■ハラスメントについて

 

・個人的な考えと振り返り

昨今、性暴力および各種のハラスメントと関連記事を目にするにつけ、自分にできることや責任、環境を取り巻くさまざまな要素について、熟考を重ねてまいりました。

 

いま振り返れば、私も場面よって、加害者にも被害者にもなったことがあったに違いなく、悪意の有無にかかわらず、これまで傷つけてしまっていた方には大変申し訳なく、心苦しい思いです。

反対に、無意識だったとしても、加害者の方々に関しては、二次加害も含め、ただただ残念に思います。また、私が直接的に関係のない立場にあった時でも、二次被害に加担したことはないとは申せません。したがって、あらゆる日本の業界の悪癖や誰かの心に深い傷を負わせる結果となってしまった事例と自分が無縁だったとは考えておりません。

しかし私は、自分も周囲もともにアップデートしていきたい、ずっと真摯に学び続けて行きたい、各方面の先輩方や専門家の方々と協力して行きたいという気持ちでおります。

 

この数年の間、私はインティマシー・コーディネーター/ディレクターの勉強も進めており、さまざまな専門家や映画や舞台など芸能/表現の世界でのパワーダイナミクスやLGBTQ等を取り巻く環境についても認識をアップデートする機会がありました。

欧米を中心に各種のコミュニケーションの研修やアライトレーニングの必要性、啓蒙活動についての認識を新たにしていく中で、自己洞察の機会にも恵まれました。

その結果、いま自分が一番にやるべきことは、自分が加害行為に間接的にでも加わらないこと、二次加害もしないことだと考えました。

 

そのとき、一般財団法人ハラスメントカウンセラー協会のハラスメント相談員の研修を目にし、すぐさま申し込みました。一般企業が設置を義務付けられているハラスメント窓口の相談員になるための研修は、ハラスメント被害者かつ弁護士でもある専門家が、さまざまな判例をつかって、基本的人権や法律上の責任等まで幅広く説明してくださるものでした。

試験もロールプレイやビデオ課題を含む、大変有用かつ有意義な充実したもので、演劇や舞台表現、芸能マスコミに関連性のない事例は一つもありませんでした。

 

こういった経緯と考えのもと、私は各種レッスンおよびクラスを開催するに当たりハラスメントポリシーと防止ガイドラインを策定いたしました。必要に応じて今後も改訂を重ね、更新していくことになると思いますが、どうご一読ください。

 

私も一層、各種レッスンやクラス参加者やスタジオスタッフに、物理的にも心理的にも安全な場を提供することに努め、みなさまが学ぶ場の健全さとクラス内容とあらゆる質の向上を目指します。

つきましては、参加者全員にも以下の差別やハラスメントを禁止するポリシーに同意していただくことが必要ですので、ご協力をよろしくお願い致します。

 

※オンライン/オフラインに関わらず、すべての方が対象です。

※このポリシーの対象者には、講師である私、場合によってお呼びするクラスのゲスト、スタジオのスタッフも含まれております。

 

■ハラスメントポリシー

以下のハラスメント行為を禁止いたします

  • ジェンダー・性的指向・障碍・容姿・人種・民族・年齢・宗教​​​​等についての差別的/攻撃的な言動(戯曲等、古典や近代の作品で作者が時代劇など当時の表現で差別用語等を用いている場合を除く)
  • 脅迫、ストーキング、つきまとい
  • 事前に合意のない撮影や録音
  • クラスやレッスンでの発表やその準備の妨害行為や責任の放棄
  • 「アドリブ」含め、クラスやレッスン内容に不必要かつ不適切な身体的接触
  • 性的な画像の掲示など不適切な情報の開示
  • 当事者間で事前に合意や振付のない性愛および関連した疑似行為(作品中を含む)
  • 不適切な画像、動画、録音の再生(性的な画像や性暴力描写など) や共有
  • 当事者でなくとも、以上のような行為の推奨や擁護

 

講師である私含め、クラスのゲスト、スタジオのスタッフもこのポリシーの対象となります。

 

同様に講師やゲストに対する「逆ハラスメント」もお断りいたします。

例えば、災害、事故、急病などの緊急性のある理由とは無関係の度重なる遅刻や早退、​​理由なき無視や黙り込みもハラスメントです。断続的であってもそれらは「パッシブ・アグレッション(受動的攻撃行動)」にあたります。注意ののちに改善がみられない場合、受講の停止、今後のクラスやレッスンへの参加をお断りします。

 

