ブログ記事

台本読解で見落とされがちな「時間」──このシーンは“いつ”なのかをプロ視点で考える

演技コーチによるプロの台本読解のコツ

指導歴20年、演技コーチの鍬田かおるです。

昨年からスタートしました、身体や呼吸、そして声セミプライベートレッスンも、毎回満席いただき、やる気のある方々の存在に私も励まされております。

さて、本日は、基礎だからこそ忘れてしまいがちなポイントについてです。

台本読解で見落とされがちな問い

このシーンは「いつ」なのか?
自分が登場しているこの瞬間は、一体いつなのか?

台本読解の中でも、とても重要なのに、つい曖昧にされがちなポイントがあります。


それが「時間」です。

あまりにも当たり前すぎて、
「書いてある状況から何となく想像して終わり」
になってしまう方が少なくありません。

例えば、
「会社に行く前だから朝だな」
「これはきっと夜遅い時間だろう」
と、わかったような気になってしまう。

でも、実はここが一番危ないところです。

日常的に、つい流してしまうので、なんとなくわかったつもりになってしまうんですよね。

 

「夜遅い」「早い」は人によってまったく違う

私が思う「夜遅い時間」と、
友人が思う「夜遅い時間」。

友達同士でも、かなり違うと思いませんか。

ということは、
他人が書いたフィクションの世界では、
背景に似た境遇や重なりがあったとしても、
「何時を遅いと呼ぶか」「何時を早いと感じるか」は、本当に人それぞれです。

このズレを放置したまま演じてしまうと、
時間の感覚が観客に共有されないまま、
セリフだけが進んでいくことになります。

セリフだけが進んでいるのに、身体は変わっていない、個人的な事情が反映されていない動きや目線、呼吸になってしまっている…非常にもったいないです。

 

プロのもう一歩は「その人物にとっての時間」を考えること

ここで大切なのが、
その役の人物本人にとって、
この時間は何の時間なのか、
どんな意味を持つ時間なのか、
という視点です。

単に「夜」「朝」と処理するのではなく、
その人物の世界観の中で、時間に個人的な名前をつける

これが、プロの一歩先です。

名付けると言うのは、その役の人物の世界観での使われている言葉によってですので、ご自身だけにわかりやすいとか、共演者や監督、演出家に通じる必要があると言うことではありません。

 

具体例:夜23時に待ち合わせる文化がある世界

例えば、夜23時に待ち合わせをする文化がある世界があったとします。

その場合、
22時はもう「夜遅い時間」でしょうか?

おそらく、まだ支度中の時間ですよね。

場合によっては、夕飯の前かもしれない、もしかすると、これから食事に行くのかも。

世の中にはいろいろな文化の方がいらっしゃいます。決してどちらかが優れているとか、悪いとか、非常識であると言うことではなくて、いろいろなライフスタイルがあるのです。また、それが可視化されつつある時代です。

そういった部分に敏感になっていくのも、多様性の時代に重要だと感じます。

 

このように、
何時か、という数字よりも、
その人物の世界で何のための時間なのか
という意味づけが重要になります。

・準備の時間なのか
・緊張が高まる時間なのか
・気持ちを切り替える時間なのか

この名付けができると、
立ち姿や呼吸、間の取り方が自然と変わってきます。

無理に小手先で頑張るのではなく、この仕組みに乗っ取った、極めて現実に根ざした方法が、より演技を説得力のあるものに、観客にとって信じられるものに変えてくれます。

 

時間を「共有できる演技」に変えるために

時間を曖昧にしたまま演じると、
感情だけが先行し、
どこか薄く、届きにくい演技になりがちです。

一方で、
「この人物にとって、この瞬間は何の時間なのか」
がはっきりすると、
観客と同じ時間を生きる感覚が生まれます。

これは単なる才能ではなく(幅広いですが)
台本読解の精度の問題です。

つまり、事実を論理的に破綻していない形で、整理すること。役の人物の視点から掘り下げていくことです。

 

