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そのセリフ、本音ですか?――言葉の裏にある“理由”を生きる

カテゴリー:
演技の基礎

最近は、知り合いの方の作品に招かれることも多く、大変光栄です。幅広いプロフェッショナルな方とお会いできて、私自身、勉強にもなり、もっと切磋琢磨していきたいなと、常々感じております。そんな演技コーチの、今日も問題提起、スタートです。

そのセリフ、本音ですか?―言葉の裏にある“理由”を生きる

セリフを覚えたのに、なぜか伝わらない。
感情を込めているつもりなのに、観客の心が動かない。

それは、言葉の“意味”を追うあまり、
言葉の“理由”を見落としているからかもしれません。

しかも状況を把握してるからこそ、なぜ伝わらないのかがわからない…厄介です。

 

セリフは本音とは限らない

人はいつも本音を言葉にしているわけではありません。
むしろ、本音を隠すために「別の言葉」を選ぶことのほうが多い場合も。

それこそ、役の人物の習慣や立場による防衛、その時代やコミュニティーで許されている言葉遣いしか使えないというような制限もあるでしょう。実際の私たちと同じです。

だから、俳優が読むべきは、ただ書かれていることとして「何を言っているか」とそこから繋げられる気持ちではなく、

・何が

・今

・ここで

・私(役の人物)に、この言葉を言わせるのか

という構造です。

みなさん、この構文です。

決して「どんな気持ちでこのセリフを言っているのか」ではありません。

この視点を正しく持つことで、台本の読み方は大きく変わります。
印刷されているから、すでに物語の中で書かれて整っているように、一見見えるからと言って、そのまま信じてはダメです。

単なる言葉そのものより、その背景にある事情や動機を理解できるようになると、
演技は表層の感情表現から、行動としてのリアリティへと変化します。

それは、身体不在ではなくなるーより具体化していく。そして個人的になるということ。

 

「なにが」私(役)にその言葉を必要とさせるのか

台本の中で人物が発する一つひとつの言葉には、必ず「意図」があります。本人自身も気づいてない場合もあるから、そこは確かに、難しいのかも…。しかし、それらは「動機」を伴って、必要が生じて生まれるものです。もしかすると
それは、感情を守るためかもしれないし、相手を試すため、自分自身をも隠すためかもしれません。

しかも、映画やテレビや舞台作品になるほどですから、きっといろいろな思惑が錯綜していることでしょう。

 

「なぜこの言葉なのか?」「なぜ今なのか」「なぜここでなのか」

この3つを掘り下げることは、俳優が人物の“本当の目的”を見つけることと同じく重要です。


そしてこの解釈こそが、カメラで拡大しても意味の響く、そして舞台の場合は、空間を埋めてもなお、観客に届く説得力と深みを生み出していきます。

表面のセリフに頼る演技は、一瞬で終わります。

国語の意味は伝わるけれど、なぜなのかがわからない。文章の意味はわかるが、その先がない。

そのセリフを「聞いた前と聞いた後」で、特に変化がない…そんな感じです。

それって、現実の世界でも奇妙なことではないでしょうか。

何か本当に、自分自身にとって重要なことが起きたとき、個人的に意味のあること、問題解決の途中で重要な言葉が必要になって、そのとき・その場所で・使える範囲の言葉が・出てきた、という感じはありませんか。


必ずしも、国語の文法が正しい流暢な文章、文学的に優れたセリフでなくても、言葉の理由を生きる演技は、観客の記憶に残ります。

 

言葉の“根っこから”生きる俳優へ

やみくもに言葉を信じることより、
言葉の裏にある“理由”と”個別の事情”を生きること。

それが、リアリティを伴った役やシーンへの入り口です。

(あえてリアリティーを消すこと、減らすことはできますが、ないものは何も工夫できません)
結果的に出てくるセリフの根っこを掘っていく過程で、俳優自身の想像力や観察力も磨かれていきます。

その瞬間、緊張が高まったり、逆に弱まってほどけたり、時には笑いに変化したり、場の空気が変わります、それが「伝わる演技」が生まれる瞬間です。

 

10月の俳優/歌手の演技クラスのご案内

🖥️10月24日(金)19:30-22:30 オンライン読解
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●この記事を書いた人:鍬田かおる 

演技コーチ/インティマシー・コーディネーター(ディレクター)

演技指導歴20年以上。留学中のイギリスにて、アレクサンダー・テクニーク指導者資格を正式に取得後、音楽家、ダンサー、声楽家、歌手、俳優らを中心に、20年以上の指導歴がある。映画、テレビ、舞台で活躍する実演家を中心に、感情と身体のつながりを軸としたレッスンと世界スタンダードの台本読解及び分析のクラスをはじめ、演技クラスや各種のプロトレーニング、個別レッスンを展開中。

養成所や研修所等での指導歴を経て、映画スクールやパフォーミングアーツの大学を始め、事務所等でも指導を進める傍ら、多様なミュージカル、オペラ、映像、舞台など幅広い現場で活躍する歌手や俳優のコーチを務める。

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良かれと思っていつも考えていたことがズレていた、そんなお声も届いてます。

「まず状況を成立させることが大事」と思っていませんか? ー演技が“浅い”と言われてしまうときの見直しポイント

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