私も受けました一般企業のハラスメント防止研修では、最初に「相手はハラスメントと感じるかも知れない」から始まります。当然、相手の主張が常に正しいわけではありませんが、可能性を立ち止まって検討することは、創造性にも役立ちます。

 

もちろん、ジャンルの発展やさらなる挑戦のために、かつて問題がないとされてきた不平等や悪しき慣例や、過去の因習を破ることも、文化芸術のためには必要なときもあります。

しかし「基本的人権」とは異なった議論であり、人権を踏み躙ることは許されません。

 

私自身、特に日本では実演家の場合、演出家や監督、先輩や目上の方々の行動を疑わず、生真面目なまでに「同調する場面」が目立つように感じます。

 

映画/舞台芸術/芸能の世界が大変特殊でいわゆる一般企業とは違うと感じるのは個々の自由ですが「基本的人権」は同じはずです。

 

ハラスメントでグレーな部分はあるという論争も理解しております。

特に、普遍的な価値や個人的な意味づけ、そして深い感情や感覚体験を引き出そうとする芸術の世界では厳しい指導も必須と考えます。特に火や水、舞台装置やアクション、場合によっては飲食物を含む場合、死亡事故をも起こしてしまう可能性のある舞台や各種芸術の現場では、安全や衛生を軽視する行為を厳しく叱責することは必要です。

 

本当の意味で有益かつ効果的な厳しい指導の本質とは、自己研鑽の場を提供し、いわば間接的にそれぞれの成長を促すものです。

加えて、専門家としての特定のアドバイスや特別に考案されたエクササイズ等の実施と継続的なフィードバック、そして適切な目標の設定によって、学び手側が自ら気づき、スキルアップや内面の掘り下げを促進するものと考えます。

相手に利己的な欲求を押し付け、受け入れざるを得ないよう圧力を加えたり、外界から閉ざれた空間や集団の中で歪んだ認知に没入させたりする、一種の洗脳にも似た行為は残念ながら散見されますが、本物の指導はそのようなものとは無縁だと私は考えます

 

承認欲求を伴う自己愛は人間であれば誰もが持っているものであり、それは、外界に向かって己を懸けていく表現活動において、クリエイティブな欲動を促進するポジティブな作用もあるかと思います。しかし、そのバランスを見誤ると、自己愛に歪みや肥大が生じ、周囲や他者にとって有害なものとなり得るということに、私たちはもっと自覚的になる必要があると思うのです。

 

ハラスメント問題を通じて、個人がより建設的で、目的に適した健やかな方法を選ぶことで、より創作の場が活発になり、強みを生かした活動が盛んになっていくことにつながると信じて、私も一層の精進を続けてまいります。

 

公演やワークショップに際し、ハラスメントに対するステイトメントを出す主催者や声明を発表した団体も増えてきています。しかし、ただ「言葉でいう(書く)、言葉をきく(読む)」だけでは、実際に変化をしたとは言えないことを、実演家はその身をもって実感しているはずです。したがって、私は一般のさまざまな企業や職種の方々と交わってまずは一般的な研修を受講することが不可欠だと考え、今日に至ります。

 

そして、厚生労働省の「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント防止のために」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html)に準拠し判断および対応していきます。

またガイドラインを設けることで、ある種「特殊な業界」というバイアスを避けられれば、中長期的な労働環境の改善にもつながるのではないかと考えます。

 

■ハラスメント防止対策

・上記厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」準拠し判断および対応していきます

・演技指導やサイドコーチングの性質上、運動や振付や指導の際に、身体に接触することがあります。その際は、目的や理由を明確に言語化し、共有します。

(例 癖に気づいてもらうため、運動や移動の体勢等の修正のため、所作やジェスチャーの指導や振付のため受講者の身体に触れること)

・意思疎通の言語化や内容共有に時間をかけ、またメモのような形で、具体的に可視化し、記録します。

・上のハラスメントポリシーに全員の同意をお願いします

 

*これまでと同様、SNSでのクラスのご紹介や宣伝、ご感想やご活躍の様子のシェア等は歓迎しております。個人レッスンやグループクラスの開催、団体ワークショップ等のオーダーメイドのカリキュラム相談も含め、オンラインでの打合せも対応しておりますので、ご相談ください。

 

■補足:ハラスメント相談員について

もし、ハラスメントを受けていると感じたり、他の誰かがハラスメントされていることに気がついた場合は、ご連絡ください。必要やご希望に応じて、警察や医療機関への連絡、カウンセラーのご紹介などを含め、みなさまが安心して学び続けられるようお手伝いいたします。

 

演技コーチ 鍬田かおる