まとめ

・「いつなのか?」は当たり前すぎて見落とされやすい
・時間の感覚は人によってまったく違う
・重要なのは、その人物にとって何の時間かという意味づけ
・時間に名前をつけることで、演技のリアリティが立ち上がる

他にも、
演技のあるあるを解説するリールやQ&A、
俳優や歌手の方向けのクラスのご案内も発信しています。

必要なところから、
ぜひ役づくりや台本読解に役立ててみてください。

 

プロフィール

鍬田かおる

演技コーチ/インティマシー・コーディネーター(ディレクター)
演技指導歴20年以上。プロ俳優・歌手・ダンサーを中心に、感情と身体のつながりを軸としたレッスンと世界スタンダードの台本読解および分析のクラスを展開中。各種養成所や研修所等での指導歴を経て、映画スクールやパフォーミングアーツの大学を始め、事務所等でも指導を進める。多様なミュージカル、オペラ、映像、舞台で活躍する歌手や俳優のコーチを務める。

大切にしている指導の軸

幼少時から芸能事務所に所属し、俳優を目指し、ダンスや音楽のトレーニングを受け、また演技の私塾を経てイギリスへ留学しました。30年以上の演劇経験、ロンドン大学・ロイヤル・セントラル・スクール・オブ・スピーチ&ドラマ演劇学校大学院を卒業。正規のアレクサンダー・テクニーク教師としての専門性、ムーヴメント指導の経験を統合しながら、これまで1,900名以上の俳優・歌手・ダンサー・声優・ナレーターも指導してきました。

今回のクラスでも、表面的な形ではなく、交流が自然に生まれる“仕組み”とそれを演技に活かす方法を身体のあり方から、丁寧に扱っていきます。

また、限られた時間内に結果を出すための、実践的な指導に重きを置いています。

いずれのクラスも、これまで活動されてきたジャンルを問わず、また演技経験の長短ではなく、もっと現場で結果を出したい方、しっかりスキットしていきたい方がもっとも伸びやすい内容です。

 

2025年最後のクラスはシリーズ仕立て、相乗効果が出るカリキュラムになっております。

この機会に深めたい方、来年に備えてレベルアップされたい方のご参加をお待ちしております。

【2025年12月年末特別】 【2025年12月・年末特別】台本読解オンライン・共感と同調・シーン実践クラスの三日間

個人レッスンをご希望の方へ

グループクラスだけではなく、個人単位でも、演技の基礎から応用まで、あなたに必要な内容をカスタマイズした指導を行っています。


スタジオ・オンラインどちらにも対応しています。
お問い合わせフォームからご連絡ください。

フォーム

LINE公式もご利用いただけます。
トーク開始には一言メッセージまたはスタンプをお願いします。

 

SNSのご案内

Instagramでは、簡潔なQ&Aや短いリールを更新しています。お役に立てるとうれしいです。

取り上げて欲しいモヤモヤ、前から気になっていた点も歓迎しております。

今回の内容に「もっと知りたい」「いつか参加したい」と感じてくださった方へ。

Instagram → https://www.instagram.com/actingcoachkaorukuwata/

「12月はどうしてもスケジュールが変更できないが、次回のクラスを知りたい」という方は、
公式LINEに登録 or Instagramもフォローしておいてください!

📩 次回の優先案内を受け取る →https://lin.ee/2HZK7jV

 

台本読解についてのこのような解説記事も、公開しております。

40年の演劇歴で鍛えられた「台本を受け取ったらまず何をすべきか」7ステップ

 

クラスのキャンセルやご予約の変更等について

急病や事故などの場合は、分かった時点で必ずお知らせください。
シーンのクラスおよびエクササイズクラスは二日間通しのクラスのため、一部参加となっても返金には対応していません。キャンセルや振替の詳細は、ご予約時のメールにもご案内させていただいております。

 

 

コメントを残す

WP Twitter Auto Publish Powered By : XYZScripts.com