例で、照らし合わせて具体的に意味を抽出して行きやすいです。
準備段階で使える問いかけ
演技の準備や台本読解の際には、次のような問いを自分に投げかけてみてください。
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このセリフを言う前に何があったのか?言わないと何が起こるのか、誰が困るのか?
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なぜこのタイミングでこの言葉を言うのか?極端に言えば、昨日ではダメなのか、明日ではダメなのか?
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他に言わなかった言葉は何だったか?もし変わりがあるとしたら?
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この場にいない誰かの影響はあるか?あるけれども、無視しているのか?本当にないのか?
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空間のどこに意識が向いているか?それは何のためなのか、本人は無意識なのか?
たくさんたくさんありますが…笑
これらの視点が、演技に奥行きをもたらします。
まとめ:背景と選択を整理して演技を深める
「今この瞬間」だけで演技を組み立てていると、どうしても届きにくくなります。
しかも、セリフから直接引っ張ってくると、そもそもセリフ自体が「結果」ですから破綻します。
結果から原因を引き出そうとしてしまうのです。
そもそも描かれている事実、そしてまだ描かれていないもしくは描かれることのなさそうなセリフの裏側にある背景、空間との関係、時間の扱い、選ばなかった言葉や行動まで整理することで、演技の密度とリアリティが高まります。
役の中にある“見えていない要素”をどう扱うかが、伝わる演技への鍵です。
面白いですよね。
役の人物自身が自分のことを知ってる以上に、あなたが役の人物のことを理解する可能性があるということにつながります。
演技の読解力をさらに高めたい方へ。
クラスや個人レッスンの情報は、プロフィールのリンクからご覧いただけます。
こういっためくるめく感覚体験はここからスタートします。
まだ、あきらめないでください。
この記事を書いた人:
鍬田かおる : 演技コーチ/インティマシー・コーディネーター(ディレクター)
演技指導歴20年以上。
幼少より芸能事務所および演技教室で学び、イギリスへ。プロ俳優・歌手・ダンサーを中心に、感情と身体のつながりを軸としたレッスン、台本読解のクラス、プロのためのレベルアップ・トレーニングを展開中。
映画スクールやパフォーミングアーツの大学を始め、多様な公演、ミュージカル、オペラ、映像。演劇など幅広い現場で指導およびインティマシー・コーディネーター(ディレクター)としても、映画監督と講座やワークショップを行うなど、活動を広げている。
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幼少時から芸能事務所に所属し、俳優を目指し、ダンスや音楽のトレーニングを受け、また演技の私塾を経てイギリスへ留学しました。30年以上の演劇経験、ロンドンでの大学・大学院修了、正規のアレクサンダー・テクニーク教師としての専門性、ムーヴメント指導の経験を統合しながら、これまで1,900名以上の俳優・歌手・ダンサー・声優・ナレーターも指導してきました。
今回のクラスでも、表面的な形ではなく、交流が自然に生まれる“仕組み”とそれを演技に活かす方法を身体のあり方から、丁寧に扱っていきます。
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演技コーチ/ムーヴメント指導・演出・振付/IDC認定インティマシーディレクター/STAT認定アレクサンダー・テクニーク指導者/スピーチ&プレゼンテーションコーチングActing Coach/Movement Direction/IDC qualified Intimacy Director/STAT certified Alexander Technique teacher, mSTAT, Movement Teaching/Speech and Presentation Coaching



