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「台本の読みこみが浅い」と誰がどう、実は困るのか?

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先日再公開されたNTライブ「プライマ・フェイシイ」を堪能した演技コーチのくわたかおるです

日本でもああいう作品や質の公演が増えて、かつ絶賛されてロングランになるといいですね!

 

さて、本日はみんな気になる台本のお話…

 

かつてグループ指導が多く、あちこちの養成所や外でのワークショップが毎週立て込んでいた頃、

学生やプロに関わらず「台本の読みが浅い」と、よく演出家から愚痴というか、一種のお小言やつぶやきを聞くことが多かった日々…

 

みなさん、総じて、お困りでいらしゃり、ご立腹でもあり、かなりがっかりもされている方が多かった記憶です。

「台本が読めてない!」とはなぜ、なのか?

「読み込みが足りない」とはいったい、どういうことなのか?

そして、実際、誰がどう困るというのか?



例えば、演出家(や監督)がシーンをみたあとに、疑問点を聞きます

「えーっと、この部屋に、何をしにきたの?どんな目的で?なんのためだっけ?」

「あ、〇〇に会いにきました」

!!

演出家(や監督)は掘り下げます

「え?会うのはなぜ?誰の案で?お互いに会いたかったの?なにを変えたくて来たのか、今のじゃ、わからないんだけど…」

「□□の話をしたくて….ここに来たと書いてあったんで….」

?!

「それはそうだろうけど、何の話なの?ただ話をする訳にはいかないでしょう…どういう話になると予想して、もしくは期待して来てる?」

「00で困っていて、▷▷といいたくて……」

「セリフ」の言い換えと状況の説明をする演じ手にとまどいとちょっとした落胆を隠せない演出家(や監督および共演者)



「……じゃあ、もし話が決裂したらどうするつもりなの?」

「………..説得すると思います、たぶん…..」

と「もしも」を仮定する演出家(とは名ばかりの、もはやセンセイ)を無視して「話す」の仲間である「説得」や「伝える」をつかって防衛にはしる演じ手…



「……それは、また話をするってこと?確かに、このシーンもさっきの場面も、話はしているけども、話の行き先は?」


「…..あー、それは….何のために、ってことですよね?……」

と多角的にチェックしようと試みる演出家(というより親みたい)と、状況にとまったままの演じ手



「そもそも何をしたい人なの? ……動機は?何も意図せず、ただ歩いて入って来て、話しはじめないでしょ?なんのためなのか、もっと、ちゃんと台本読み込んできてね」

「…(すみません)…」

しびれをきらした演出家は演出家できず(当たり前!)監督は監督以上のことをやらねばならず、

そして、演じ手は演じ手の準備をしてきていないことが露呈したのだった。
========

大筋、こんな感じのことが多い…です…

現に、私が教えているときも、このような平行線を辿る会話の残念なことといったら….

 

さて、

あらすじ、状況、おおよその(セリフになっている部分の)気分や関係性を掴んだからといって、

①セリフ(言葉)になっていない部分を想像せず、

②行動として実行しなかった数々の選択肢を十分に吟味しなかった

がために、セリフの言い換えをしているだけのサブテキストになり、本末転倒です。


作者はもちろん、演出家(や監督)から見ると「何やってんだろう、時間あれだけかかって、出てくるのはこんな表情で動き?……」

と思う一方で、

演じ手は「動機や理由は(セリフとト書に)書かれてないのに!あーよくわからない!でも、一体なんなんだろう」とまるでクイズを出されたかのように感じていたり

「え、(セリフのままの)この意味じゃないの?これ(セリフ)が気持ちでしょう?なに難しいこと言ってんだろう?」

なーんて心の中でつぶやいていたりします。

….

