ブログ記事

本番で結果が出ない理由|俳優・歌手が伸び悩むのは「経験不足」ではなく準備不足

伸び悩む俳優のための演技クラス

最近は遠出が続いていた演技コーチ、鍬田かおるです。もうすぐ秋の夜長。読書に使いたいですね。

さて、読書と同じく、積み重ねがものをいうのが、「練習」そして「準備」です。

俳優も歌手もダンサーも音楽家やスポーツ選手も、練習していないことは一瞬で伝わります。

日本でクラシックバレエの礎を築き、日本人で初めて世界最高峰の一つーパリ・オペラ座に出演され、文化功労者でもある伝説のバレリーナ森下洋子様(今も踊ってらっしゃる!)は「1日休むと自分にわかり、2日休むと仲間にわかり、3日休むとお客様にわかる」という名言でも有名です。

これ、クラシックバレエが特に厳しいからではなくて、他の世界もそうなんですよね。

その証拠に、例えば、連休明け、いまいち動きにキレがない、判断力が鈍っている、スピードが出せない、身体が重く感じる、声の抜けが悪い…..様々な方がそれぞれの専門分野で感触を口にしています。

本番の舞台やオーディションで「あれ?」と感じさせてしまうのは、才能の有無ではなく「誰も見ていない時に準備を積んできたかどうか」の差です。

あ、書いてしまいました。

人前に立った瞬間、習慣の差は隠せません。

一見、技術があるように見えても、練習不足は声や動きの不安定さ、集中力の切れやすさ、柔軟な対応の遅さ、選択肢の少なさとなって表れます。

逆に、地味であっても、目立たない準備を続けてきた人は、緊張する場面でも土台が揺らがないのです。

そうなんです、緊張するのが当たり前だからこそ、緊張したとしてもある一定の基準を落とさない。

これがプロの仕事です。

 

なぜ「経験不足」と感じてしまうのか

多くの人は「もっと経験を積めば伸びる」と考えます。

しかし、実際に現場で力を発揮できない原因は、経験不足だけではなく準備不足にあります。

「とりあえずやり切った」とか「(半ば周囲の方に引っ張り上げてもらって)自分なりに満足」といった経験を重ねても

その都度、目指してるレベルでの準備が甘ければ、なかなか成果につながらず「場数を踏んでいるのに伸びない」という状態に陥ります。

そう、これは、残念ながら気持ちや性格の問題ではないのです。

逆に、ひとつひとつの現場に向けてしっかり準備を整えた方は、少ない経験からでも確実に成長します。

単に経験そのものより、経験を活かせる準備習慣と応用があるかどうか。

ここが分かれ道です。

 

見えない練習が本番を支える

SNSに載せられるような派手な練習よりも、誰も見ていない静かな積み重ねこそが本番を支えます。

時折「いや、インタビューで、その時ひらめいたって書いてあった」、「あの俳優はインプロだって聞いたよ」と豪語される方も尊敬されるのですが、ご本人がそう感じているとしても、実際そうか分かりません。

「どうしても気になるから、実際に役の人物のAをやって、そこから想像が膨らんだからBをやって、やっとつかめてきたと思ったからCをやって…気づいたら1日終わってた。」というようなー準備を準備と思っていない、練習を練習と思っていない、あまりにもライフスタイルに組み込まれすぎていたから、なんてお話はよくあります。

実際あった冗談のような本当の話。

日常から動きをチェックして適切に使う、呼吸や声のケアをプロレベルでやる、運動の習慣、もともと読書に熱心で台本を深く読みこむ、適切な問いを立てて掘り下げる、日ごろから呼吸を整える、身体や声の癖を調整する…….

そうした地味な作業は人目につかないため軽視されがちですが、負担の大きい作品や役、慣れない環境や緊張が高まる場面で自分を守ってくれるのはこの時間です。

じわじわとでも、必ず評価されていく瞬間の裏には、「評価されない努力」が隠れています。

これは俳優にも歌手にもダンサーにも共通する、揺るぎない原則です。

 

演技指導20年以上の実感

私は20年以上、小学生から成人まで、俳優や歌手を指導してきました。

その経験から言えるのはどんなに気持ちがあっても「準備不足は隠せない」ということです。

舞台やオーディションで不安を抱える人の多くは、練習の習慣そのものが欠けています。

一方で、見えない場所で準備を重ねてきた人は、思いがけないトラブルや緊張の場面でも自分の力を発揮できます。だからこそ、自信もつく、他人に気を使うこともできる、気持ちにも余裕があるんです。だから、トラブルも大きくならない…良いことずくめです。

結果は才能や運に見えても、実際には準備の差によって生まれているのです。

 

