こんにちは、年末こそ休みやすいから、クラスでしっかりレベルアップしたいとおっしゃる歌手や俳優の方も多く、私も励まされる思いです。
さて、本日は「ちょっと浅い」「何か違う」「もっと深く」という恐ろしいコメントについての解説です。
努力が当たり前な世界だからこそ、そして真面目に積み重ねている方が多いからこそ、気をつけていただきたいポイントです。
演技が「浅い」と言われる理由は、努力不足ではない
きちんと台本を読んでいる。
シーンの状況も理解している。
セリフの意味も整理している。
それでも、
「気持ちが見えない」
「意図が伝わってこない」
「なんだか薄い」
そんな言葉を受け取って、立ち止まってしまう俳優や歌手の方は少なくありません。
ここで大事なのは、白黒思考のように、そして単純な才能やセンスの話にすり替えないことです。
多くの場合、問題は能力ではなく、取り組む順番がズレているだけです。
しかし、順番によって、飲み込めることを飲み込めないこと、文脈がわかること、わからないこと、はっきりしてしまうのも事実です。
シーン分析は「出発点」であって、ゴールではない
シーンの状況
セリフの意味
どんな気持ちか
何を言いたいのか
導線や所作
これらは、演じるうえで欠かせない要素です。
そして正直に言えば、ここまでは多くの人がやっています。
国語の読解だけでも、ある程度はたどり着くでしょう。
だからこそ、
現場では一応オーケーが出る
大きなダメ出しはない
「悪くない」と言われる
けれど、自分の中では納得できない。
手ごたえが残らない。
そんな状態に陥ります。
しかし、ここを【自分ごと化】していくためには、その先です。
枝葉を磨いても、幹と根っこが細いままでは残らない
演技を木にたとえるなら、
枝葉は
・所作、ジェスチャー
・表情の変化
・声の出し方、抑揚、喋りのリズムやテンポ
・導線ー移動の仕方
幹と根っこは
・役の原動力ーなぜなのかの部分
・感情の流れー目的に向かう力
・役と自分の接点ー自分事の想像力と共感や同調のスキル
・なぜその行動を選ぶのかという判断軸「感じるために考える」部分(ここは深いので別の記事で解説しています)
にあたります。
枝葉をどれだけ増やしても、
幹と根っこが育っていなければ、
表現は「きれい」に見えても、深くは残りません。
そもそも、根っこに栄養を与えていないのに、立派な枝を期待するのもおかしなものです。
「役と自分の重なり」を言語化できていますか
ここで一度、問い直してほしいことがあります。
この役と、自分はどこで重なっているのか
似た体験や感覚は何か
一次感情は何か
そこから二次感情はどう変化しているのか
例えば、
心配だから怒った
不安だから強がった
こうした感情の流れは、
役の行動を支えるコアになります。
この部分が整理されると、
セリフは「気持ちの説明」ではなく、
相手に向けた行為に変わります。
つまり、働きかけになる、影響力が生まれるということです。
再現性のある演技は、コアからしか生まれない
調子がいい日はできる
気分が乗ったときは深くなる
それでは、現場では通用しません。
プロの現場で求められるのは、(ある程度の幅を持った、そして対応力と柔軟性が問われるが)一貫性や調節可能な、再現性のある表現です。
しかも、限られた時間内に結果を出すというルールがあります。
そのために必要なのは、身体に力を込めて、また自分を暗示にかけるようなことで
感情を無理に盛ることでも、ただ闇雲に小手先の
テクニックを増やすことでもありません。
役の原動力が自分の中で複数のレールとしてつながっていること。
判断の軸がある程度明確であること。
つまり「行くこともできるが、無事に帰ってくることもできる」スキルです。
ここが定まると、
毎回やたらとブレずに、ある程度の質を伴って、目標を通過しながら、目的へ向かって行動を続けていけるようになります。
その結果として、枝が伸び、葉っぱが生えて花開くんです。
「ちゃんとやっているのに伸びない」状態から抜けるために
ここまで読んで、なんとなくわかった…
ちょっと思い当たるところがある、もしかしたら
自分は枝葉ばかり触っていたかもしれない
そう感じたなら、
いま必要なのは新しいテクニックではありません。
一度、立ち止まって、幹と根っこを整理する時間です。
それも、ただ頭で考えるのではなく、実際の動きから、身体と呼吸から丁寧にやること。
なんとなく遠回りに見えて、実はこれが一番、中長期的に自分のものになり、じわじわとで効いてきます。
年末だからこそ、基礎を「更新」しておきたい人へ
年末は、今年の癖がはっきり見える時期でもあります。
儀礼的なやりとりや慣習に則った時間の使い方が増える時、これまで通りのパターンに頼ってしまう、ついいつも通りやりたくなってしまう方も。
しかし、
同じところでつまずいている
同じ指摘を受けている
毎回、似た課題が残る
それは、努力が足りないのではなく、
コアが更新されていないだけかもしれません。
限られた時間の中で、
役の原動力を掘り下げ、
自分の演技を次の段階へ進めたい方に向けて、
年末に少人数で取り組むクラスを用意しています。
派手なことはもしかしたらないかもしれません。
でも、実際にどんどん確実に使える視点だけを扱います。
今の積み重ねを、来年につなげたい方へ。
年末クラスのご案内
12月27日(土) 18時オンラインでの台本読解からスタートです
12月28日、29日の二日間は、単発での参加も可能な演じるための感覚のエクササイズクラスー共感と同調があります。
少人数制での演技の実践クラスは、30日、31日です。
【2025年12月年末特別】 【2025年12月・年末特別】台本読解オンライン・共感と同調・シーン実践クラスの三日間
この記事を書いた人:
鍬田かおる : 演技コーチ/インティマシー・コーディネーター(ディレクター)
演技指導歴20年以上。
幼少より芸能事務所および演技教室で学び、イギリスへ。プロ俳優・歌手・ダンサーを中心に、感情と身体のつながりを軸としたレッスン、台本読解のクラス、プロのためのレベルアップ・トレーニングを展開中。
映画スクールやパフォーミングアーツの大学を始め、多様な公演、ミュージカル、オペラ、映像。演劇など幅広い現場で指導およびインティマシー・コーディネーター(ディレクター)としても、映画監督と講座やワークショップを行うなど、活動を広げている。
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鍬田かおるプロフィール
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大切にしている指導の軸
幼少時から芸能事務所に所属し、俳優を目指し、ダンスや音楽のトレーニングを受け、また演技の私塾を経てイギリスへ留学しました。30年以上の演劇経験、ロンドンでの大学・大学院修了、正規のアレクサンダー・テクニーク教師としての専門性、ムーヴメント指導の経験を統合しながら、これまで1,900名以上の俳優・歌手・ダンサー・声優・ナレーターも指導してきました。
今回のクラスでも、表面的な形ではなく、交流が自然に生まれる“仕組み”とそれを演技に活かす方法を身体のあり方から、丁寧に扱っていきます。
活動されてるジャンルを問わず、また演技経験の長短ではなく、現場で結果を出したい方がもっとも伸びやすい内容です。
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演技コーチ/ムーヴメント指導・演出・振付/IDC認定インティマシーディレクター/STAT認定アレクサンダー・テクニーク指導者/スピーチ&プレゼンテーションコーチングActing Coach/Movement Direction/IDC qualified Intimacy Director/STAT certified Alexander Technique teacher, mSTAT, Movement Teaching/Speech and Presentation Coaching