この流れで演じ手側が「精一杯やって(いたはずなのに)るのに、足りないってことかー」としょんぼりしたあとに、「よーし!具体的に掘り下げよう」となればいいものの

多くの場合は

「もう一回よく読んできます」「はい、がんばります!」

という言葉でおわり

ほんとうにただよーく「読んで」きて、あらすじを覚え、セリフをいれ、

状況の把握を詳細にし、(身体を一層緊張させて)「がんばる」だけなのだ。

だから、前述の会話が繰り返されます。



こうした演じ手(俳優だけでなく歌手やダンサーでもいる)の基本的な台本の読解、脚本の紐解き、分析や解釈は、

演出家や監督を含めスタッフたち、そしてお客様にとっても頭痛の種だが

本人たちは「こんなに(難しい役やイマイチな環境や待遇なのに)一生懸命に(往々にして我慢しながら)やっているのに」と内心思っていることも多いからこそ、

かえってこじれ、根本的な解決が難しいです。

 

なぜか?


実際、あちこちの養成所やワークショップ等で

「サブテキストを考えて」とか

「自分に言葉で言い換えてみたら?」

はたまた

「自分だったら、どう?置き換えてみて」とか、

残念ながら、本題(最終的に役は日常の自分でもない)からそれやすくなる質問をされることも多い

が、「台本の読み込みが浅い」ことの多い方々が悩むときは、そもそもの事実の把握から抜けている部分が多いため

また我流では、そして特に一人での準備では、バイアスからどうしても逃れられないため

堂々巡りをしやすいのです。


ああ、やる気もあって真面目なのに、もったいない!


うまくいってないときほど、真面目に焦って、本番がちかいほど、「いつも通り」の安全なやり方を繰り返してしまう!

を理解しないまま、新しい手法を試みたり、周囲があれこれ言っても、あまり事態は良くならないですね。

========


それでは、
「台本の読解」とは実際なにか?

1 書かれている事実とその意味を読んで解釈する

2 上の1から、書かれてはいないが、事実であることを想像して解釈する

この2段階式に実はなっている

どちからだけでも足りず、セットでようやく全体像がおおよそ掴めるのです


現場でよくあるのは

「1の事実把握、特に状況の把握はしているが、2を実はやっていない」

または

「2をやってはいるが、具体的に感覚的な想像を伴わずにしている」

所ではないでしょうか?

演じ手は台本を読みたくないのではない。「演じるために」読みたいが、お客様時代のように、いつも通りに読んでしまうのだ。

そして、演じるための2段式の読み方を徹底して、具体的に、身体を通して習慣化させて、教えるところはほとんどないらしい…

(これまで誰も教えてくれなかったとよく生徒さんやクラス参加者の方々に嘆かれます。)

 

つまり、「台本が読めていないの」ではなく、「台本を読んだことになって」いて、「読めていない」はずがないと前提を誤っているのです。

と言う事は、「役の準備ができていない」わけではなくて、「役の準備ができている」と思い込んでいるから厄介なのです。



さらに、問題を堂々巡りにさせているのが、

良かれと思って「2段式の1だけを教えてヨシとする人」、「できていない人にできていると褒める人」、

「2段式の2をやることに協力をしないばかりか、それが細かすぎるとか面倒だと呼ぶ人」の存在です。
(演出家や監督に限らず、あらゆる職種)


そのザルで台本を読んで、日々過ごしているから

「誰の視点からの物語なのか」や「テーマとその解釈」やわからず

結局、不特定多数の他人が初めて見たときに、矛盾だらけのさっぱりよくわからない、つぎはぎだらけの演出や表面的な描写に過ぎない残念な状態が散見されます。

 

これは舞台だけではありません。

映画やテレビドラマでも同じで、まるでクイズを出されているようなよくわからない設定や、何のために出てきたのかわからない人がいたり、

実際には到底あまりにも成立しないだろう(SciFiフィクションやメルヘンやホラーでもないにもかかわらず)

画一的なその場しのぎの演出や演技っぽいものが繰り広げられたりしている様子…..

これではせっかくの才能やスキルは発揮されない。

 

それでは….

実演家がもっと効果的に台本を読解して、掘り下げるには

前述の演出家(監督)と演じ手の会話を脳内でご自身でロールプレイすることです

そう、ツッコミ!と掘り下げを自分でやっておくのです

 

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