今できる小さな一歩

大きな成果を求める前に、まずは今日からできる小さな準備を始めてみましょう。

毎日15分でも声を出す、20分で良いので、台本を一場面深く読む、日ごろの動きからもっと注意深くなって、身体を整える。

そうした積み重ねは数週間後に必ず違いを生みます。一人で続けるのが難しければ、プロがアドバイスをくれたり、きちんと伴走してくれる環境に身を置くことが近道です。

小さな一歩を日々積み重ねることで、舞台やオーディションでの自信が少しずつ確かなものになっていきます。

だからこそ、表情や気持ちも変わっていきます。

 

応援チームとして伴走しています

とはいえ、一人で努力を続けるのは簡単ではありません。

私自身、数多くの歌や楽器の先生方のおかげで、いろいろな体験もできましたし、今振り返って本当にありがたい時間ばかりでした。また、ダンスや演技の師匠たち、指導者としてのメンターたちにも、もう何十年もお世話になっています。彼らがいなければ、私は路頭に迷っていたと思いますし、仕事を続けることもできなかったでしょう。

だからこそ私は、クラスやレッスンを通じて活躍を応援するだけでなく、「見えない努力」を支える指導者でありたいと思っています。

俳優や歌手が抱える不安や停滞感は、準備の仕方を工夫することで乗り越えられます。

練習とトレーニングの習慣を整えて調整していくことは、リハーサルだけでなく、実際の舞台やオーディションで力を発揮するための最大の武器です。

もし一人では続けにくいと感じているなら、一緒に積み重ねていきましょう。

伴走する仲間がいれば、準備は必ず自信に変わります。

 

●この記事を書いた人:鍬田かおる 

演技コーチ/インティマシー・コーディネーター(ディレクター)

演技指導歴20年以上。留学中のイギリスにて、アレクサンダー・テクニーク指導者資格を正式に取得後、音楽家、ダンサー、声楽家、歌手、俳優らを中心に、20年以上の指導歴がある。映画、テレビ、舞台で活躍する実演家を中心に、感情と身体のつながりを軸としたレッスンと世界スタンダードの台本読解及び分析のクラスをはじめ、演技クラスや各種のプロトレーニング、個別レッスンを展開中。

養成所や研修所等での指導歴を経て、映画スクールやパフォーミングアーツの大学を始め、事務所等でも指導を進める傍ら、多様なミュージカル、オペラ、映像、舞台など幅広い現場で活躍する歌手や俳優のコーチを務める。

詳しいプロフィールは、HPのプロフィールページからご覧いただけますと光栄です。

 

こちらの記事もお役に立てれば幸いです。

レッスン、受けたほうがいい?と迷っている方へ─判断のヒントと“身銭を切る”という視点

現代の幅広く通用する演技に関心のある俳優や歌手、演出家や監督の方は、こちらの記事もぜひご覧ください。

●事務所・マネージャーの方で、「うちの俳優・歌手にレッスンを受けさせたい」

事務所や劇団、地方自治体など「講師として招聘を検討したい」といったご相談も歓迎しています。基礎から始める方、舞台や映像の中堅とよばれる方、いわゆる芸能人の方まで、演技指導歴は20年ございます。これまでに日本だけでも、劇団の養成所、芸能事務所、キッズのクラス、ミュージカルカンパニー、映画スクールでも指導を重ねてきました。

オーダーメイドでクラスやワークショップを開催してほしい場合、初回オンラインでのヒアリングも可能です。オーディション等のご相談も受け付けております。

クラスのお申し込み、個人レッスンのご相談、ワークショップ等への招聘には
こちらのお問い合わせフォームもご利用いただけます。
 
 

お急ぎの方には公式LINEもございます。こちらからのトークのスタートはできませんので、お手数ですが、一言ご挨拶かスタンプお願いします。

https://lin.ee/0cDPx1w

公式LINEからのお知らせの一斉送信は月に1回程度、 多くて2回程度です、ご安心ください。

 

このブログでは、今後も

・台本読解や演技へのアプローチのヒント

・現場で役立つ準備の方法、プロのブラッシュアップ

・実際のクラスからの気づきや実例

…などを定期的に発信していきます。

ぜひ、ブックマークしてまた読みにきてください。

個人レッスンも受付中ですが、9月27日及び28日のモノローグクラスははあと2枠のみです。

ご興味がある方はブックマークかフォローをおすすめします。

台本の読解、身体と声/呼吸、想像力、共感の仕組み、当事者性、そして論理的思考…これらは活躍の場がミュージカル、オペラ、演劇に限らず、映画やテレビ、コマーシャルでも同じくです。

 

●最近は、舞台やドラマのお問い合わせもございます。

センシティブな題材、キスやハグなどの身体的な接触、いわゆる絡み、昔で言う濡れ場などの振り付け、演出サポートのご相談は、映像作品、映画、テレビ、舞台にかかわらず、下のインティマシー・コーディネーター(ディレクター)こちらのホームページからお願いします。

https://intimacydirector.jp/

 

コメントを残す

WP Twitter Auto Publish Powered By : XYZScripts.com